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Dialog Code

『“魅せる”強さ──“型”が問う生き方の美学』舟田葵 # Dialog Code

2025/10/22

「対話が変われば、スポーツはもっと変わるのか?」強くなるために必要なのは、トレーニングや技術だけではない。自分自身と向き合い、考え、気づくこと——それが次のステージへ進む鍵になる。『Dialog Code』—— アスリートたちの言葉から、その可能性を探るシリーズ。

今回登場するのは、舟田葵(空手選手・亀龍会 所属)。
さあ、彼の思考を紐解いていこう。



1. 型──“自分を表現する”という舞台

中山(Dialog Partner):
空手には組手と型がありますよね。舟田さんが型を選ぶようになったきっかけや理由は、どんなところにあったのでしょうか?

舟田:
僕は空手を始めてから中学生までは、組手も型も両方やっていました。もともと人前で自分を表現するということがすごく好きで、型の方が“自分の表現”ができると感じたので型を選びました。

中山:
人前で表現することが好きだったんですね。どんな時に自分は表現するのが好きだと感じていたのでしょうか?

舟田:
僕は映画やドラマ、舞台を見るのがすごく好きなんです。自分が演じるわけではないんですけど、俳優さんや女優さんがキラキラしていてかっこいいなと純粋に憧れていました。実は空手を始めたきっかけも、仮面ライダーへの憧れなんです。子どもの頃、仮面ライダーショーが好きで、実際に戦うというより“表現の場で輝く姿”に惹かれました。なので、空手の型で人前で演武をする時に「一番楽しい」「生きているな」と感じるんですよね。僕にとっては、組手よりも型の方が、自分を表現できる場所です。

中山:
面白いですね。両方を経験されている舟田さんだからこそ見える部分もあると思います。改めて組手と型の違いやそれぞれの魅力はどんなところにあるか教えていただけますか?

舟田:
組手は相手と向き合って行う実戦形式の競技です。寸止めではありますが、ポイントを取り合う格闘技のようなものですね。一方、型はフィギュアスケートに近いイメージです。決められた型や演武の内容の中から自分が選び、その完成度を審判がジャッジして点数をつけます。組手は駆け引きやスピード感があって、点の取り合いのような面白さがありますが、型は四方八方から敵が来ることを想定して、一人で攻防を表現する競技。つまり、型は“自分が主人公”なんです。どんな人でも主人公になれる。それが僕にとっての一番の魅力ですね。

中山:
自分が主人公になるという感覚なのですね。では舟田さんにとって演武の中で一番高揚感のある瞬間はどんな時でしょうか?

舟田:
僕の場合は演武を終えて観客の方々から拍手をいただいた瞬間です。あの一瞬が一番アドレナリンが出ますね。

中山:
演武が終わって周囲から称賛を受けるその瞬間に、ということですね。その時に感じるのはどのような感情なのでしょうか?

舟田:
そうですね…感覚的には自分の世界観に引き込めたという感覚です。達成感にも近いですが、それよりも全員が自分という作品に没頭してくれたような感覚。それが一番嬉しい瞬間ですね。

中山:
その感覚があるからこそ「これだから続けられる」と思える部分もあるのでしょうか?

舟田:
そうですね。試合の結果ももちろん大事ですが、僕がやめられないと思うのは日々の稽古の中での“発見”なんです。空手の体の使い方はものすごく奥が深いんですよね。ちょっとした体の感覚の違いで技のスピードが変わったり、逆に力が入りすぎて遅くなったり、そういう繊細な変化があるんです。その小さな違いによって技が変化する発見の積み重ねが僕にとっての魅力です。

中山:
なるほど。舟田さんの場合、日々のプロセスの中に楽しさや魅力を感じているのですね。

舟田:
そうですね。何かができるようになった瞬間だけが楽しいのではなくて、むしろ「どうしてできないんだろう」と考えながら試行錯誤する過程そのものを面白いと感じています。

中山:
発見や学びの積み重ねがモチベーションの源泉になっているのですね。

2. 静の戦い──“締め”と“イメージ”がつくるリアル

中山:
ここからは、日々の稽古について伺わせてください。稽古に臨む際に意識して行っていることや考えてから取り組むことがあるとしたら、どんなことを大切にされていますか?

舟田:
稽古ではもちろんストレッチやアップなどのルーティンもいろいろありますが、僕はそれ以上に“イメージ”を大切にしています。今日はどういうイメージでやるのかを明確にしてから稽古に入るようにしていますね。

中山:
ストレッチやアップといった身体的な準備に加えて、“イメージ”もセットで行っているんですね。普段どんなストレッチやアップを行うのでしょうか?

舟田:
一般的な内容ではあると思うんですけど、最初は動的ストレッチから入ります。最近は特に股関節の柔軟性を高めることにフォーカスしていて、股関節周りを中心に動かす動的ストレッチを行っています。その後にすぐに空手の稽古に入るわけではなく、まずトレーニングから入ることが多いです。

中山:
なるほど。そのトレーニングというのはどのような内容ですか?

舟田:
主に自重トレーニングですね。腕立て伏せのような動作もしますし、空手につながる動作を強化するようなメニューを取り入れています。そこから道着に着替えて本格的な稽古に入ります。

中山:
なるほど。先ほど「股関節」というキーワードが出ましたが、演武を拝見していると信じられないほどのスピード感やキレがありますよね。その動きを生み出すために特に意識されている身体的なポイントはどこなのでしょうか?

舟田:
本当にいろいろな要素がありますが、今一番意識しているのは「体の締め」ですね。

中山:
締めというのは具体的にはどういう感覚ですか?

舟田:
空手は他の競技に比べて少し特殊なんです。例えば、陸上の100m走だったら瞬発的に100%の力を出してそのまま走り切って終わりますよね。でも空手の場合は瞬発的に力を出したあと、それを“止めなければいけない”んです。この「止める」という動作がとても重要なんです。

中山:
なるほど。力を出し切って終わるのではなく、放出したエネルギーを“止める”。

舟田:
そうなんです。力を出すだけではなく、止めるために体を“締める”必要があるんです。でも全身に力を入れるわけではなくて、お腹に力を込めて体幹を中心に締めるんです。自分の体をまるで写真に撮ったようにピタッと止める。その“瞬間の締め”を意識して練習しています。これは空手特有の感覚だと思います。

中山:
非常に興味深いですね。先ほどイメージを大切にしているとも仰っていましたが、具体的にどんなイメージを持っているのか聞かせていただけますか?

舟田:
空手では突きや蹴り、受けなどさまざまな技がありますが、僕は映画や時代劇などからインスピレーションを受けることが多いです。例えば、技を出すときも、ただ叩く、パンチするという感覚ではなく、“槍で突く”とか、“刀で斬る”といったイメージで動いています。

中山:
なるほど。外から見ればパンチに見える動作も実際には“槍で突く”ようなイメージで行っているのですね。そのイメージは稽古の前に今日のテーマを決めるようなものなのか、それとも技ごとに固定されたイメージを持っているのでしょうか?

舟田:
僕は稽古ごとにイメージを大きく変えることはあまりしません。ここは槍で突く、ここは刀で斬る、というように技ごとにイメージを固定していて、そこに集中しながら取り組んでいます。もちろん新しい発見があれば試して変えてみることもありますが、基本は一定のイメージを持って稽古していますね。

中山:
なるほど。そのようなイメージを明確に持つことにはどんな意味がありますか?

舟田:
空手の型は相手を想定して演武するものなので、やっている本人が相手をリアルにイメージしていないと第三者から見たときに“戦っている”という印象が伝わらないんです。なので、まず自分の中でしっかりと相手をイメージしてその“戦っている感覚”を他者に伝えることを意識しています。そのためには、イメージをすること、そこにリアリティを持たせることが欠かせないといった感じです。

中山:
そのようなイメージを意識するようになったのは何かきっかけがあったのでしょうか?

舟田:
イメージだけでなく技術的なことももちろん大事なのですが、中学生の頃までは正直そこまで“イメージ”という感覚はなかったんです。ある時「すごいけど面白くない」と言われたことがあって、面白くないってどういうことだろうと考えたんです。たしかに決められた動作をただ技術的にこなすだけだと自分でも面白くないし、見る人からすれば“ただの踊り”のように見えてしまうなと思ったんですよね。そこで自分の中で相手をリアルにイメージして演武してみたら、「面白い」「もう一回見たい」と言ってもらえたんです。それがきっかけでイメージすることの大切さに気づきました。

中山:
なるほど。まさに技術的な動きから“表現”へと変化した瞬間だったんですね。

舟田:
まさにそうですね。

3. 積み重ねが“無”を呼ぶ──心・技・体の静かな均衡

中山:
来月試合があるという状況になった際、その期間で最も意識するポイントは何ですか?

舟田:
僕は学生の頃から、「心・技・体」の3つを大切にしなさいとずっと言われてきました。この3つのうちどれかひとつだけに偏ってしまうと、ベストコンディションは絶対に作れない。だから僕は、心、技術、体のすべてをバランスよく整えていくことを意識しています。すべてを日々のルーティンの中で積み重ねていくイメージですね。

中山:
なるほど。試合前日や前夜はどのように過ごされるのでしょうか?

舟田:
前日が移動日になることも多いので、実際には完全な休みというより移動を兼ねたオフという感じですが、前日はまったく空手をすることはないですね。次の日のことはなるべく考えず、心身ともにリラックスできる状態を保つようにしています。意識的にリラックスしようと思うわけではなく、あくまで“いつも通り”で過ごす感じですね。

中山:
なるほど。前日に明日はこうやろうといったイメージすることはありますか?それともすでに完全にできあがった状態で当日を迎えるのでしょうか?

舟田:
2日前までに、あとはやるだけという状態に仕上げます。僕はプロセスをとても大事にしていて、その過程では緊張したり不安になったり、心が折れそうになることもありますが、試合当日はその日の自分を信じるというよりも、これまで積み上げてきた自分を信じるようにしています。そうすると不安や緊張も自然と整ってくるんです。逆に前日に何かをやろうとすると、焦りやバランスの崩れにつながる気がして。

中山:
プロセスの中では不安になったり、心が折れそうになったりするとも仰っていましたが、そう感じるのはどのような時ですか?

舟田:
感覚がズレたときですね。空手の型は相手がいないので、自分の感覚のズレや心の状態によって動きが大きく変わってしまうんです。その感覚のズレを感じたときに、「やばいな」「この技では勝てないかもしれない」と不安になります。

中山:
なるほど。そのズレを感じた時はどのように立て直すのかも聞かせていただけますか?

舟田:
まずは過去の自分の演武を振り返ります。自分の練習動画をスローで見ながら、どんな体の使い方をしていたかを分析します。それでも自分の体に落とし込めない時は先生やトレーナーに見てもらって修正してもらいます。

中山:
動画を見る際のポイントは何かありますか?

舟田:
下半身と上半身の“分離”を意識して見ます。しっかり全身を連動させて動いているか、あるいは分けて使うべきところができているか。そういったタイミングや連動の部分を重視して見ています。

中山:
体の動きを観察して分析されているわけですね。競技柄聞いてみたいのですが、演武において「呼吸」はどんな意味を持っていますか?

舟田:
呼吸は非常に大切です。ただ、呼吸を出そうと意識すると技が詰まったり、体に力が入りすぎてしまいます。なので僕は呼吸を出すというより、自然に漏れる感覚でやっています。空手の型には速い動きもあれば、滑らかな動きやゆっくりした動きもあるので、場面ごとに吸って、吐いてという細かな強弱は意識しています。

中山:
なるほど。呼吸と体の動きが完全に連動しているわけですね。

舟田:
そうですね。呼吸は本当に重要です。

中山:
では当日、演武に入る直前の舟田さんの思考はどんな状態なのでしょうか?考えていることがあるのか、それとも無のような感覚なのか。

舟田:
調子がいい時は、完全に“無の境地”に入ります。僕は視野が広がるというより、一点に集中するタイプで、周囲が静まり返って自分の中に焦点がギュッと集まるような感覚になります。

中山:
調子が良いときは頭の中が静かで、何も考えていない状態でしょうか?

舟田:
そうですね。積み上げてきたプロセスがあるからこそ、その日にいかにオートマチックに流れを出せるか。そういう状態に入れた時が一番良いです。

中山:
逆に調子があまり良くないときはどんな状態になるのでしょうか?何か思考が浮かんだり、感情が動いたりすることはありますか?

舟田:
ありますね。これまでの練習で意識していた弱点を思い出してしまうんです。「ここ大丈夫かな」「ここ気をつけなきゃ」といった具合に、過度に意識が向いてしまう。結果的に集中が分散してしまうんです。

中山:
なるほど。そのような状態になった時はどのように戻していくのでしょうか?

舟田:
体よりもイメージに戻します。具体的に考えすぎず、いい意味で“モヤモヤさせる”感じですね。

中山:
いい意味でモヤモヤさせるというのは興味深い表現ですね。なぜそれがいいと考えているのでしょうか?

舟田:
やっぱり、僕にとっては“無の境地”が一番いい状態なので、わざと記憶を曖昧にさせるように意識しています。考えすぎて火がついた思考をふわっと消していくようにしています。煙が立ったら火を消して、ふわふわと煙が消えていくような感覚。そうすると自然に“無”に戻っていけるんです。

中山:
なるほど。演武をされている舟田さんは、見る人に相手が見えるようなリアリティを伝えていますが、本人の中では無の状態にある。その中で実際に相手をイメージすることもあるのでしょうか?それとも完全に動きに集中している感覚でしょうか?

舟田:
はい。何度かしか経験がありませんが、いわゆる“ゾーン”に入った時は、イメージしようとしなくても勝手に相手が見えてくるんです。自分から作り出すのではなく自然と見えて、さらには聞こえるんです。あれは本当に不思議な感覚でした。

中山:
“聞こえる”についてもう少し聞かせてください。

舟田:
決勝の舞台の時です。その時、実況の声がすごくクリアに聞こえてきたんです。

中山:
まるでその実況すらも自分の世界の一部になっているような、空間全体を自分の中心で把握しているような感覚だったのでしょうか?

舟田:
まさにそうですね。自分の動きによって周囲すべてが動いているような感覚でした。

中山:
そのゾーン状態を一度経験するともう一度入りたいと思いますよね。どうすれば入れるのかと考えたりはされますか?

舟田:
めちゃくちゃ考えますね(笑)毎回入れるなら入りたいんですけど、やっぱり難しいんですよね。

中山:
難しい質問ですが、ゾーンに入れる時と入れない時、その違いはどこにあると思いますか?

舟田:
僕は当日のコンディションというよりプロセスだと思っています。どれだけその過程で自分を調整し、感覚を研ぎ澄ませてきたか。そこが本当に大事なんじゃないかなと。だからこそ日々の稽古や過ごし方の中にすべてが詰まっていて、その積み重ねが結果的にゾーンへ導いてくれるのだと思います。

中山:
ゾーンは偶然ではなく、積み重ねの先に訪れる状態として捉えているのですね。
試合後の振り返りは、どのタイミングで、どのような方法で実施されていますか?

舟田:
僕は試合が終わってすぐには自分の動画を見ないようにしています。他の選手は試合直後にYouTubeなどの配信で自分の演武を確認することが多いですが、僕はまず第三者の意見を聞きます。今の自分が他の人にどう映ったのかを先に外の視点で受け取り、そのうえで自分の動画を見返して振り返るようにしています。

中山:
まず外部のフィードバックを受けてから映像で確認するのですね。その順序にされている理由も教えていただけますか?

舟田:
僕は無心でやるので試合中の感覚はあまり覚えていないんです。だから直後に映像だけを見ると、「あれ?こんな感じだったっけ?」ってなるんですよ。そうやって感覚の記憶を取り戻す作業に時間を使うよりも、まず他の人の印象を聞いて、どこが良くてどこが課題かを整理してから見た方が効率がいいんです。そうすると自分の中でも修正点や良かった点をすぐにピックアップできます。

中山:
なるほど。効率だけでなく、客観的視点で評価軸を先に整えることで映像の解像度を上げているわけですね。

4. 魂を動かす演武──"絶対王者"の姿

中山:
少し哲学的な問いになりますが、舟田さんは戦わないで“型”を極めるという選択をされていますよね。例えば、戦う競技であれば勝てば嬉しい、相手より強くなりたいというシンプルな動機がありますが、“型を極める”という行為にはどんな価値を見出していますか?

舟田:
確かに僕がやっている型という競技は実際に相手と戦っているわけではなく、空想の相手を想定して演武をしています。でも僕は「戦う」という表現そのものがすごく好きなんです。戦うことを通して自分の生き方や考え方を“魅せる”ことに美学を感じていて。少し自己中心的かもしれませんが、僕の中では「自分を魅せる=極める」という感覚があります。

中山:
なるほど。自分を魅せるということ自体が舟田さんにとっての表現であり、美学の追求でもある。型という競技が持つ強さと美しさの両立が、そのまま哲学に結びついているのですね。

舟田:
そうですね。まさにその通りです。

中山:
では、同じ型を行う選手の中でも、“一流”と“超一流”と呼ばれる人がいるとしたら、その違いはどんなところにあると感じますか?

舟田:
僕の感覚なんですけど、一流の人は「すごいな」「速いな」と、見る人に“傍観者として”そう思わせる人。でも超一流の人は、見る人が「やられたら死ぬかもしれない」と、まるで“自分がその場にいるかのように”感じさせてしまう人なんです。つまり、超一流は“見る人を引き込んでしまう”人。観客が無意識のうちにその世界の中に入ってしまうような表現ができる。僕はその違いだと思います。

中山:
なるほど。見る人が引き込まれてしまうかどうか。観客が作品の中に入り込んでしまうような臨場感ですね。

舟田:
そうです。超一流の人の演武を見ていると、まるで自分が攻撃されているような感覚になる。見る側の方が汗をかいてしまうような緊張感があるんです。見る人の心をどれだけ動かせるか。そこに“超一流”の境界線があると思います。

中山:
非常に深いですね。では、競技を通じて社会や他者に伝えたいことや示したいものがあるとすれば、それはどんなものでしょうか?

舟田:
型の演武ってすごく孤独な戦いなんです。相手がいない分、常に自分と向き合うことになる。だからこそ、自分の内側を見つめ直す時間が多くて、それが結果的に自分を知ることに繋がっていくんです。僕は型をやっていると他者との競争よりも自分を理解し、自分を改善することの方が大切だと感じます。劣等感や比較といった感情から解放されるんですよね。自分の中だけで戦う競技だからこそ、“自分の成長”に集中できる。これは社会に出てからも通じる考え方だと思っています。

中山:
なるほど。型を通じて表現できるものは、現代社会においてものすごく価値がありそうですね。

舟田:
そう思います。最近はSNSなどを通じて他人の生活や努力を見て羨ましがったりすることも多いですよね。でも、他人にばかりフォーカスしていると自分の軸がどんどんブレていくと思うんです。空手の型をやっていると、「他人ではなくまず自分だろ」という思考が自然に身につきます。だから、型を通じて得られるこの思考や在り方は、むしろ今の時代にこそ必要だと思っています。

中山:
型という競技の中には、現代社会へのアンチテーゼのようなメッセージがある。他人と比べず、自分を見つめ、自分を整えていく。それはスポーツの枠を超えて、人生そのものに通じる哲学だと感じます。

では最後に、未来についても伺わせてください。舟田さんが型を通じて目指しているゴール、そして描いている未来像はどのようなものなのでしょうか?

舟田:
僕は空手を始めたときからずっと、“絶対王者”になると口にしてきました。いろんな競技で勝ち続ける人たちがいますが、彼らには共通して勝ち続ける理由があると思うんです。例えば、練習量や日々の意識の積み重ね。ボクシングの井上尚弥選手なども、試合の結果ばかりが報じられますが、その裏にある過程を知るとやっぱりすごいと感じます。そういう積み重ねがあるからこそ、絶対王者になれているんだと。僕も自分の過去やプロセスを多くの人に伝えて、それが誰かの勇気や刺激になれたらと思っています。

中山:
舟田さんが考える“絶対王者”を定義するとしたら、どんな存在を指すのでしょうか?

舟田:
僕の中での絶対王者というのは、ただ勝ち続ける人という意味ではないんです。勝ち続けるだけでなく、勝ち方にも理由がある人。見ている人がなぜ強いのかを感じ取れる人。そして、見ている人の心を動かせる人が、僕の考える絶対王者です。

中山:
なるほど。勝つことそのものだけではなく、勝ち方や表現の中身で人を惹きつける存在なのですね。例えば、試合で勝つための準備と人を動かすための表現の準備は、舟田さんの中ではどのように違うのでしょうか?

舟田:
基本的には同じですが、“人を動かす演武”というのは、結果的に“勝てる演武”なんです。僕が意識しているのは、いかに観客を巻き込めるか。演武中に「この人は本当に戦っている」と感じてもらえたら、それはもう勝ちだと思っています。

中山:
どんな競技でも“応援される理由”がある選手は強いですよね。舟田さんが考える“人を動かす演武”とは、具体的にどういう状態を指すのでしょうか?

舟田:
見ている人の感情を支配できる状態です。例えば、僕が技を出した瞬間に観客が息をのみ、一拍置いて動いたときに全員の呼吸が止まる。そういう瞬間を作れたら、会場全体の空気を自分のものにできる。空間全体を自分の呼吸と動きで支配する。それが僕の理想です。

中山:
想像するだけで鳥肌が立ちますね。そうした領域に到達するために日々大切にされていることはありますか?

舟田:
やっぱり過程を信じることですね。どんなに焦ってもすぐには結果は出ません。でも日々の稽古や意識の積み重ねが必ず自分を強くしてくれる。結果はあとから自然についてくるものだと思っています。

中山:
本質的な考えですね。

舟田:
ありがとうございます。そして僕が目指す絶対王者というのは、勝っている姿だけで人を惹きつける人ではなく、過程の姿勢で人を動かせる人です。結果だけでなく、向き合う姿そのものに価値がある。見ている人が「自分も頑張ろう」と思えるような存在になりたいですね。 

中山:
素晴らしいですね。舟田さんの強さの定義が聞こえてきました。勝つ人=強い人ではなく「人を動かせる人=強い人」。舟田さんの考える“絶対王者”は、まさにその象徴ですね。

舟田:
そうありたいですね。僕はこの競技を通して、型という文化そのものの価値をもっと広めていきたいと思っています。型って、地味とか難しいとか言われることもありますが、実はものすごく奥深くて、見る人にも“生き方”を感じてもらえる競技なんです。だから僕が表現を通してその面白さを伝えることで、この競技全体の価値を上げていけたら嬉しいです。

中山:
型という競技を通じて、スポーツの新しい可能性を見せていく。舟田さんの表現がこれから多くの人の価値観を変えていくと感じました。本日は本当にありがとうございました。

舟田:
ありがとうございました!


答えは、すぐには見つからないかもしれない。
それでも自分と向き合い、考え続けることが、次の一歩をつくる。
思考を解き明かす対話は続く。
『Dialog Code』——次は、誰の思考に触れようか。


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https://athdemy.com/method

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