Dialog Code
『違いを受け入れ、エゴを融合させる──対等な目線で一つのチームをつくる力』 #上松あかり Dialog Code
2026/7/22

「対話が変われば、スポーツはもっと変わるのか?」
『Dialog Code』
強くなるために必要なのは、トレーニングや技術だけではない。アスリートが自分自身と向き合い、考え、気づくことで、次のステージへ進む鍵を探る対話記録。
今回登場するのは、
上松あかり(フラッグフットボール選手・シグナスTOKYO / 慶應義塾体育会アメリカンフットボール部所属)
【Before Dialog】
フラッグフットボールは、一つひとつのプレーが短く区切られる競技だ。プレーが終われば、また集まり、次の一手を確認する。相手がどう動いたのか、自分たちは何を選ぶのか。準備してきたものを信じながら、その場で判断し、仲間と共有し、また次のプレーへ向かっていく。その繰り返しの中で問われるのは、技術や戦術だけではない。自分の判断を信じられるか。仲間を信じられるか。ミスをしたあとに、どう気持ちを切り替えられるか。緊張や不安、悔しさを経験しながらも、自分自身と向き合い、チームの中で役割を広げていく力が求められる。上松あかりは小学生の頃からこの競技を通して、年齢も性別も立場も違う人たちと同じフィールドに立ち、対話を重ねてきた。国内外でさまざまな価値観に触れる中で、彼女はこの競技に勝敗を超えた可能性を見出している。自分を信じることは、チームを信じることへ。チームで対話することは、違いを受け入れることへ。日々挑戦を続ける彼女は、フラッグフットボールの中にどんな景色を描いているのか。さあ、彼女の思考を紐解いていこう。
【Code.1 - STATE】準備がつくる自己信頼───己と仲間を信じ、次のプレーを選択する
中山:
試合中、判断がうまくいっている時のご自身の状態を、一言、もしくは短い文章で表すとしたら、どのような言葉になりますか?
上松:
「誰よりも自分を信じられる」状態です。
中山:
そのように表現されたのは、なぜでしょうか?
上松:
実際に自分の判断がうまくいった試合を振り返ると、昨年の日本選手権が思い浮かびました。日本でもトップレベルの大会なのですが、普段はやらないQBというポジションを任されてチームとして日本一になり、自分自身もMVPをいただきました。今年も予選から全勝で優勝し、2年連続日本一を掴むことができたのは自分自身を信じることができたからだと思います。
自分の何が良かったのか、なぜうまくいったのかと考えた時に、自分の判断を誰よりも信じられている状態だったと思ったんです。では、自分を信じるとは何かと考えると、フラッグフットボールは準備がすごく大事なスポーツなので、自分が積み重ねてきたことや準備してきたことに対して、自信を持って臨めている状態が自分を信じられている状態なのだと思います。
中山:
なぜ、「自分を信じる」ことが必要になるのでしょうか?
上松:
フラッグフットボールは、チームワークが大切なスポーツです。もちろん自分自身を信じることも大事ですが、試合は一人で戦うものではなくチームで戦います。だからこそ、仲間を信じなくてはいけません。そして、自分を信じられているからこそ仲間も信じられるので、いいパフォーマンスを発揮するための土台になると思っています。
中山:
なるほど。一方で、準備をしたからといって必ずしも自信につながるとは限らないと思います。積み重ねてきたとしても、「今の自分で戦えるのか」と自分を疑ってしまうことはないのでしょうか?
上松:
もちろん試合前にそういう気持ちが生まれることは、スポーツをやっている以上あることだと思います。でも、本当に良い状態の時はそういうことを考えていないんです。「準備は足りているか」「大丈夫かな」といった感情に意識が向いているわけではなく、本当に無の状態というか、自分がやらなければいけないという思いに縛られていない状態です。
自分への自信がそのまま仲間への信頼にもつながっていて、チーム全体が自然に機能しているような感覚なんです。その時は、変に何かを考えているわけではありません。「準備不足だったかもしれない」「不安だ」という感情がなくて、本当に自然な状態でプレーできています。だからこそ判断もうまくいきますし、「誰よりも自分を信じられている状態」なのだと思います。
中山:
「無」という表現がありましたが、自分を信じられている時というのは何に意識が向いているのでしょうか?あるいは、良い意味で何も考えていない状態なのでしょうか?
上松:
そうですね。何に視線が向いているかと考えないくらい、視線も意識も目の前に集中している状態です。「失敗してしまった」「この後失敗するかもしれない」ということは考えていません。自分が次に何をするべきなのかが明確になっていて、そのためには今何をすればいいのかという思考に向いているのかなと思います。
中山:
自分を信じられない状態の時、プレーにはどのような変化が起きますか?
上松:
自分を信じられない時は「さっきミスしてしまった」「またミスしたらどうしよう」「このミスでチームが負けたらどうしよう」などと考え始めてしまいます。ミスそのものよりも、そのミスを引きずって「今日は調子が悪いな」という思考になってしまいますね。
中山:
技術的なミスそのものというよりも、その後の思考が望ましくない方向へ向かってしまうことの方が大きいのですね。
上松:
もちろん技術的なこともすごく大切ですし、技術があってこそ良い状態になれますが、スポーツをする上ではまず気持ちをしっかり整えられているかが、すごく大事だと思っています。そこができて初めて、プレーのことや次にやるべきことを考えられる段階に進めます。気持ちの部分が整っていないと、結果的にプレーもうまくいかなくなってしまうのだと思います。
中山:
プレー中にミスを引きずってしまう時は、どのようにして立ち戻ろうとしているのでしょうか?
上松:
よく「引きずるな」と言われますが、まず一度、自分の中で「悔しい」とちゃんと感じるようにしています。悔しい気持ちを溜め込むのではなく、一度外に出すことで「よし、切り替えよう」というマインドになれるんです。抱えていた感情が抜けていくような感覚がありますね。気持ちがすごく楽になりますし、「次に行こう」と切り替える準備ができるんです。

中山:
まずは感情を留め込まず、あえて出すことで次に向かう状態を作るのですね。では、「自信」というものは何から生まれるものだと思いますか?
上松:
「準備」ですね。試合や練習に向けて戦術を理解することや、自分の足りない部分を補うことです。自分のプレーを発揮するための準備がしっかりできていると、自分に自信が持てます。だからこそ、ミスをしても必要以上に気にすることはなく、「自分はやるべきことをやってきたから大丈夫。次にいこう」と切り替えられるのだと思います。
中山:
ご自身では、自信家なタイプだと思いますか?それとも、慎重なタイプでしょうか?
上松:
自信家ではないですね。でも、自分に自信を持って試合に臨めている時は、本当に良いパフォーマンスができている実感があります。だからこそ、自分がそういう状態になれるように準備していくことが、自分の中ではすごく大切なんです。
【Code.2 - EMOTION】成長に変える試練───代表落選と怪我を乗り越え、次のステップへ進む
中山:
試合前や試合中に生じる「緊張」や「不安」という感情は、上松さんにとってどのような存在ですか?
上松:
成長のために必要不可欠な試練です。
中山:
「試練」と表現されたのは、なぜでしょうか?
上松:
2021年に初めて日本代表に選ばれた時は最年少だったこともあって、本当に緊張と不安しかありませんでした。でも、そうした経験を一つひとつ乗り越えてきたからこそ、成長できた自分を知っているので、必要な試練だと思っています。
中山:
若くして日本代表に選ばれるなどの貴重な経験をされていますが、これまでで一番大きな試練は何でしょうか?
上松:
「試練」と言えるかは分かりませんが、思い当たるのは代表での経験です。 2021年に初めて代表に選ばれた後、翌年にワールドゲームズという世界大会があったのですが、年齢制限で出場できませんでした。その後のアジア大会では選考に落ちてしまい、とても悔しかったです。さらに、別のポジションで代表にも選ばれましたが、今度は怪我で間に合わず大会に出場できませんでした。
実力で選ばれなかった悔しさもありましたし、怪我でチャンスを逃した悔しさもありました。でも、その経験を乗り越えたことで、自分の技術面だけでなく感情面の課題とももっと向き合わなければいけないと感じました。「自分はどうなりたいのか」を改めて言語化するようになりましたし、怪我をしないためのケアや筋力トレーニングも一から見直すなど、細かい部分からこだわっていかなければいけないと考えるきっかけにもなりました。そういう意味では、自分が一個乗り越えた壁というか、自分自身を見直す時間ができたことは試練のようなものだったのかなと思います。
中山:
代表落選や怪我で大会に出られないなど、望んでいない結果が出た時はどのくらい落ち込んだのでしょうか?また、そこからどのように立ち直っていきましたか?
上松:
当時は高校生でまだまだ子どもでしたし、そこまで出来た人間でもなかったので落選した時は本当に悔しかったです。「なんで自分なんだろう」と思いましたし、引きずったというよりはすごく悲しかったですね。
でも、落選したからといって自分のやりたいことができなくなるわけではありません。家族やチームメイトにもたくさん話を聞いてもらって、「フラッグフットボールができなくなったわけではない」と言ってもらえたことで、少しずつ気持ちを切り替えることができました。その上で、「なぜ選ばれなかったのか」「なぜ怪我が長引いたのか」と、自分に足りなかったものを考える時間にしようと思えたんです。周りに支えてもらいながら切り替えることができたと思います。

中山:
初めて日本代表に選ばれたお話がありましたが、当時緊張とはどのように向き合っていたのでしょうか?
上松:
あの時は日本代表がセレクション制になって初めての大会でしたし、ちょうどコロナ禍でオミクロン株が流行していた時期でもありました。初めての国際大会で両親もいなくて、チームメイトとコーチだけで海外に行くという状況だったので、もちろん緊張はありました。
ただ、不安はなかったですね。初めての国際大会で、各国の選手たちと戦うことになって怯えていたというよりは、素直に目の前の試合に集中できてすごく楽しかったです。試合前は「勝てなかったらどうしよう」という緊張はありましたが、試合が始まると、すべてが初めての経験でその瞬間を純粋に楽しめていました。
最後は負けてしまったので本当に悔しかったですが、当時仲の良かった選手とハグをしながら、「もっと強くなって、またここに帰ってこようね」と話したことを今でも鮮明に覚えています。振り返ると、目の前のことだけに集中できていた良い意味での緊張だったなと思います。
中山:
緊張はしていても、いざ始まれば目の前のことに没頭できていたのですね。今もその感覚は変わらないのでしょうか?
上松:
割と今もそうですね。経験を積んで国際大会にも何度か出場するようになると以前よりできることが増えましたし、その分経験しているからこその緊張も生まれるようになりました。
フラッグフットボールは今でも純粋に楽しいのですが、最初の頃のように「とにかく全力でやって、あっという間に終わった」という感覚とは少し違います。今は頭を使ってプレーするようになりましたし、考えて、成長して、緊張して、負けてしまったらちゃんと落ち込みます。周りの選手のレベルも上がっているからこそ、チームとしてもどんどんレベルが高くなっていますね。
最初の頃は目の前のプレーにだけ集中していましたが、今では試合の流れやチーム全体のことも考えながらプレーしていますし、勝った後や負けた後にどうコミュニケーションを取るかまで含めて考えるようになりました。そういう意味では、責任が増えたというよりは、考えることが増えたという感覚の方が近いですね。
【Code.3 - COGNITION】同じ目線でつくる「ハドル」───違う価値観を融合し、チームの強みに変える
中山:
上松さんにとって、フラッグフットボールという競技はどのような「ゲーム」だと捉えていますか?
上松:
世界を幸せにする可能性があり、老若男女同じフィールドで同じ目線でできるスポーツです。
中山:
「世界を幸せにする可能性がある」という表現が印象的ですが、なぜそう思ったのでしょうか?
上松:
すごく大げさに聞こえるかもしれないですし、自分でも世界を幸せにする可能性が実際にあるかと考えると難しい部分はあります。でも、それくらいこの競技にはいろんな魅力があると思っています。それだけ多くの人に知ってほしいという思いも込めて、「幸せにする可能性がある」と思っています。その魅力の一つが、老若男女を問わず同じフィールドでプレーできることです。
中山:
年齢や性別を問わず同じフィールドでプレーできることに、どのような価値を感じているのでしょうか?
上松:
私自身、普段から年齢や性別の違う選手たちと一緒にトレーニングしていますし、Xリーグや大学生の選手のような男性ともプレーします。小学生や中学生、年齢がかなり上の方たちと練習試合や大会に出ることもあります。女子だから、男子だから、学生だから、社会人だからという区別はなく、同じチームで同じフィールドに立てる。それがフラッグフットボールの大きな魅力だと思っています。
その中でも、私が特に好きなことが「ハドル」です。1プレーごとに全員で集まって話し合い、次のプレーを確認する時間なのですが、私はこの時間にすごく意味があると思っています。試合では選手同士ですが、練習ではコーチも加わります。年齢も性別も立場も違う人たちが、同じ目線で競技について話し合い、「今のプレーはこうだったよね」「次はこうしよう」と意見を交わす時間を持てるのは、このスポーツならではの魅力だと思います。

中山:
年齢も性別も立場も関係なく、自然と話し合う時間が組み込まれることで、どのような価値が生まれると思いますか?
上松:
もちろん、他の競技に差別があると言いたいわけではありませんが、フラッグフットボールには年齢や性別、国籍といった壁を越えて、一緒にプレーできる環境があります。そこにすごく価値を感じています。
人それぞれ育ってきた環境も価値観も違います。でも、ハドルを組むことで自分の価値観を伝えながら、相手の考えも受け入れ、チームとしての成果を最大化できるか話し合います。自分のエゴを持ちながらも、相手の考えを受け入れ、お互いのエゴを融合させていく環境があることが、大きな価値だと思っています。
中山:
具体的に印象に残っている経験を聞いても良いですか?
上松:
昨年10月にはベトナム・ハノイで韓国のチームで大会に出場し、今年6月には中国・寧波でメキシコのチームで大会にも参加しました。一人で海外のチームに飛び込む機会が増えたのですが、そこで強く感じたのは初めて会った私に対しても、「日本ではどう考えているの?」「あなたはどう思う?」と、本当に対等な立場でコミュニケーションを取ってくれたことでした。
フラッグフットボールに対する価値観やプレーに対する考え方など、みんなが対等にコミュニケーションを取れる環境は、すごく整っていました。それぞれの価値観の違いのようなものが、個人の強みやチームの強みに変えられる場所になるのだと感じましたね。
中山:
非常に面白い経験の共有をありがとうございます。その中で、上松さんが感じるフラッグフットボールならではの競技の魅力はどのようなところにあると思いますか?
上松:
フラッグフットボールは腰についている旗を取られたらプレーが終わって、そこからまたセットしてリスタートする競技です。そういうルールがあるからこそ、戦術性がすごく魅力的だと思っています。
オフェンスもディフェンスもプレーブックを持っていて、あらゆる作戦の中から相手の出方に合わせて選んでいきます。事前に分析して準備したものを実際に試合で使って、コミュニケーションを取って、その上で相手の反応を見ながら、リアルタイムで最適なプレーを判断していく。それらをハドルで共有して、みんなで一つのプレーを作っていくことがすごく楽しいです。
【Code.4 - VISION】違いを隔たりにしないために───対話と受容がつくる区別のない世界
中山:
この競技を続けていった先に、どのような状態や景色に辿り着いていたいと考えていますか?
上松:
「差別のない世界」です。
中山:
上松さんが考える「差別のない世界」とは、どんな世界をイメージしているのでしょうか?
上松:
「差別」というより、「区別のない世界」という表現の方が近いかもしれません。年齢や性別、国籍といった違いが原因で、対等に話せなかったり、コミュニケーションが取りづらくなったりすることがない世界です。
中山:
ここまでお話を伺っていると、「対等」「平等」「区別がない」といった言葉が何度も出てきています。そうした価値観は、どのような経験を通して育まれてきたものなのでしょうか?
上松:
小学校のころからこの競技を続けてきたのですが、当時は男子チームの中に女子一人で入ってプレーしていましたし、コーチもお父さんたちでした。年齢も性別も違う人たちと、本気で競技に向き合うために、立場に関係なくたくさんコミュニケーションを取りながらチームをつくってきました。その後も、学校も年齢も違う、本当にさまざまな価値観を持つ人たちと一つのチームでプレーしてきました。
そうした中で、全員がいかにして自分の考えをしっかり伝えながら、同時に相手の考えも大切にしてきましたし、それがチームを強くするために必要なことだと感じています。選手同士だけではなく、選手とコーチも対等にコミュニケーションを取る。そうした積み重ねが、いいチームづくりにつながっていると思います。
国際大会に行くと、相手チームのコーチや選手とも「私の弱みって何ですか?」「今抱えている課題はどうすれば改善できますか?」と、お互いに話し合える世界があるんです。国籍は違ったとしても、同じように競技に向き合っている一人の人間として対等に接してくれます。私自身、一人で海外へ飛び込む機会も増えましたが、課題や言葉の壁があっても、相手は話し合うことや受け入れることを諦めないでいてくれる。そういう経験を重ねてきたからこそ、「対等」や「区別のない世界」という言葉が自分の中から自然と出てくるのだと思います。
中山:
だからこそ、社会で価値観の違いによる分断や対立を目にした時に、「どうしてそうならないんだろう」というジレンマや、「変えたい」という思いにつながっているようにも感じました。学校教育などにも取り入れられたらいい競技だとも思いました。
上松:
最近では、小学校の授業でフラッグフットボールを取り入れる学校も増えているみたいです。
中山:
それはすごくいいですね。ただ競技を体験するだけではなく、「なぜこのスポーツをやるのか」という文脈まで含めて伝えられたら、子どもたちにとってもすごく価値のある経験になる気がします。
では最後に伺いたいのですが、フラッグフットボールを通して実現したい未来がある中で、その理想に向けて、現役選手である上松さんだからこそ今できることは何だと思いますか?
上松:
最近はインタビューなどを通して、いろいろな競技のアスリートの方とお話しする機会が増えています。本当にたくさんの刺激を受けますし、それぞれの競技ならではの特徴や考え方も知ることができます。なので、最近は自分から積極的に他競技のアスリートの方とコミュニケーションを取るようにしています。
フラッグフットボールやアメリカンフットボールでいえば、それぞれの価値観や考え方、良さをいかに落とし込める環境を作れるか、どう組み合わせるかを考えることがとても大事だと思っています。
中山:
勝利を目指して本気で取り組むプロセスの中に、対等性や多様性を受け入れる価値が自然と組み込まれているフラッグフットボールにはすごく魅力がありますね。これからさらに競技経験を積み、さまざまな人や価値観に触れていけば、競技の価値を今以上に解像度高く伝えられるようになるのだろうなと感じています。競技者としての歩みとともに、その言葉がどう深まっていくのかも、とても楽しみです。今日は貴重なお話をありがとうございました!
上松:
ありがとうございました!

【After Dialog】
上松あかりの言葉を聞いていると、「信じる」という行為の見え方が少し変わる。自分を信じることは、自分だけで完結する強さを持つことではない。積み重ねてきた準備を信じ、目の前の判断に集中し、仲間の存在に身を預けることでもある。そこには、独りで完結する強さではなく、誰かと一緒にプレーするための強さがある。フラッグフットボールでは、プレーが終わるたびに人が集まり、言葉を交わす。年齢も、性別も、国籍も、立場も違う人たちが、同じフィールドに立ち、次の一手を考える。自分の考えを伝え、相手の考えを受け入れ、違いを抱えたまま一つのプレーへ向かっていく。その時間を重ねてきたからこそ、彼女が語る「区別のない世界」は、遠くにある理想論には聞こえなかった。違いを消すのではなく、違いがあるまま同じ目線で向き合うこと。対話を諦めず、互いの価値観をチームの力に変えていくこと。その小さな実践が、この競技の中には確かにある。勝つために準備し、自分を信じる。チームのために対話し、仲間を信じる。その先に、人と人が対等に向き合える景色を見ている。フラッグフットボールが持つ可能性は、競技の面白さだけではない。違いを隔たりにしないための方法を、プレーの中で何度も確かめられることにあるのだろう。『Dialog Code』
答えは、すぐには見つからないかもしれない。それでも自分と向き合い、考え続けることが、次の一歩をつくる。思考を解き明かす対話は続く。次は、誰の思考に触れようか。

【Athlete Profile】
上松 あかり(うえまつ・あかり)
2004年7月11日生まれ、東京都出身。
フラッグフットボール選手。シグナスTOKYO、慶應義塾体育会アメリカンフットボール部所属。
慶應義塾女子高校を経て、慶應義塾大学商学部に進学。2024年のIFAF世界フラッグフットボール選手権では女子日本代表に選出。DB/WRとして攻守に関わり、同大会での日本女子代表の銅メダル獲得に貢献した。2024年度日本フラッグフットボール選手権では、ヒューペリオン東京、2025年度はシグナストウキョウの一員として優勝を経験。また2025年には、ワールドゲームズ成都大会の日本代表にも選出された。170cmのサイズを生かしたキャッチやパスカットを持ち味とし、守備では相手の攻撃を止める判断力、攻撃ではプレーに絡む対応力を発揮する。国内外の大会で経験を重ねながら、フラッグフットボール女子日本代表の一員として競技の可能性を広げている。【Dialog Partner】
中山 知之(なかやま・ともゆき)
1995年1月26日生まれ、愛知県出身。
株式会社Athdemy 取締役CCO。
JFAアカデミー福島や世代別日本代表、海外リーグでのプレーといったアスリートとしての原体験を起点に、人間の「状態」と「パフォーマンス」の関係性を探求し続ける。異文化圏での教育コンサルタントや、国内大手不動産テック企業でのセールス/マネジメント経験など、多様な環境の中で「変化が生まれる構造」に向き合ってきた。現在はAthdemyにて、トップアスリートとの対話(Dialog)を通じて思考や感情に伴走。一貫して問い続けているのは、「人はどのような状態で本来の力を発揮するのか」。競技とビジネス、国内と海外といった境界を横断しながら、個人の内面にある思考や感情を言語化し、新たな気づきを共に生み出している。


