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Dialog Code

『美学を捨てずに変化する──勝利のために拡張した選択肢』 #輪島夢叶 Dialog Code 

2026/8/12

「対話が変われば、スポーツはもっと変わるのか?」

『Dialog Code』

強くなるために必要なのは、トレーニングや技術だけではない。アスリートが自分自身と向き合い、考え、気づくことで、次のステージへ進む鍵を探る対話記録。

今回登場するのは、

輪島 夢叶(アイスホッケー選手・道路建設ペリグリン所属)

【Before Dialog】
氷上では、一秒にも満たない判断の差が、次の展開を大きく変える。味方の位置、相手のプレッシャー、自分が使えるスペース。目まぐるしく状況が変わる中で、選手には正確な技術だけでなく、瞬間ごとに最善を選び取る力が求められる。そんなアイスホッケーの世界で、輪島夢叶は長く自分なりのプレースタイルと向き合ってきた。緊張しやすい自分をどう整えるのか。相手との駆け引きの中で何を見て、どのように判断しているのか。そして、結果を求められる舞台で、自分らしさとどう折り合いをつけてきたのか。経験を重ねる中で、変わったものがある。一方で、簡単には手放さなかったものもある。オリンピックという大きな舞台を経験した今、自身のプレーと感情、そしてチームの未来をどのように捉えているのか。さあ、彼女の思考を紐解いていこう。

【Code.1 - STATE】一秒先まで見極める───冷静な判断を支える自己調整

中山:
試合中、判断がうまくいっている時のご自身の状態を、一言、もしくは短い文章で表すとしたら、どのような言葉になりますか?

輪島:
「冷静」です。

中山:
そのように表現されたのは、なぜでしょうか?

輪島:
調子がいいと感じる時は、冷静でいられることが多いです。もともと緊張しやすいので、そういう自分でも調子がいいと思える時は、リラックスしていて頭も落ち着いている状態です。

中山:
輪島さんがおっしゃる冷静とは、具体的にはどのような状態なのでしょうか?

輪島:
気持ちの面でも頭の中でも、どちらにも当てはまります。気持ちが浮ついていなくて、頭も焦っておらず緊張していない状態ですね。全国大会の決勝のような大きな舞台だと、試合の入りでバタバタしてしまったり、パックが手につかなかったりすることも多かったんです。でも最近は慣れてきました。経験を積む中で、その時の自分がどういうプレーをすればいいのかも徐々に分かってきたので、昔よりは物事を冷静に判断できるようになってきたと思います。

中山:
プレー中に冷静だと感じるのは、どのような瞬間でしょうか?

輪島:
周りがよく見えていて、パスがすごく通る時ですね。自分はパスを出すのが好きなので、パスが通りにくいと思った時や、パックを持った瞬間に相手に早く詰められて何もできない時は、自分の中では余裕がない状態だと思っています。逆に、パックを受けてから周りを見て、どこが空いているかを判断してパスを通せる時は、落ち着いてプレーできていると感じます。

中山:
焦っている時は、どのように見えているのでしょうか?

輪島:
相手のプレッシャーを近く感じます。「やばい、来てる」と思ってしまい、本当はまだ余裕がある場面でも早く出さなければいけないと焦ってパスを出してしまうことがあります。ベンチに戻ると、スタッフから「もう少し落ち着いていい」と言われることもありました。そういう傾向は大きな試合ほど多かったので、今はそこを対策するようにしています。

中山:
良い状態の時はパスがよく通る理由として、周りが見えているという言葉も出てきましたが、具体的には何が見えているのでしょうか?

輪島:
そもそもアイスホッケーは、一秒で選手の位置が何メートルも変わるスポーツです。パックを受けてから出すまでの一秒が遅れるだけで、味方のスティックの位置も変わってしまう繊細な競技なので、その違いが大きいですね。

中山:
たった一秒でも、大きく状況が変わるのですね。

輪島:
なので、「ここには出せない」と思って別の選択肢を探している間に、敵が寄ってきます。冷静に判断できている時は、相手がどこから来ているかも見えていますし、自分でキープできるかどうか判断ができる時は良い状態なのだと思います。

中山:
味方の動きも相手のプレッシャーも自分の状態も含めて、いくつもの情報を同時に捉えられている状態なのですね。

輪島:
そうですね。調子が良くて冷静な時は、本当に味方のスペースや自分がキャリーできるかどうか、相手のプレッシャーがどちらから来ているのか、仲間の選手が受けやすい位置を把握することまで落ち着いて判断できていることが多いです。

中山:
アイスホッケーのように一秒で状況が大きく変わる競技の場合、落ち着こうと思っても簡単なことではないと思います。そのような時に、冷静さを取り戻すために意識していることは何ですか?

輪島:
私の場合だと、パスとキープのどちらもうまくいかないことがほとんどありません。どちらもできない日は全く何もできないのですが、もしパスの調子が悪いなと思ったら、完全に振り切ってキープの方にフォーカスします。逆にキープがうまくいかなければ、パスに寄せます。まずは自分がパックをしっかりコントロールできる状態をつくると、余裕が生まれてきてプレー全体も変わってくるタイプなので、そこから冷静さを取り戻すようにしています。

中山:
まずは自分ができることにフォーカスして感覚を積み重ねながら、自然といい状態に戻していくイメージなのですね。

輪島:
基本的に私は気持ちの影響をすごく受けるタイプだと思っています。ネガティブになった瞬間に良いプレーが全くできなくなるんです。それは自分でも分かっているので、自分でうまく機嫌を取りながら気持ちを上げていくようにしています。

中山:
自分自身に小さな成功体験を積み重ねながら、エネルギーを与えていく感覚なのですね。

輪島:
そうですね。その感覚に一番近いと思います。


【Code.2 - EMOTION】負けず嫌いが生む緊張───信じ続けた自分のスタイル

中山:
試合前や試合中に生じる「緊張」や「不安」という感情は、輪島さんにとってどのような存在ですか?

輪島:
「味方」です。

中山:
味方という言葉には、どのような経験が背景にあるのでしょうか?

輪島:
オリンピック予選があったのですが、人生で一番と言えるほど緊張した大会でした。その時に緊張してることをマイナスに捉えてベテランの選手に相談したら、「ある程度緊張していた方がいいプレーができるよ」という言葉をかけてもらいました。その言葉を受けて、緊張してもいいのかもしれないと思えるようになり、そのまま初戦に臨みました。

試合前はものすごく緊張していましたが、試合が始まるとガチガチになるわけではなく、ある程度の緊張感でプレーできました。自分にとってベストコンディションで予選を戦えたことが一番大きな成功体験になりました。緊張と一緒に戦った方がいいと思えるようになったことが、味方という言葉につながっています。

中山:
自身の経験を踏まえて、なぜ緊張感がある方がいいプレーにつながると思うのでしょうか?

輪島:
練習試合ではほとんど緊張しませんが、自分に余裕がありすぎて良くない試合をした経験もあります。

繰り返しになるのですが、アイスホッケーは一秒で状況が大きく変わるスポーツです。特にオリンピック予選のような代表レベルの試合では、パス回しのスピードも一段階上がります。だからこそ、若干の焦りを感じるくらいの緊張感が大事だと思っています。余裕を持ちすぎると、そのスピード感に対応できなくなることがあります。特に海外との試合ではその違いを強く感じるので、そこが国内と海外の差だと思います。

中山:
よりハイテンポで、インテンシティも高い世界だからこそ、ある程度の緊張感がないとテンポについていけない感覚があるのですね。一方で、輪島さんの緊張は何が要因となって生まれているのでしょうか?

輪島:
私は決勝よりも準決勝の方が緊張するタイプです。トーナメントで負けたら終わりという状況になると、極度の緊張に陥る傾向があります。

中山:
負けたら終わりという状況が、なぜそこまで大きな緊張につながるのだと思いますか?

輪島:
素直に言うと、すごく負けず嫌いなのだと思います。優勝したいですし、負けたくないという思いがあります。それに、自分がやらなくてはいけない立場になってからは、結果を残さないといけないというプレッシャーもあって、それが緊張につながっている部分もあります。

中山:
輪島さんは、誰の、または何のための結果を残さないといけないと思うのでしょうか?

輪島:
一番はチームですね。ただ、自分では期待されているとはあまり思わないようにしています。オリンピック予選で結果を残してから、周りからは結果を残せる選手という目で見られるようになりました。その後なかなか思うような結果が出なくなった時は、結果を残さなければいけないという気持ちが一番大きかったのだと思います。

中山:
周囲からの期待に飲み込まれないように、自分の中で距離を取ろうとしているのですね。輪島さんの中で、緊張や不安との向き合い方はこれまでどのように変わってきましたか?

輪島:
もともと、本当に自信がない人間でした。でも、結果が出ていない間でも自分のプレーを疑ったことはありません。自信がないと言いながら矛盾しているのですが、自分のプレーを変えようとは思わなかったんです。世界選手権でも出場時間が少なくて、代表には連れていってもらえても試合にはなかなか出られないという時期が何年も続きました。それでも、自分のプレーを変えないと出られないのなら、そこは目指していないと思うくらい負けず嫌いだったので、自分のプレーを信じ続けてきました。

何がきっかけだったのかは確かではありませんが、三年ほど前から少しずつ結果がついてくるようになりました。それでもシュートにはずっと自信がありませんでしたが、年月を重ねて結果が出るようになってからはその不安も少しずつなくなってきました。

中山:
代表で試合に出るために自分のスタイルを変えるという考え方もあると思いますが、それでも自分のスタイルを信じ続けた理由は何だったのでしょうか?

輪島:
自分のプレースタイルが嫌いではなかったからですね。パスホッケーが好きだったがゆえに、いいポジションでパスを受けても、自分でシュートを打つより逆サイドへパスを通し、味方が外しても決めても、そのパスが通ること自体に喜びを感じていました。

そして、より結果が全てである日本代表において、点を取らないと勝てないということを本当の意味では分かっていませんでした。そんな中、オリンピック予選で結果を残さないとオリンピックには行けないのだと実感した時に、初めて自分のプレースタイルが少し変わりました。もっと早く変えておけばよかったと思うこともありますが、それも含めて人生だったと思うので結果的にはこれで良かったのかなと思っています。

中山:
プレースタイルにおいてパスの美学があったのですね。そしてそれが、オリンピックに出場するという目的を考えた時に結果を残す必要があり、そのためにシュートも必要だと変わっていったのですね。

輪島:
はい、パスの美学はめちゃくちゃありました。そして、シュートに関してはまさにオリンピックに出るために意識が変わった部分です。



【Code.3 - COGNITION】見抜き、仕掛ける───勝つための騙し合いの本質

中山:
輪島さんにとって、アイスホッケーという競技はどのような「ゲーム」だと捉えていますか?

輪島:
「騙し合い」です。

中山:
なぜ、騙し合いだと表現したのでしょうか?

輪島:
本当に駆け引きの世界なので、パスを出すにしてもワンフェイクを入れてから出したり、パスとシュートの選択でフェイクを入れたりします。スケーティングで相手を抜く時も、最初はパスを探しているように見せて相手の足を止めてから、一気にスピードを上げて抜いたり、パスを出すと思わせて相手の動きを止めてから仕掛けることもあります。アイスホッケーは「やばい」と思った時にはもう遅いスポーツなので、本当に騙し合いのスポーツだなと思います。

中山:
相手を騙す時は、具体的には何を見ているのでしょうか? 

輪島:
私は観察することが多いのですが、試合中もベンチに戻って一呼吸したらすぐに立って、味方がプレーしている他のセットのシフトを見る傾向があります。その試合の相手ディフェンスのスケーティングを見て、苦手そうな動きを観察しています。

中山:
相手のウィークポイントを探すことが中心なのでしょうか?他にはどんなところを見ていますか?

輪島:
例えば試合を見ていて、この選手は逆ターンしたら必ずバックハンドでオーバー側に振るというのを2〜3回見たら、自分のシフトで同じ場面になった時にわざと相手のコースをスティックで呼んで騙したりします。本当に性格が悪いと思うのですが、相手チームの選手があまり周りを見られていないなと思ったら、相手チームの選手になりきったつもりで「裏!」と声を出して騙すこともあります。

逆に、それは自分にも起こり得ることなので、味方の名前を呼ばれるまでは信用しないというか、自分の目で確認してからプレーするようにもしています。そういう駆け引きも騙し合いの一つなので、それでパスカットできたりパックを奪えたりすることが多いです。

中山:
駆け引きを磨くために、どんなことをしていますか?

輪島:
レベルの高い海外の試合を観ますね。男子も女子もプロの試合やハイライトをよく見ていて、そこで技術を盗んでいます。

中山:
そういう映像を見る時は、フェイクの入れ方や駆け引きの仕方を見ているのでしょうか?

輪島:
めちゃくちゃ見ますし、見たらすぐ自分でもやってみます。

中山:
輪島さんのレベルでも映像を見て取り入れるということは、それだけ騙し方や駆け引きのパターンがたくさんあるとも言えるのでしょうか?

輪島:
そうですね。かなりありますし、自分がチャレンジしてもまるっきりできないような体の使い方をする選手もいます。本当に面白いスポーツだなと今でも思います。

中山:
以前はパスに美学があって、そこから得点を狙うプレースタイルへ変わっていきましたよね。自分で決めにいくようになってから、どんな変化がありましたか?

輪島:
一番大きいのは、選択肢が増えたことです。パスが好きだった頃は、自分の中に選択肢が一つしかありませんでした。それでもつながるのが楽しくて、そのプレースタイルでホッケーをしていました。シュートを打ってもいいと思えるようになってからは、シュートとパスの二つの選択肢ができました。パスを出すふりをしてシュートを打つというレパートリーも増えたので、騙せる場面も増えました。それはすごく良かったと思っています。

中山:
レパートリーが増えるということは、見るポイントや入ってくる情報も増えると思います。騙し合いということも含めて、以前と比べると情報の集め方や意識の持っていき方は変わりましたか?

輪島:
意識で言えば、オリンピック予選シーズンが始まる合宿からシュートが優先で第二選択がパスという考え方に変わり、それで開花した感覚があります。結果を残さないといけない、シュートを打たないといけないと思って、とにかくシュートを打つようにしました。

その上で、私はパスには自信があったので、第二選択でパスを選んでも絶対につながるという感覚がありました。まずシュートを狙って、打てない、難しいと思った時にパスを出す。そのパスには自信があったので、まずシュートを意識して、パスを第二選択にするという考え方が大きかったです。

中山:パスに美学があったところからシュートへの意識を増やすと考えると、そこのバランスや変化具合を自分のものにするのに苦労する人もいると思いますが、パスに自信があるからこそシュートを打っていくという考え方は面白いなと思いました。




【Code.4 - VISION】オリンピック「出場」の先を目指す───感情と目標の共有

中山:
この競技を続けていった先に、どのような状態や景色に辿り着いていたいと考えていますか?

輪島:
オリンピックでメダルを獲りたいです。

中山:
オリンピックでメダルを獲るという目標は、輪島さんにとってどのような意味がありますか?

輪島:
簡単なことではありませんし、本音を言えば今の日本の女子アイスホッケーのレベルは、まだメダルには全く手が届かない位置にあると思っています。それでも、アイスホッケーをやっていて、オリンピックを目指している以上はやっぱりメダルを目標にすべきだと思っています。私は、オリンピックにさえ出ることができればいいとは思っていません。ホッケーをやっている以上は、オリンピックでメダルを獲ることを一番大きな目標として持ち続けたいと思っています。

中山:
個人と組織では考え方も違うと思いますが、オリンピック出場ではなく、メダルを獲るという目標を掲げています。この目標設定の高さの違いには、どんな意味があると思いますか?

輪島:
私は、そもそもメダルを獲ることに価値があると思っています。「オリンピックに出られるだけでもいいでしょ」と言われることがありますが、私はその考え方があまり好きではありません。「それでも結果は出ていない」とオリンピックが終わった後に思うことも多かったです。

やっぱり結果を残すことが一番大事だと思っていますし、日本のアイスホッケー界のためにも、自分が代表として戦い続けられる限りはその目標をぶらさずに持ち続けたいと思っています。

中山:
輪島さんにとってメダルを獲ることが結果であり価値でもあるからこそ、その目標を当たり前に掲げているのですね。実際にメダルを獲るために、今の自分に最も必要だと感じていることは何でしょうか?

輪島:
この前のオリンピックを経験して、得点力と感情の持ち方だと思いました。

中山:
得点力はイメージしやすいのですが、感情の持ち方というのはどういうことでしょうか?

輪島:
オリンピックは4試合のリーグ戦だったのですが、2戦目を落としてしまって予選突破は厳しいのではないかという空気になった瞬間から、チームの何かが崩れ始めたと感じました。もし、2戦目で負けた後も全員が気持ちを強く持ったまま3戦目に向かえていたら、何か変わっていたのではないかという後悔があります。だからこそ、感情の持ち方もすごく重要だと思っています。

中山:
一つの敗戦によって、自分たちで何かを手放してしまった感覚があったのですね。

輪島:
だいぶありましたね。事前合宿では練習試合で勝っていた相手だったのですが、本番ではそれまで経験したことがないような負け方をしてしまいました。それで、なかなか立ち直れなかったという感覚があります。

中山:
もし同じ状況に戻れるとしたら、輪島さん自身は何ができたと思いますか?あるいは、チームにどんな働きかけができていたら、2戦目を引きずらずに立て直せたと思いますか?

輪島:
私はチームの上の立場ではありませんでした。チームは若手が多かったのですが、その若手のエネルギーが少なかった印象があります。静かというか、自分から発言する選手も少なかったので、中堅だった私たちがもっと下の世代に声をかけたり、チームの雰囲気を良くしたりする働きかけができていたらよかったのかなと思います。下の世代のエネルギーというのはチームにはすごく大きいものだと思うので、そこは中堅が何とかしなければいけなかった部分だったと反省しています。

中山:
若手の勢いや物怖じしないエネルギーは、組織にとって大きな力になりますよね。そこを輪島さんたち中堅がもっと引き出せていたら、少し違った未来があったかもしれないということですね。

輪島:
たらればですけど、そう思いますね。

中山:
では、日本代表がメダルに近づくために必要な変化とは何だと思いますか?

輪島:
反省も含めてになりますが、これからの4年間でチーム力はもっと高めなければいけないと強く感じました。オリンピックに出られたことで満足している選手もいたのかなと感じる場面もあったので、本当に全員がメダルを目指せていたのかと疑問に思う瞬間もありました。

だからこそ、オリンピックでメダルを獲るという目標を全員が持っている状態で大会を戦えたらいいなと思っています。もちろん技術も必要ですが、次の4年間は組織力を高めることがすごく大事だと思っています。

中山:
過去に勝っていた相手に対して、自分たちで流れを手放してしまったことを考えると、やはり視座の高さや目標意識の統一は大きなキーワードになりそうですね。加えて、チーム内の健全な競争が生まれることが、輪島さんにとって理想のチームなのですね。

輪島:
はい。まずは目の前のことを一つずつ積み重ねながら、4年後に少しでもメダルへ近づけるように頑張りたいです。

中山:
アイスホッケーの駆け引きやプレーの面白さだけでなく、競技者として何を考え、どんな景色を目指しているのかまで知ることができて面白かったです。4年後のオリンピックの舞台で輪島さんが躍動する姿を楽しみにしています。今日は貴重なお話をありがとうございました!

輪島:
ありがとうございました!


【After Dialog】
輪島夢叶のプレーを支えているのは、冷静さを失わないことだけではない。焦りや緊張が生まれた時に、自分の状態を理解し、できるプレーへ意識を戻しながら、もう一度試合の流れに入っていく。その小さな立て直しを積み重ねることで、周囲を見渡し、相手のプレッシャーを捉え、最善の選択をする余裕が生まれている。かつては、パスを通すことが彼女にとって何よりの喜びだった。その美学は、結果が出ない時期にも簡単には揺らがなかった。ただ、オリンピックを目指す過程で、点を取らなければ勝てないという現実にも向き合った。そこで選んだのは、自分のスタイルを捨てることではなく、シュートを第一選択に加えることだった。選択肢が一つから二つに増えたことで、相手との駆け引きは広がり、得意としてきたパスもさらに活きるようになった。緊張を味方につけ、相手を観察し、自分の選択肢を増やす。その変化の根底にあるのは、チームを勝たせたいという思いと、結果を残すことへの強いこだわりだ。そして彼女が見据える先には、オリンピック出場ではなく、メダルを獲るという目標がある。そのために必要なのは、個人の得点力だけではない。一つの敗戦で崩れない感情の強さ、若手のエネルギーを引き出す働きかけ、そして全員が同じ高さでメダルを目指す組織力。前回大会で感じた悔しさを、自分自身の課題だけで終わらせず、チーム全体の成長へつなげようとしている。自分のプレーを信じながら、必要な変化を受け入れる。彼女は、目の前の一つひとつの選択を積み重ねながら、自らの可能性と日本代表の未来を広げようとしている。

『Dialog Code』

答えは、すぐには見つからないかもしれない。それでも自分と向き合い、考え続けることが、次の一歩をつくる。思考を解き明かす対話は続く。次は、誰の思考に触れようか。

【Athlete Profile】
輪島 夢叶(わじま・ゆめか)
2002年10月19日生まれ、北海道出身。
アイスホッケー選手。道路建設ペリグリン所属。

6歳の頃、アイスホッケー経験者である母と兄の影響で競技を始める。苫小牧市を拠点に競技を続け、駒澤大学附属苫小牧高等学校へ進学。高校時代から各年代の日本代表に選出され、U18女子世界選手権に出場した。その後、道路建設ペリグリンでプレーしながら女子日本代表「スマイルジャパン」に定着。2023年、2024年のIIHF女子世界選手権に出場し、2025年のミラノ・コルティナ冬季オリンピック最終予選では3試合で5得点を挙げ、グループG得点王として日本のオリンピック出場権獲得に大きく貢献した。同年にはハルビン冬季アジア大会で金メダルを獲得。持ち味であるスピードを武器に、得点力とチャンスメイクを兼ね備えたフォワードとして、日本女子アイスホッケー界初となるオリンピックメダル獲得を目標に競技へ取り組んでいる。
【Dialog Partner】
中山 知之(なかやま・ともゆき)
1995年1月26日生まれ、愛知県出身。
株式会社Athdemy 取締役CCO。

JFAアカデミー福島や世代別日本代表、海外リーグでのプレーといったアスリートとしての原体験を起点に、人間の「状態」と「パフォーマンス」の関係性を探求し続ける。異文化圏での教育コンサルタントや、国内大手不動産テック企業でのセールス/マネジメント経験など、多様な環境の中で「変化が生まれる構造」に向き合ってきた。現在はAthdemyにて、トップアスリートとの対話(Dialog)を通じて思考や感情に伴走。一貫して問い続けているのは、「人はどのような状態で本来の力を発揮するのか」。競技とビジネス、国内と海外といった境界を横断しながら、個人の内面にある思考や感情を言語化し、新たな気づきを共に生み出している。

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