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Dialog Code

『“魅せて、生きる”という選択──諦めなかった僕の証明』田中パウロ淳一 # Dialog Code

2025//08/06

「対話が変われば、スポーツはもっと変わるのか?」強くなるために必要なのは、トレーニングや技術だけではない。自分自身と向き合い、考え、気づくこと——それが次のステージへ進む鍵になる。『Dialog Code』—— アスリートたちの言葉から、その可能性を探るシリーズ。

今回登場するのは、田中パウロ淳一(プロサッカー選手・栃木シティFC所属)。
さあ、彼の思考を紐解いていこう。


1. “仲間との喜び”が、僕をサッカーに引き込んでいった

中山(Dialog Partner):
パウロさんの過去から伺いたいのですが、サッカーとの出会いで記憶に残っている一番若い頃の景色はどんなものですか?

田中:
同じ公園でサッカークラブが活動していて、親に「行ってこい」って言われて行ったら、仲間に入れてもらえたんです。もちろんサッカーをするんですけど、初めてのチームスポーツだったので、どうやって入ればいいかわからなかったんですけど、そのときに仲間に入れてもらえたことが強く印象に残ってます。もし仲間に入れてもらえてなかったら、サッカーをしてなかったかもしれないですね。

中山:
それは何歳のときですか?

田中:
小1です。

中山:
それまでは他にスポーツや習い事はやっていましたか?

田中:
サッカーと野球をやってたんですけど、チームとかではなかったんです。親が野球をしていたので、野球に入らせたいんだろうなってのは薄々感じてたんですけど。サッカーは幼稚園とかでやってて、野球は親と一緒にやるっていう感じでした。なのでサッカー始めるきっかけとしては、「仲間に入れてもらえた」っていうのが大きかったですね。

中山:
当時、小1でサッカーを始めたとき、何が楽しかったか覚えてますか?

田中:
やっぱり「仲間に入れてもらえたこと」ですね。サッカーというより、遊びの延長みたいな感覚でした。サッカーというより遊びの1つとして、ただただ楽しかったっていう感じです。

中山:
なるほど。では、サッカーで嬉しかった出来事の中で、一番古い記憶は何ですか?

田中:
小2のときの「ちびっこリーグ」みたいな大会で、それが初めてのリーグ戦で。「これに勝てば優勝」という試合でゴールを決めたときが一番覚えてます。これでどっぷりハマったって感じです。

中山:
そこでハマったんですね。何が嬉しかったんですか?

田中:
絶対に負けたらアカン試合で、一番強いチーム相手やったんですよ。0-1で負けていて、ラストのコーナーキックでこぼれ球を決めたんです。がっつり覚えてます。その瞬間、みんなが寄ってきたんですよ。それで、もう楽しくなっちゃったっていう感じですね。そこから「ゴールする喜び」みたいなものが芽生えてきた感じです。

中山:
サッカーの醍醐味というか、喜びが芽生えた瞬間ですね。

田中:
そうですね。それまでもゴールを決めたことはありましたけど、子どもの頃って点決めても普通にセンターサークルに戻るだけ、みたいな感じじゃないですか。でもこのときは、最後のワンプレーで点を決めたから、みんなが寄ってきて、もみくちゃになって。あれが僕のサッカーにハマった原点です。

中山:
冒頭でも「仲間に入れてもらえた」や「みんなが寄ってきた」という話が出ていましたが、パウロさんにとって“仲間”や“みんなで”というのは、どんな意味を持っていたんですか?

田中:
僕はもともとひとりっ子で、人と関わるのがめちゃくちゃ好きだったんです。でも、人見知りで、なかなか自分から積極的にいけないタイプでもあって。だから、チームスポーツってすごく“手っ取り早く仲良くなれる方法”だったんですよ。

中山:
パウロさんが人見知りというのは、ちょっと意外ではありますね。

田中:
今も人見知りですけど、大人になったから全然大丈夫になりましたね。高校時代に挨拶をしっかりできるようになってからは、挨拶でカバーするというか、最初の壁を越えられるようになって。それまでは、打ち解けるまでにすごく時間がかかってました。改めて、スポーツの力って本当に大きいなって思います。

2. 崩れた自信と、届いた言葉──「お前はプロになれる」

中山:
一方で、悔しかった出来事で一番若い時の記憶は何ですか?

田中:
全国に繋がるような大会だったかは覚えてないですけど、小4ぐらいに地域の大会の決勝で負けて初めて泣きました。

中山:
初めて泣いたんですね。

田中:
はい。自分にめちゃくちゃ自信があったので、屈辱というか。

中山:
屈辱に対する涙だったんですか?

田中:
そうですね。当時、調子に乗ってたというか、地域では上手い方だったんですけど県レベルじゃなかった。これに勝てば県大会という試合でめちゃくちゃ自信があったし、調子に乗ってたところに現実を見せられたっていう感じですね。

中山:
打ちひしがれるような感じだったんですね。

田中:
そうです。そこから自主練するようになりましたね。

中山:
そうなんですね。ゴールの喜びで「サッカーおもろい」と思い始めて、そこから「もっと上手くなりたい」って思ったのはこの体験が大きかったんですね。

田中:
そうですね。

中山:
面白いですね。学生時代の指導者の言葉で、今でも印象に残っている言葉は何ですか?

田中:
「お前はプロになれる」って言われて、それが“根拠のない自信”になりました。

中山:
それはいつ言われたんですか?

田中:
小5から小6の頃ですね。当時はもう「プロを目指す」って決めてたんですけど、県大会にも出られなかったし、出ても1回戦で負けるようなことが多くて。そんなときに「お前はプロになれるから、もっと練習しろ」って言われたんです。今思えば、あれは根拠のない発言ですし、大人になった今では「変だな」と思いますけど、当時の自分にとってはその一言で人生が大きく変わった気がします。その瞬間を、今でも覚えてますね。

中山:
当時、自分では「県レベルじゃない」と感じていた中で、それでも「お前はプロになれるからもっと練習しろ」って言われたとき、その言葉は自分にどう届いていたんですか?

田中:
「俺、もっと練習したらプロになれるんだ」って、素直に思いました。

中山:
素直に受け止めたんですね。確かに、こういう言葉の価値って大きいですよね。

田中:
そうですね。だからこそ、自分が子どもと接するときには、そういう言葉を大事にしてます。大人同士なら何でも言いますけど、子どもに対してはできるだけポジティブなことを伝えるようにしてますし、相手が“錯覚しちゃう”ような方向に持っていけるよういつも意識しています。

中山:
相手にとって“良い錯覚”が起きる、という点を意識しているんですね。

田中:
そうですね。何かのきっかけになればと思って意識しています。

3. 劣等感が築いたルーティーン──手放して辿り着いた“整い方”

中山:
最近、練習前に準備していることや、意識してることはあったりしますか?

田中:
今は逆に、もう何も準備しないですね。

中山:
「逆に」というところ、もう少し詳しく聞かせていただけますか?

田中:
昔はルーティーンをめっちゃ作ってたんですよ。それこそ松本山雅の時まではしっかり決めてそれをやってました。でも、それをちゃんとやっても結果が出なかったので全部やめました。今はルーティーンがなくても、“いつも同じ状態”に持っていけるように考えるようになったんです。歳を重ねるごとに、ルーティーンは徐々に減らしていきましたね。

中山:
減らしていったんですね。

田中:
そうです。僕、“何かのせい”にしがちなところがあって、「ルーティーンをやらなかったからかな」って思うことも多かったんですよ。だったら最初からやらない方がいいなと。例えば、練習ではストレッチをしない分、試合でストレッチすると体が軽く感じることもあって。だったら、そっちの方が自分には合ってるんじゃないかと思うようになりました。

中山:
先ほど、「昔はルーティーンをめっちゃ作ってた」と話されてましたが、それをやるようになったきっかけやどんなことをしていたか伺ってもいいですか?

田中:
もともと「世界で通用する選手になりたい」と思ってて、小学校・中学校くらいからめっちゃ本読んでたんですよ。当時は体幹トレーニングとかも出始めた頃で、それを積極的に取り入れてました。僕は人より劣ってるって自覚があったので、「やらなきゃダメだ」と思ってずっと続けてたんです。「これをやってるからプロになれた」っていう成功体験ができて、それをずっと繰り返してました。

中山:
なるほど。それが一つの成功体験になって、プロになってからも同じように積み重ねてきたんですね。

田中:
“同じことをずっとやってた”という感覚です。

中山:
小中学生のときに本を読んで、実際に取り組むって意外と珍しいなと思うんですが、本を読む習慣や読んだ内容を実践するようになったきっかけは何かあったんですか?

田中:
ほんとに普通のスポーツの本で、雑誌に載ってるような体幹トレーニングの解説とかなぜ必要かが書いてあるような本。あの頃はそういうのも新しかったんで、どんどん出てたんですよね。僕はひとりっ子だったんで、親もあまり口出ししてこなかったし、自分で好き放題やれてたんです。だから、本から自分なりに吸収できたのかもしれないですね。

中山:
なるほど。先ほど、パウロさんが「人より劣ってた」と仰ってましたが、それはどんな部分から感じてたんですか?

田中:
結果として、一番はトレセンに入れなかったことですね。あと、全国大会にも出てないし、これが分かりやすいところかなと。それに、遠征で自分の地域を出ると、全然歯が立たないことも多かったんですよ。そういう経験から、「自分は劣ってるな」ってずっと感じてました。

中山:
なるほど。パウロさんがトレセンに入ってなかったのは、確かにちょっと意外ですね。

田中:
かすりもしなかったんで(笑)「こいつら絶対抜かしてやろう」とずっと思ってましたね。

4. 勝利のために、オリジナルである──僕が見せたい“サッカー選手像”

中山:
試合中はどんなことを考えてることが多いですか?

田中:
試合にどうやって勝つかっていうことだけですね。誰が空いているかとか、相手がどう動いてるかっていうのを見ながら。昔は「どうやって自分がいいドリブルをするか」しか考えてなかったんですけど。それは大人になるにつれて、特に今の栃木シティに来てからはかなり変わりました。

中山:
なるほど。「どう勝つか」を考えるとき、“相手の動き”という話もありましたが、他にどんなことを考えていますか?

田中:
「どう勝つか」を考えたとき、僕自身がまず目立つ必要があると思ってます。僕のタイプ的に、ドリブルしたりシュートしたりするポジションなので、僕が目立つことで相手の注意が僕に向く。そうすれば、他の選手が活きてくる。だからまずは自分が“魅せる”。「こいつ危険だな」って思わせるようなプレーをして、相手をどんどん引きつけるように仕向けることを意識しています。

中山:
それは、どの試合でも意識的にやってるんですか?

田中:
そうですね。

中山:
パウロさんは、緊張やプレッシャーをどのように感じていますか?

田中:
いや、緊張はないですね。サッカーに関しては、緊張したことはないかもしれないです。

中山:
昔からですか?

田中:
ずっとそうですね。

中山:
そんなパウロさんでも、「この試合はめちゃくちゃ気持ちが入ったな」という試合はありますか?

田中:
どの試合も気合は入るんですけど、気合が入りすぎてない試合のほうがうまくいってますね。「絶対に結果を残さなきゃいけない」と思ってないときのほうが、結果が出ます。

中山:
結果への意識があまりないときのほうが、うまくいくんですね。

田中:
そうです。やる気はあるんですけど、気合い入りすぎると周りが見えなくなっちゃうんで。

中山:
なるほど。では、試合前とか試合前夜はどう過ごしてますか?

田中:
適当ですね(笑)いつも通りです。前日だから何か特別なことをするってことはなくて。

中山:
“いつも通り”って、例えばどんな感じですか?

田中:
栃木シティに来てからは、SNSをしまくってます。もちろん体に良いものを食べるとか、そういう基本的なことは毎日意識してますし、逆に「いつもと違うことはしたくない」って感じですね。

中山:
先ほど試合中に「自分が目立つ必要があるから“魅せる”」という話もありましたが、プレーでも発信でも“魅せる”ということを大事にしてる印象があります。パウロさんにとって“魅せる”というのは、どういう意味なんでしょうか?

田中:
「オリジナルじゃないといけない」と思ってます。僕が普通のプレーをするだけだったら、別に僕じゃなくてもいい。だから、“自分がサッカー選手である意味”、“自分の価値”を示すために“魅せる”っていうのを常に意識してます。

中山:
「自分がサッカー選手である意味」、そして「オリジナルを出す必要がある」と。

田中:
そうです。誰も普通のプレーでは憧れないと思うんですよ。僕も子どもの頃、そうだったんですよね。

中山:
そこは意図的に考えているんですね。面白いです。

田中:
やっぱり「目立ちたい」っていうのが一番にあって、その上で「いろんな人に憧れてもらいたい」っていうのが一番のモチベーションですね。

中山:
「ピッチで魅せる自分」と「発信で魅せる自分」、この2つの共通点と相違点は何ですか?

田中:
同じところは、「目立つためにどうするか」を考えている点ですね。でも違う点は、試合では“全力で走ってる姿”を見てもらいたいってことです。

中山:
おー、なるほど。

田中:
SNSでは、できるだけ人の迷惑にならない程度に、面白おかしくやるようにしてます。

中山:
「目立つため」というのはどちらにも共通する軸ですが、試合で“全力で走る姿”を見せたいというのは、どういう想いからなんですか?

田中:
試合では「真剣にやってる自分」を見てもらいたいんですよ。それを子どもたちに伝えるには、「走る」姿が一番わかりやすいと思うんです。サッカーは走らなくちゃいけないし、「サッカーは真剣にやらなくちゃいけないよ」っていうのを、走る姿で見せたいなって思ってます。

中山:
真剣にやってるところを見せたいという想いがあるんですね。

田中:
はい。ある意味“ギャップ”ですかね。

中山:
確かに、そこにはすごく“いい意味でのギャップ”がありますね。

田中:
できるだけ、そう見せるようにしています。

5. “見られる自分”を設計する──Jリーガーの価値を問い直す発信力

中山:
「人にどう見られるか」と「自分がどうありたいか」のバランスで、考えたりすることはありますか?

田中:
ないですね(笑)もちろん自分がやりたいことはあるんですけど、どちらかというと「人にどう見られるか」とか「人がどう考えてるか」に合わせるタイプです。人の理想に合わせて動くというか。もちろん理想は日本代表になったり、海外で活躍することだったんですけど、求められていたのはそこじゃなかった。だから、どんどん方向を変えていった感じです。

中山:
先ほど「オリジナル」という言葉が出てましたが、単に“自分のやりたいことを貫いてる”というよりは、「人が求めている姿」や「こうだったら憧れる」という理想像に自分を合わせていった結果、オリジナリティが生まれてるように感じました。

田中:
まさにそうですね。いろいろやってきた中で、そうなりました。もともとは、サッカーで海外に行くのが理想でした。でも、一番大きく変わったのはコロナの時期で、「これはどうしようもないな」となって、そっち(発信の方向)に振り切ったっていうのはあります。

中山:
面白いですね。周囲からの“見られ方”を参考にして動いてる一方で、パウロさんって客観的に見ると「自分の世界を貫いている人」に見られがちな気もします。でも実際は、どう見られているか、何を求められているかにすごく敏感なんですね。

田中:
そうですね。

中山:
パウロさんは「面白い」という言葉で語られることも多いと思うのですが、サッカーにおいて「試合の面白さが生まれる瞬間」はいつだと思いますか?

田中:
僕は点が入ったときしかないですね。もちろんドリブルで抜いたりっていうのも、個人的には「すげー」って思うんですけど、それって“個人のリアクション”というか“個人の感想”でしかないと思うんですよね。やっぱり「みんなで盛り上がる瞬間」が好きなんで、そういう意味ではやっぱりゴールが1番ですね。

中山:
“みんなで盛り上がる瞬間”としてのゴール。まさにパウロさんの原体験ともつながってますね。

田中:
そうですね。振り切ってるので、そこにはこだわってます。

中山:
その上で今、パウロさんがやっているゴールパフォーマンスとかがあると、すごく良いですよね。「人に見られる理由」みたいなものが見えてきた気がします。

田中:
Jリーガーの価値って、今ちょっと薄まってきてると感じてて。もちろんJ1で高いレベルでプレーするのは良いことだと思うんですけど、応援してくれる人が少ないっていうのは僕は納得いってないです。チームのレベルも大事ですけど、個人の知名度もめちゃくちゃ大事だと思ってます。知名度が変わるだけで、自分自身の価値も変わるっていうのを実感したんで。

中山:
今の話を聞いてると、SNSは今の延長での発信手段というよりも、“未来に向けた布石”のように聞こえてきました。パウロさん自身、このSNS活動においてどんな状態を目指していますか?

田中:
僕みたいなタイプは、本来プロの世界にはそんなにいらないと思ってるんですよ。でも、Jリーガーの選手の価値はもっと高くあってほしい。そのために、僕はSNSを使ってます。日本代表レベルの人だったら、SNSとかはやらなくても知名度がある人もいますし、逆にサッカーを使って他の活動をしてる人もいる。自分に合った方法を見つけるべきだと思っていて。僕がもしJ1の選手だったら、もっと自分をプロデュースしますね。

中山:
客観的に聞いていてすごく面白いなと思ったのが、ピッチ上でも「自分が目立つことで他の選手が活きる」って話がありましたよね。SNSも同じで、パウロさんが目立つことで、他の選手が知られるきっかけにもなっている。ピッチ内外の思想が繋がっていると感じました。

田中:
確かに。あと思うのは、SNSをしてると「あいつスカしてるな」って思われることもありますよね。Jリーグに限らず、アスリートって「一つのことをやり抜くのが美徳」みたいな風潮がまだあると思うんですけど、もうそういう時代じゃないなって思ってます。価値がある選手こそ、自分に合った形で発信すればいい。知名度を上げる手段は人それぞれ違っていいし、もっといろんな選手がそれぞれのやり方でやってほしいと思いますね。

6. 「パウロにできたなら」──僕だから、届けられる価値がある

中山:
現役選手でそこまで広い視点を持ってるのは珍しいと思うのですが、パウロさんが「Jリーグの価値が薄まってるんじゃないか」「一つのことだけじゃなく、他のことも大事だ」と思うようになったのは、どこからきてるんですか?

田中:
フロンターレのときから、ずっと気づいていましたね。今でこそ有名なクラブですけど、当時はまだ優勝経験もなかったし、地域の人には覚えてもらえても一歩外に出たら全然知られてなかったんですよ。カズさんやラモスさんといったスターたちと比べて、自分たちはまだまだだなって感じてました。僕もテレビに出るようなスターになりたいって思ってたけど、そこまではいけなかった。だから、方向を変えてSNSに振り切った、という感じですね。

中山:
なるほど。フロンターレ時代に「意外と見られてないぞ」と実感したことが大きかったんですね。

田中:
はい。川崎では知名度がすごかったんですけど、ちょっと外に出るとまったく違って。そのギャップが大きかったです。それって、Jリーグ初期の盛り上がりを知ってる世代だからこそ余計に感じたのかもしれないですね。

中山:
それを当時から感じていたんですね。

中山:
子どもや未来の人たちと関わる上で“人生を変える瞬間”にならないというのは、パウロさんにとってかなり大事なポイントですね。

田中:
そうですね。それこそサッカーで言えばJ2・J3の選手たちは、もっと「自分でやらなくちゃいけないこと」があると思ってます。セルフプロデュースも手段の一つだけど、賛否はあるので、マネージャーをつけたり外部の人と組むのもアリだと思います。レミたんっていうハンドボールの選手がTikTokでバズってお客さんを呼べるようになった話を聞いて「やっぱり意味あるんだな」って思いました。

中山:
“魅せ方”次第で、いくらでも変えられるってことですね。

田中:
そうです。「SNSなんてダサい」って思われる風潮、まだあると思うんですけど、僕からすると「ダサいのは“何もしないこと”」だと思ってます。魅せ方はいくらでもありますし、今は自分で発信できる時代だから、「何もしない選手にはならないようにしよう」って常に意識してます。

中山:
選手としての価値や、自分という“商品”をどう届けるかというブランディングは、すごく重要になってますよね。

田中:
そうですね。

中山:
そうした価値の向上が、ファンの増加にもつながっていきますよね。パウロさんにとって理想のサッカーキャリアの“終わり方”はどういうイメージですか?

田中:
まず今年はJ2に昇格したいと思っています。そして「僕みたいなタイプの選手でもJ1に行ける」「何か結果を残せる」ってことを見せたいですね。僕は今までうまくいかずにここまで来ました。でも、諦めなかっただけなんですよね。諦めるのが早い人は、他の仕事で成功できるかもしれないけど、今の僕では子どもたちに「諦めなければこうなれるよ」って姿を見せたい。

中山:
なるほど。そんなパウロさんが諦めそうになったときはありましたか?

田中:
ありました。松本山雅をクビになったときは、「もうやめようかな」って思ったし、リオ五輪世代で代表にも入れなかった。「無理かもな」「自分は向いてないかも」って思うこともありました。でも、諦めずにいたことで、試合に出られない期間が長くてもまたスタメンを取れたりしたんですよ。諦めるチャンスを逃しました(笑)山雅をクビになったときもJリーグからなかなかオファーが来なかったんですけど、栃木シティの社長から「Jリーグに行きたい」って言われて「じゃあ俺が叶えたろう」って思いました。やめなくてよかったなって今はすごく思ってます。お金のためじゃなくて、今まで自分がやってきたことに対する“プライド”というか。トレセンに入れなくてもここまで来られるっていうのは、子どもたちに伝えたいです。

中山:
目立つことが好きなパウロさんなら、サッカーじゃなくても注目を集められると思うんですけど、今後、サッカーとはどう関わっていきたいですか?

田中:
“普通じゃない選手の姿”を見せたいです。子どもたちにとって「パウロができるなら自分もできる」って思ってもらえるようにより近い存在でいたいですね。親近感というか。そのために動画を撮ったり、自己アピールしたりしてます。今練習してる子たちにとっても、意味のあるものになればいいなと思ってます。そのための“モデル”になりたい。エリートにはエリートの良さがありますし、エリートはエリートを見てもらえば良いですけど、世の中にはそうじゃない人のほうが多い。だから僕は、そっちの人たちに届けたいんです。

中山:
子どもからしたら、パウロさんも若くしてフロンターレにいたわけで、「十分エリートじゃん」って思うかもしれないですが、エリートとそうじゃない人」の違いはパウロさん的にはどう見てますか?

田中:
でも、僕トレセン入ってないんでね。それって、僕にとってはすごく大きなことで。トレセンに入れなかったからこそ、「こいつらマジで全員抜かしてやろう」と思えた。実際に今では、そのときの抜かしたいって思ったメンバーは全員抜きましたし、それはちゃんと伝えるようにしてます。

中山:
その体験をちゃんと伝えることで、そこのギャップを埋められるかもしれないですね。

田中:
エリートは勝手にうまくなるんですよ。だから僕が言うことはないし、エリートにはエリートが教えればいい。僕はむしろ「もうやめようかな」って思ってる人や、「自分には無理かも」と思ってる人たちの人生を変えたい。その“人生を変える瞬間”を届けるのが、自分の役割だと思ってます。

中山:
なるほど。パウロさんのオリジナリティですね。

田中:
はい。僕も日本代表を目指してましたけど、まずプロにならなくちゃいけない。そのためにはどういうふうに振る舞うかとか、どういう選択をするかっていうのが必要だと思います。まずはそこを“クリア”してもらえるように、これからも発信していこうかなと思ってます。

中山:
SNSでの発信やピッチでのプレー、すべてが「誰かの人生を変える瞬間」につながる。パウロさんのその姿勢は、きっとこれからのアスリート像の一つのヒントになるのだろうなと感じました。今日は、貴重なお話をありがとうございました!


答えは、すぐには見つからないかもしれない。
それでも自分と向き合い、考え続けることが、次の一歩をつくる。
思考を解き明かす対話は続く。
『Dialog Code』——次は、誰の思考に触れようか。


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