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Dialog Code

『構造を読む知性──俯瞰が導く、最も危険なプレー選択』山本悠樹 # Dialog Code

2025/11/19

「対話が変われば、スポーツはもっと変わるのか?」強くなるために必要なのは、トレーニングや技術だけではない。自分自身と向き合い、考え、気づくこと——それが次のステージへ進む鍵になる。『Dialog Code』—— アスリートたちの言葉から、その可能性を探るシリーズ。

今回登場するのは、山本悠樹(プロサッカー選手・川崎フロンターレ所属)。
さあ、彼の思考を紐解いていこう。


1. 俯瞰の原点──“団子の外”から

中山(Dialog Partner):
山本さんがサッカーを始めたきっかけはどのようなものでしたか?

山本:
サッカーを始めたのはたしか5歳くらいの頃だったと思います。保育園の発表会では「野球選手になりたいです」って言ってたみたいで、やりたいと思って始めたわけじゃないんです。始めた理由は単純で、仲の良かった友達がサッカーをやっていて、友達と一緒にいられる時間を作りたかったという感覚だったと思います。

中山:
友達と一緒に過ごすための手段としてサッカーを選んだんですね。

山本:
そうなんです。サッカーがやりたいって感じではなくて、みんなやってるしやってみようかなくらいの軽い気持ちでしたね。

中山:
そこから本格的にサッカーを始められたと思うのですが、プロを目指そうと思い始めたきっかけは何かありましたか?

山本:
どこでスイッチが入ったのかはっきり覚えてないですが、すごく楽しかったんですよ。子どもの頃はよく団子サッカーって言うじゃないですか。僕はあの団子の外側にいるタイプで、周りを見ながらやるのが得意だったというか、自分に向いてる感覚があって。

中山:
その頃から、俯瞰して見る感覚というか、周りを観察しながらプレーする感覚があったんですね。

山本:
そうですね。それに父がすごく熱心で、試合を見に連れて行ってくれたり、いろんな環境を作ってくれたんです。ずっとバルセロナだけを見ていて、漠然とすごいな、こんな世界があるんだなって思っていました。

中山:
小学生の頃にはもうサッカーが生活の一部になっていた感じですね。当時、何が一番楽しかったのでしょうか?

山本:
点を取ることが好きでした。団子の外にいたからこぼれ球が全部自分に来るんですよ。その頃ってまだ能力差もないし、こぼれてきたボールを拾ってそのまま広いスペースにドリブルすれば点が取れるみたいな(笑)昔はそればっかりやってたのを覚えていますね。

中山:
すでに山本さんらしさが出てますね(笑)

山本:
そうですね。昔の指導者に会うと「悠樹は団子サッカーに一切入らなかったよね」って言われます。

中山:
それは性格的な部分も関係していると思うのですが、当時の自分はなぜそうしてたと思いますか?

山本:
当時はたぶん無意識ですね。でも僕はもともと人とぶつかるのがあまり好きじゃないんですよ。ぶつからなくても見ていたら「こぼれてくるな」みたいな成功体験をどこかでして、それが残ってたんだと思います。

中山:
なるほど。俯瞰して見ることで得た成功体験がその後の感覚の土台になっていったわけですね。僕自身も子どもの頃サッカーをしてましたが、完全に団子の中にいたタイプなのでもし一緒にやっていたら山本さんにこぼれ球を取られてたんでしょうね(笑)

山本:
一緒にやってたらそうですね(笑)

中山:
学生時代で、今のご自身に影響を与えた、または印象に残っている言葉は何ですか?

山本:
言葉ですか…出来事はたくさんあるんですけど、言葉となると思い浮かばないですね。昔から何かを制限されたり強く指示されたりすることがほとんどなかったんですよ。アドバイスをもらうことはあっても、これはするなとかは言われた記憶はなくて。今思うとすごくありがたかったなと思います。

中山:
なぜそれがよかったと感じますか?

山本:
こうしなさいと言われなかったおかげで、自分で考える癖がついたと思います。課題を見つけて自分なりに解決してまた次の課題が出てきてというサイクルを無意識のうちに繰り返してました。外から何かを押しつけられずに、自分の中で課題を消化する感覚がずっとありましたね。

中山:
なるほど。その自分で考えるという部分は、もともと好きだったのでしょうか?

山本:
考えるのは好きだったと思います。周りが段々大きくなっていく中で僕は身体能力が特別高いタイプではなく、試合中でも大きい選手にボールを奪われたりと小さな挫折がたくさんありました。その度にどうしようと考えるんです。性格的にあまり人に頼るタイプでもなかったので、自分の中で試行錯誤を繰り返していましたね。

中山:
ある種、考えざるを得えない状況で、なんとか自分で解決しようと思考のサイクルを回していたんですね。

2. 「いつも通り」と「臨機応変」

中山:
プロになった今、日々の練習や準備の中で意識して取り組まれていることはありますか?

山本:
練習の向き合い方はいつも通りという感じでほとんど変わらないですね。本当に同じなんです。だいたい同じタイミングでお風呂に入って、個人でやるウォーミングアップも毎回ほぼ同じことをここ何年かは続けています。もちろん新しく取り入れることもありますけど、基本の流れはずっと変えてないですね。今年は特に“このままの状態で臨む”のが大事だなと感じています。

中山:
その変えないという選択にある意味や意図をどう考えていますか?

山本:
いつも通りが一番いいんですよね。特別なことをするよりも普段と同じペースで試合に入る方がリラックスできる。特に今年はそれをすごく感じました。試合前に気持ちを高めていく選手もいれば、意図的に声を出してテンションを上げる選手もいて、いろんなタイプの選手がいるんですけど、僕はなるべく普段のテンションを保って臨む方が自分に合ってると思います。

中山:
試合でもいつも通りでいたいからこそ、普段からいつも通りを大事にされているのですね。

山本:
そうですね。ルーティンを作ろうとしたこともあったんですけど結局やめましたね。ルーティーンを作ったとしても、例えば渋滞で到着が遅れるとかもあるし、そもそもサッカーって予期しないことがどうしても起こるじゃないですか。僕はルーティンが崩れただけでダメだったのはそのせいだと思っちゃうのが嫌なので、いつも通りやるためにいつも通りのことしかしないようにしています。それが一番メンタル的にも安定してプレーできると思いますね。

中山:
いつも通りを守る中で、先ほど新しいことを取り入れる時もあると仰っていましたよね。その判断はどのような基準でされているのでしょうか?

山本:
例えば、ウォーミングアップでいつもの準備をしているけど「体が重い」とか「何か違和感がある」というときは、ずっとお世話になっているトレーナーやチームのフィジカルトレーナーに相談してアドバイスをもらいます。やってみて良ければ続けるし、合わなければやめる。そうやって臨機応変に調整しています。

中山:
なるほど。ベースの積み重ねを大切にしながら状況に合わせて微調整していくのですね。その中で今年は特にこのままの状態で臨むのが大事だと感じたのはなぜでしょうか?

山本:
自分でも感じているのですが、今年は特に調子が良いと周りからも言ってもらえるんです。ある種、願掛けみたいなものでもありますが、試合前の過ごし方が変わったのが大きいのかなと。以前は試合だから、「試合だ!」って気持ちを高めていたんです。でもある試合でお風呂に長く入ってみようと思ってゆっくり時間を取ったらそれがすごく良くて。お風呂に入ると落ち着いて、結果的に試合でもいつも通りのメンタルでプレーできたのでそこからずっと続けています。

中山:
なるほど。その“いつも通り”は具体的にどんな違いとして現れるのでしょうか?

山本:
試合中は人もボールも目まぐるしく動きますよね。いつも通りの状態であれば“自分の頭の中だけはずっと同じスピードで流れてる”感覚があるんです。落ち着いた状態で判断できて相手のこともよく見える。なので試合だからといって高めすぎるのは僕にとっては違うんじゃないかなと気づけたことが一番の変化ですね。

中山:
リラックスすることは単なる落ち着きというより、頭がよく回る状態や周囲が見える状態につながっている感じなのですね。

山本:
まさにそうですね。プレースタイル的にも、気持ちを高めていくより落ち着いて試合に入って、全体を見ながら臨機応変に自分を変えていく方が合ってるのかなと思ってます。

中山:
なるほど。自分の最適な状態を言語化しながら更新していく姿勢が印象的です。

山本:
そうですね。これも結局、僕なりにちょっと試してみて「なんか良いぞ」「なんでだろう」と検証を回していった結果なんですよね。

中山:
普段の練習でここを伸ばしたい、あるいは改善したいと思ったときはどのように取り組まれていますか?

山本:
練習そのものはいつも通り入るようにしています。その中でここをもう少し良くしたいとかちょっと足りないなという時は、練習後に個人で取り組むことが多いです。技術的な部分であればその意識を持ったままチーム練習の中で取り組めますが、フィジカル面になると練習後にしっかり時間を取って行うようになりました。今年は特にそういう取り組みが増えたと思います。

中山:
チーム練習の中で補えない部分は練習後に取り組むのですね。

山本:
そうですね。技術や判断に関しては、自分の思考でプレーの選択を変えられると思うんです。例えば、「もう少しボールを運ぼう」や「前に仕掛けよう」とかであれば、意識だけで変えられると思います。でも、動きや体づくりのような部分はそうはいかないので、練習後にフィジカルトレーナーに相談して、追加でやるようにしています。

3. “考えない”が生む、集中の閾値

中山:
先ほど、試合前のリラックスのお話もありましたが、試合前夜はどう過ごしているのでしょうか?

山本:
サッカー選手っぽくないくらい本当に普通ですよ(笑)うちは犬が2匹いるんですけど、いつも通りご飯を食べてお風呂に入って、奥さんと犬とのんびり過ごしています。

中山:
なるほど。夜の試合も多いと思いますが、当日の午前中はどうですか?

山本:
午前中はみんなで朝ごはんを食べに行くことが多いですね。2匹の犬を連れて近くのカフェでモーニングを食べてぼーっとして。それからお昼ごはんを食べて会場に向かうという流れが定番です。

中山:
それも先ほど話されていたいつも通りやリラックスという観点でそうされているのでしょうか?

山本:
そうですね。夜の試合の日は一度体を動かした方がいいと思って始めたんです。アウェイだとホテルから出られなくて体が固まることがあったので、朝に少し散歩するようになって。それが良くて、今はホームのときもリラックスも兼ねて、犬と一緒に散歩して、朝から軽く動く感じですね。

中山:
ギリギリまで力を抜いて、試合での集中力やいい状態を保つために、あえて落ち着いた時間を作られているのですね。

山本:
そうですね。あんまり「試合だ、試合だ」ってならないようにしてます。

中山:
試合が近づいていく中で、どのタイミングでスイッチが入る感覚になるのでしょうか?

山本:
ウォーミングアップの前ですね。チームで最後のアップに行く前に、毎回お風呂に入って熱いシャワーを浴びるんです。そこから“パン”と切り替わる感覚があります。

中山:
そこから試合に入るまでの間はどんなことを考えていますか?

山本:
うーん…自分に語りかけたり、対話している感じです。「あのときもうまくいったし、あの試合もできた。今日も大丈夫」みたいな感じで。別に死ぬわけじゃないし今日も落ち着いてやろうかってくらいの気持ちでウォーミングアップが始まって、体を動かしながら今日の感覚はこんな感じかと確認していく。そうやって頭の中で整理しながらチーム全体のアップに入って、そのまま試合という流れですね。

中山:
なるほど。自分に対して語りかけるような感覚なのですね。それは山本さんにとってどんな意味があるのでしょうか?

山本:
多分、僕はメンタルが特別強い方じゃないと思うんですよ。試合前に気持ちを高めすぎると緊張も出てくるし、ミスしたらどうしようとか考えちゃうのが嫌なんですよね。僕みたいな選手はどんな状況でもひょうひょうとプレーしていたいし、それが良さでもあると思っていて、そのために直前まではできる限りリラックスして、余計な「できないかも」という思考を入れないようにしています。

中山:
なるほど。余計な緊張や不安を抱えないためにもギリギリまでリラックスしておく。そして試合が始まる前に、いい意味で“開き直り”に切り替えるような感覚なのでしょうか?

山本:
そうですね。長ければ長いほど僕の性格上あれこれ考えちゃうんですよ。以前はそれで「あれはダメだな」「これもうまくいかなかったな」みたいな思考になっていた時期もありました。でも今のやり方だと考える時間がすごく短いんです。その短い中で上手く開き直れていて、そのタイミングが今はすごく合っているんだと思います。

中山:
まさに今それが良いサイクルとして回っている状態なのですね。

山本:
そうですね。僕は自分ができると思ってもその持続が短いんですよ。もし1時間その気持ちを保てって言われたら、どこかで「ダメかも」「相手強いしな」とか余計なことを考えちゃうと思うんですけど、今はそういう隙間がない。

中山:
意図的に“考えない時間”を作っている感覚なんですね。

山本:
そうですね。リラックスした状態で過ごしながら試合直前の短い時間にギュッと集中してすぐに試合に入る。だから余計なことを考える暇がない。結果的に、不安や恐れを感じる時間もないんです。

中山:
面白いです。“考えない技術”と言えるかもしれませんね。

山本:
僕も今喋ってて「そういうことかも」って思いました(笑)意外とこうやって話しながら言葉にしてみると、「そうかそういう仕組みだったのか」って気づきますね。

4. 「構造理解」と「思考速度の最適化」

中山:
試合中のお話も聞かせてください。今日は良いなと手応えを感じているときは、ご自身の思考はどのような状態になっていますか?

山本:
全体の動きというよりも先読みで頭が動いている感覚です。相手の表情から「今ちょっと嫌そうだな」とか「何を考えているんだろう」というところまで見えています。

中山:
一方で、あまり良くないと感じる時はどのような状態でしょうか?

山本:
悪い時は、「次に自分にボールが来たらどうしよう」みたいに、すぐ先のことを考えてる感じですね。そしてボールがきた時に情報を詰め込みにいってしまうので、結果として判断が遅れたり精度が落ちたりすることがあると思います。

中山:
良くないなと感じた時、その状態を戻すためには何をしていますか?

山本:
まずは深呼吸をします。それから一度観察モードに入る時間を作ります。ピッチの中にいると外側からの視点を持ちにくいのですが、もともと俯瞰して見るのが得意なので、そこに意識を戻すイメージです。もしくは、5分でもいいので簡単なプレーで成功体験を作ります。たとえば簡単なパスを通すとか守備で相手にしっかりついていくとか。そのような小さな成功を積み重ねるとリズムが戻ってくる感覚がありますね。

中山:
なるほど。深呼吸して観察に入るか、小さな成功体験を重ねてリズムを整えるのですね。

山本:
そうなんです。トルクがあがってる時って良くないんですよ、考える速さが速くなりすぎて。頭の中の処理スピードが上がりすぎると、自分が見えてる世界が速く見えちゃうんです。プレスが来てないのに来てるように感じる。圧力がかかってないのに、かかってるように錯覚する。「来てないやん」ってところまで見えてる時が、自分でも“いい時だな”って分かります。

中山:
なるほど。思考のトルクを下げた方がいい感覚なのですね。

山本:
そうですね。速ければ良いってものでもないので、準備の段階で整理しておいて、実際に使う時には頭のスピードを上げない。それが自分には合っています。

中山:
それがまさに今年のプレーで感じられる“余裕”や“間”につながっているのですね。

山本:
そうですね。自分でも「全然来てないやん。遅いな」と感じる時があるんですよ。そう思えるのは成長だと感じています。

中山:
面白いですね。悪い時は海の中でがむしゃらに泳いでる感じで、良い時は一回立ち止まって今この辺だなって見えるみたいな。

山本:
まさにそんな感じです(笑)

中山:
山本さんのプレーにはクリエイティブな縦パスやスルーパス、浮き球のパスが多いのが印象的です。あのようなプレーの選択は直感でしょうか?それとも理屈や構造を踏まえた上での判断でしょうか?

山本:
うーん…構造理解は前提としてありますね。その上で瞬間の判断は直感に近いです。自分がその瞬間に見えた景色を信頼して行動するという感覚ですね。ボールを扱っているのでどうしても間接視野でしか見えないじゃないですか。頭がクリアな時ほど、パッと見えた一瞬の景色を迷わず信じて選択できる。その信頼できるという感覚が自分にとっては大事です。

中山:
信頼できるという感覚なんですね。すべてが完全に見えているわけではないけれど、「これだ」と感じた自分の感覚を信頼して乗っかるわけですね。

山本:
そうですね。全シーンで完全に見えているなんてことはないし、スルーパスのような選択は基本的に難しい選択なので、その中で自分が見えたものに対して持っている技術をちゃんと出せるかどうか。そこで信頼して出せるかが自分の中ではとても大きいです。

中山:
なるほど。客観的に見ていて周辺認知や空間把握の高さを感じるのですが、周囲を見る際、意識しているポイントや考えていることがあれば教えてください。

山本:
いっぱいありますね(笑)構造の話もそうですが、まず相手が何を狙っているか、チームとしての意図は何か。次に味方の立ち位置と今どんなプレーを望んでいそうか。あとはどこにスペースがあるか、そこを突かれると相手が嫌がるポイントはどこか、自分へのプレッシャーの強さ。こうした要素を見ています。

中山:
それらを漫然と同時に見ているのか、明確な意図を持って切り分けて見ているのか、どちらに近いのでしょうか?

山本:
構造に関しては明確に意識して見ています。自分が動きを変えた時に相手がどう反応するか、こちらからアクションした際の相手の変化などは意図して観察します。一方で、例えばプレッシャーの強さや味方の位置関係といった要素は、観察しているというより自然に入ってくる感じです。

中山:
なるほど。構造理解が前提にあるからこそ、無理に見なくても見えている状態を作れているのですね。その構造理解はどのように培われたのでしょうか?

山本:
やはり体が小さかったことがきっかけですね。ボールを奪われることにすごくアレルギーがあったんですよ。でかい選手に当たられないように、寄せられる前にパスで終わらせる選択をしていました。高校、大学、プロと上がるにつれて、どうしてもコンタクトが必要になっていく中で、相手の構造と自分たちの構造の噛み合わせを理解しないと勝てないと気づいたんです。

中山:
小さかった頃の体格的なハンデがむしろ構造的にサッカーを捉える感覚を育てたわけですね。

山本:
あと、大学時代はチームの分析係をやっていました。ビデオを見て全体に説明して、「ここはこうだから、こうした方がいい」と言語化して伝える。見て、理解して、言葉にして、人に伝えるという積み重ねが構造理解を身体に染み込ませてくれたと思います。

中山:
観察→分析→言語化→再構築というプロセスを繰り返す中で、理論と感覚が結びついたのですね。

山本:
そうですね。しかも人に説明するってめちゃくちゃ難しいじゃないですか。自分が理解しているだけでは足りなくて、相手に伝わる言葉にしなければいけない。丸1〜2年は続けていたので、自然とその見方が身につきました。試合中も無意識にサイクルを回して、良かった悪かったをすぐ整理して次に活かす。昔からそういうのが好きだったんだと思います。

中山:
そうしたプロセスの積み重ねが現在の構造を読む力につながっているわけですね。山本さんのプレーを拝見していると、前を向いてからの判断が非常に速く独創的に感じます。どのようなプロセスで起きているのでしょうか?

山本:
前を向けると思って向いている時点で、ある程度はもう分かっているんですよね。構造と局面の優位性が頭の中で整理されていて、そこで優位に立ったからこそ前を向くことができると思っています。ターンしてからしか味方や敵がどう動くかはわからないので、「状況が変わるぞ」と無意識下で思いながら状況がパッと変わった瞬間に見る準備をしています。それが次の選択肢を見つけて実行する速さに繋がっていると思っています。

中山:
前を向く前からある程度の仮説があり、ターンした後に現実と照らし合わせて即座に判断しているのですね。

山本:
そうですね。何も起きなければ、自分からアクションして相手を動かすこともあります。高校か大学の頃に、「悠樹は一番危険な手を選べる」と言われたことがあって、いくつか選択肢がある中で最善と思えるものを選ぶ能力が高いと評価していただいたことを今思い出しました。

中山:
先ほど影響を受けた言葉を伺った際に「一番危険な手を選べる」が出てきて欲しかったなと思いました(笑)

山本:
ほんとそうですね(笑)話しながら「そういえば言われたな」みたいになりました。

中山:
対話を重ねると掘り起こされることもありますよね。

山本:
そうですね。あと、僕はアシストがしたいわけではなく、もちろんもっと点を取りたいとも思っています。ただ、僕は最善だと思える選択を躊躇なく選べるので、相手にとって一番嫌なことを選びたいとずっと思っています。

5. タイトルへの執念──“勝たせられる選手”に

中山:
ここまで伺っていると、ご自身との対話や思考する時間をとても大切にされていると感じます。山本さんにとって、自分と対話することや言葉にすることの価値は、どのようなものだと考えていますか?

山本:
うーん…僕はそれでここまで来たという感覚があります。能力だけで勝負したら、自分より大きい選手、速い選手、上手い選手はいくらでもいる。その中で生き残るには、自分の足りない部分を自分で噛み砕いて理解するしかなかったんですよ。課題を曖昧にすると、次に何をすべきかも曖昧になりますよね。なので課題を明確にして、言葉にして噛み締める。それが次に具体的に動ける理由になると思っています。

中山:
課題を明確に言葉にすることが、次の行動の精度を高めてくれるわけですね。

山本:
そうですね。なんとなくでやってるとなんとなくで終わってしまう。課題を明確にして言語化することでその後の行動が明確になって、より細部まで突き詰められるし、突き詰めようとも思えます。そういう意味で言語化の価値はとても大きいと感じています。

中山:
山本さんだからこそ、その重要性にいち早く気づき、そして磨いてこられたのだと感じました。

では、山本さんなりのサッカーの美学は、どこに置いていますか?

山本:
ゴールを奪うことです。僕は常にゴールから逆算して考えています。相手をどれだけ支配して自由に動かせても、結局、得点を奪えなければ意味がない。判定勝ちがある競技でもないのでそこはブレないようにしています。だからこそ、より危険なエリアで“最善の選択”を取ることを常に考えています。

中山:
ゴールからの逆算があるからこそ、シュートが最善なら狙うし、パスが最善ならアシストになる。手段は目的に従うということですね。

山本:
その通りです。

中山:
最後に、未来についても伺わせてください。「選手としてこれだけは手にしたい」「これが叶わなければ引退後に悔いが残る」と言えるような、得たいもの、見たい景色は何ですか?

山本:
難しいですね(笑)未来のことを考えることが苦手なんですよね。未来か...。でもやっぱり、より危険なことを選ぶとか最善を選ぶということが結果的にチームの勝利に繋がることが一番で、その積み重ねがタイトルにも繋がってくると思います。課題として感じているのが、僕はまだ結局一つもタイトルを獲れていなくて。いいところまでいくけど結局何も獲れていない。ここは明確な課題でもあり、目標でもあります。「すごい選手だね」ではなくて、「勝たせられる選手だね」と言われるところまでやってこそだと思うので、あと何年サッカーができるかわからないですけど、そこに対しては貪欲にやりたいと思っています。

中山:
月並みな表現ですが、“勝たせる選手”として記憶にも記録にも刻むということですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

山本:
ありがとうございました!


答えは、すぐには見つからないかもしれない。
それでも自分と向き合い、考え続けることが、次の一歩をつくる。
思考を解き明かす対話は続く。
『Dialog Code』——次は、誰の思考に触れようか。


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https://athdemy.com/method

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