Dialog Code
『毎試合前に設定する“生き様”──ルーキーの心が導く飽くなき挑戦』森下龍矢 # Dialog Code
2025/08/27

「対話が変われば、スポーツはもっと変わるのか?」強くなるために必要なのは、トレーニングや技術だけではない。自分自身と向き合い、考え、気づくこと——それが次のステージへ進む鍵になる。『Dialog Code』—— アスリートたちの言葉から、その可能性を探るシリーズ。
今回登場するのは、森下龍矢(プロサッカー選手・ブラックバーン・ローヴァーズFC所属)。
※インタビュー実施日:2025年7月20日。当時はレギア・ワルシャワ所属。
さあ、彼の思考を紐解いていこう。

1. 弱虫だった自分と、正反対だったライバルがいた意味
中山:
サッカーとの最初の出会いで、景色として覚えているシーンは何ですか?
森下:
実は最初は水泳から始めたんです。幼稚園の頃に水泳を始めて、初めてプールに入った時にすごく楽しいと感じて、それで続けることになりました。それから2〜3ヶ月くらいして、幼稚園の園庭でみんながサッカーをしているのをずっと見ていたんです。僕は人見知りだったので、最初は見ているだけ。それがサッカーとの最初の出会いでした。当時の僕は、積み木を友達とやっていても、やんちゃな子に取られたら泣いてしまうようなタイプで、本当に何も言えない人見知りで弱虫でしたね。
中山:
見ているだけだったところから「やってみよう」と思うまでには、どんな流れがありましたか?
森下:
友達に誘われたのがきっかけです。「楽しいから一緒にやろう」と言われて始めて、そこから少しずつ人見知りが治っていきました。細かい記憶は鮮明ではないけど、景色として残っています。
中山:
勝手ながら共感する部分があって、今は社交的で人見知りしない私ですが、幼少期小は全く逆だったので似ていると思いました。
サッカーで一番嬉しかった若い頃の記憶は何ですか?
森下:
突発的に「めちゃくちゃ嬉しい!」という瞬間よりも、ライバルができて時間があっという間に過ぎていった感覚の方が印象に残ってます。疾走感とかスピード感とか、そういうのがサッカーの良さだと思っていました。だから「この瞬間が嬉しかった!」というより、じわっと心の底から満たされる感覚が当時からあったんです。
中山:
サッカーを始めて、水泳はどうされましたか?
森下:
実はやめられなかったんです。母と小6までは絶対にやるという約束で水泳を始めていたので。幼稚園の時はサッカーも水泳もやりたいと言ったんですけど、習い事は1個だけと言われていて。本格的にサッカーを始めたのは小1からですね。当時は北島康介さんになるのが夢でした。
中山:
では、水泳に対しても想いがあったのですね。
森下:
そうなんです。水泳もそれなりに楽しかったんですよ。
中山:
水泳とサッカー、それぞれの楽しさの違いはどんなところにありましたか?
森下:
水泳は非日常の楽しさがありました。水に入って泳ぐという行為そのものが特別で、突発的に楽しい感じ。ただ、小学校高学年になるにつれて、サッカーの方が心が満たされる感覚や周りと繋がる感覚が強くなっていったんです。水泳は自分との記録の戦いで、それはそれで楽しい。でも僕には、みんなで切磋琢磨する方が肌に合っていました。
中山:
なるほど。当時から「ライバルがいる」という感覚を持っていたのは意外と珍しいと思ったのですが、ライバルは特定の誰かがいたのですか?
森下:
特定の人がいました。彼は自信を持っていて、お前には絶対負けたくないって口に出すタイプ。ふざけているわけではないけど距離感が近くて、自分の中でも絶対負けたくないという気持ちが自然と芽生えました。
中山:
積み木を取られて泣いていた一方で、負けたくないという強い想いもあったのですね。
森下:
そうですね、そこに至るまでの間にきっかけもあって。サッカーを始めてすぐ、自分は意外と足が速くて体も強いと気づいたんです。小1の段階で「俺、いけるかもしれない」と感じて、あの瞬間が人生で最初に自信をくれた気がします。
中山:
子供ながらに、いけるんじゃないかと感じていたんですね。
森下:
他の子は幼稚園から習っていたらしいけど、習ってなかった俺の方がうまくない?と(笑)
中山:
そうなんですね。それは面白いですね。
2. 絶望の中で見たもの──努力で戦うと決めた日

中山:
若い時の体験で、一番悔しかった出来事は何ですか?
森下:
やっぱり県選抜に入れなかったことですね。小5の時に県トレセンの最終選考で落ちたんです。それまで行けるだろうと思っていたのに落ちてしまって、圧倒的な差に絶望した記憶があります。
中山:
森下さんが、圧倒的な差に絶望したんですね。
森下:
絶望しましたね。小学生の頃は成長が早い子ほど上に行って、中高で追いついていくという構図になっていると思うんですけど、当時の県トレは「もうお前大人やん」というような子ばかりで、自分がタッチできる場所にいなかったんです。でも、その時になぜ落ちたのかを冷静に分析できました。技術が足らないのではなく、シンプルに身体が違うよね、と。当時はサッカーノートをめちゃくちゃ書いていましたね。
中山:
その時はどんな気持ちでしたか?
森下:
絶望したんですけど、同時に恵まれたもので戦いたくないなと思ったんですよ。当時は背番号10番で技術タイプのトップ下の選手だったんですけど、足の速さを使いたくなかったんです。スピードは親から与えてもらったものでもあると思っていたので、自分で努力した上手さで戦うんだと決意してサッカーをしようと考えていました。
中山:
与えてもらったものではなく、自分の努力で得た上手さで戦いたいと考えたんですね。小学校高学年で俯瞰して考え、与えてもらったものと努力で得たものという区別の意識がある。この思考を説明すると何でしょうか?
森下:
僕、ハングリーなんですよ。子供ながらに分かるくらい裕福じゃなかったんです。それでも親が稼いだお金で水泳やサッカーに通わせてもらっていて「俺はお前らとは違う」という想いがありました。それもあって、当時はみんなでワイワイやるようなミニゲームが嫌いで、それよりはもっと本気でサッカーをやりたいと思っていました。そういう部分からハングリーさがきているんだと思います。
中山:
なるほど。当時から達観して周りを見ている感じや、自他との違い、社会を構造的に見るような特徴があったように聞こえますね。
森下:
大人になりたい、独り立ちを早くしたいという想いで家を早く出たかったんです。なのでいろいろ考えていたんだと思います。
中山:
小5で県トレに落ちても下を向かなかったのは、客観的に分析して答えを見つけたからだったんですね。
3. 波のあった自分に装填された「コンスタント」という考え方
中山:
プロになることを明確に意識し始めた時期は、いつ頃でしたか?
森下:
高校1・2年ぐらいまでは、正直プロというものを考えてはいましたが、明確に解像度が高かったわけではなかったです。サッカー選手にはなりたいと思っていたんですが、現実にはお金も必要で、親に金銭的な負担をかけることも心配でした。どうしようかと中学生の頃からずっと考えていて、高校も公立の方がいいと当時は思っていました。そうした現実的な選択も含めて考えていたんです。
中山:
なるほど、プロへの意識はあれど、家庭環境のことも踏まえて考えることは多かったのですね。質問が変わりますが、学生時代の指導者の言葉で今でも残っているものはありますか?
森下:
高校2年生の時の監督、大木武さんの「コンスタントにやる」という言葉です。僕の中で一番残っていて、人生を変えた言葉だと思っています。日によって40点、80点、120点の日と波があるよりも、80点でもいいから一定のパフォーマンスを出すことが大事だと。コンスタントというのは「一定」という意味で、その重要さを学びました。
中山:
当時、その言葉をどう解釈していましたか?
森下:
僕なりの解釈では、「毎日やれることを自分で設定する」ことだと思いました。例えば筋トレを始める時に、6種目3セットを週3でやろうと思っても、続かない人には高いハードルになる。それなら3種目2セットでいいから毎日やろうとか、週3でやろうとか、自分が必ず達成できる範囲を決める。必ず決めた数をしっかりやる、その重要さを大木さんから学びました。
中山:
なるほど。そのように解釈して血肉にしていったのですね。

森下:
僕は中学の頃から波があるタイプで、気分によってプレーに差が出ることが多かったんです。それが大木さんによって是正された感覚があります。
中山:
波のあった森下さんが「コンスタントにやる」と言われると、いい意味でアンマッチですよね。そこはどうされたのでしょうか?
森下:
ただ、変わるには時間がかかって、実際に身につくまでに2〜3ヶ月は必要でした。
中山:
“毎日やれることを設定する”というのを「コンスタント」の定義として捉えたのは面白いと感じました。自分次第でやれることなので、それ自体はコンスタントに継続できますよね。その上で、サッカーは外的要因が多い競技なので、その中でリンクしていくことが興味深いと思いました。
4. 方程式を探る日々と、毎試合掲げる“在り方”というスローガン
中山:
日々の練習で、事前に意識的に取り組んでいることや準備していることは何ですか?
森下:
一番意識しているのは「同じことをする」ことです。朝8時に起きてコーヒーを入れ、車の中で飲みながら練習に向かいます。道中では必ず経済ニュースを聞いて、クラブハウスで朝食をとります。練習前には自分で決めたウォーミングアップを行い、その流れに沿って練習に入るという感じですね。
中山:
基本的には自分の流れに沿うようにされているのですね。
森下:
そうです。ただ、監督が代わったりすると流れが変わることもあるので、その調整は難しいと感じることもあります。僕は新しいことに順応するのに2〜3ヶ月かかるタイプなので。それでも決めたことを基本に継続するのが自分のスタンスです。
中山:
新しい課題やチームの変化に直面した時、準備や整理はどのようにされていますか?
森下:
まず理解するために、とにかく聞きに行きます。同じことを何度も聞くことになっても恥ずかしがらずに。僕にとって一番恥ずかしいのは、ピッチ上で分からないことなんです。レギアに来て最初の半年はそこで悩みました。英語もわからなかったですし、幼い頃から日本では「同じことは何回も聞くな」と教えられてきたので、分からなくても「Yes」と答えてしまっていたんです。でもそれではダメだと気づいて、分かるまで何度でも聞くように意識するようになりました。
中山:
その姿勢は海外に出てから大きく変わったのですか?
森下:
かなり変わりました。日本では分からないことを覚えておいて自分で調べることが多かったけど、海外では英語での情報収集が難しいので直接聞く方が早い。作戦ボードを使って説明を受けることもあります。
中山:
例えば、まだ英語が拙い時に「これを聞きたい」と思ったら、事前に調べてから行くことなどもありますか?
森下:
それはめちゃくちゃやってます。最近はChatGPTに毎日課題を英語で書いてみたりして、それを続けていたら覚えてきました。今はもうだいぶよくなったんですけど、最初は本当にキツかったですね。
中山:
文化の違い、言語の壁を乗り越えるための準備や行動を重ねていたんですね。
試合前日や前夜はどのように過ごされていますか?
森下:
過ごし方は全く同じですね。夕飯を19時くらいに食べて、ハーブティーを飲みます。食後にティータイムをしたいタイプで、夜にコーヒーを飲むと寝られなくなるので仕方なくハーブティーにしています(笑)それで23時くらいには寝るという感じです。
中山:
では、前日はあまりサッカーのことは考えませんか?
森下:
調子がいい時は全く考えないですけど、悪い時は考えてしまうこともあります。

中山:
調子が悪い時はどんなことを考えますか?
森下:
例えば点を取れていない時に「やばい」という危機感で、自分なりの理論を見つけたくなるんです。感覚で終わらせたくなくて。だから得点している選手がどこで最初にコンタクトしているのか、どこからシュートを打っているのかを全ハイライトから観たりします。
中山:
自分なりの理論、方程式を模索していくのは良いスタンスですね。サッカーは変数が多いスポーツですが、構造は似ている部分もある。感覚に捉われずに理論として捉えつつ、ピッチ上では感覚で発揮する。そのバランスが大事ですよね。こういうことは今でもノートに記録されるのですか?
森下:
今は思った時に忘れないようにメモしています。1冊のノートとペン1本は必ず持ち歩くようにしています。さすがに妻とレストランに行く時は持ち歩きませんけど(笑)
中山:
面白いですね(笑)試合当日はどんなことを考えていますか?
森下:
僕は「どういうプレーをするか」ではなく、「どういう想いでサッカーをするか」を考えるタイプなんです。ピッチでどういう姿を見せたいかという“生き様”ですね。
中山:
なるほど。どう在りたいかという部分ですね。
森下:
そうです。「今日は1対1で仕掛ける」というより「何をやるべきか」を引き出すために自分の“スローガン”を設定するようにしています。
中山:
なぜスローガンを設定するようになったのですか?
森下:
なんででしょうね(笑)でも考えてみると、幼い頃からのハングリー精神が原点だと思います。ボールを持てばゴールに向かって仕掛けるし、小さい頃だったら「俺が練習してきたこのパス、このシュートで勝負する」という感じで、“気持ちからプレーが出てくる”。小さい頃からずっと積み重ねてきたものです。
中山:
どう在りたいかという生き様が、森下さんという選手の大枠の個人戦術を決めていて、実際のプレーはそこから逆算されて発揮されている感覚ですか?
森下:
そうですね。正しい心構えでいられれば、自然とプレーが出てくる感覚です。
中山:
面白いですね。 大事な試合や局面でのプレッシャーや緊張はどうですか?
森下:
緊張はしますね、特に前日の夜は。最近わかってきたのですが、僕は「分からないこと」を想像した時に緊張や怖さを感じるんです。ただ、サッカーを20年くらいやってきた中で、そこに深追いする必要はないと思うようになりました。緊張したならさせておけばいい。ピッチで何をすべきかは分かっているので、選手入場の瞬間、芝生の感触や視界が開けた時に一気に緊張が解けます。
中山:
つまり、前日夜や移動中は「どうなるか分からない」ことが緊張につながるけれど、ピッチに立った瞬間に「これをやる」と分かるから一気に解れるのですね。
森下:
まさにそうです。そういう瞬間はたくさんあります。
中山:
クラブと代表では、この“どう在りたいか”というスローガンに違いはありますか?
森下:
どちらかといえば試合ごとに変わりますね。僕の中ではスローガンには賞味期限があって、すごくハマっても2試合くらいで効果が薄れることもあるんです。なのでその時はまた考え直します。代表戦とクラブ戦でも違いますし、スタメンかどうかでも違います。
中山:
キャプテンが試合前に何を言うか考えるような感覚に近いかもしれませんね。
森下:
そうですね。毎試合、自分のスローガンを振り返ることもします。
中山:
森下さんは理想を追うタイプか、積み重ねるタイプか、どちらでしょうか?
森下:
確実に理想タイプです。常に「こうなりたい」というビジョンがあるんです。それが達成された後が課題で、今がまさにそうなんですよね。レギアで自己最高の結果を残し、近年でも顕著な成績を出せたと思います。でも、夢はここに残ることではなく、描いた道を進むことです。「試合に出られることが一番幸せ」とよく言いますけど、僕にとっては少し違います。自分が描いた道に乗って成長していきたいんです。
中山:
常に理想が達成されたら次の理想を描きながら、そのレールに自分が乗れているのかを確認する。乗れていない時には苦悩が出てくるのですね。
森下:
そうなんです。これまでも活躍してから移籍してきました。逆に活躍できていない時に移籍したいと思ったことはなくて。負けて逃げるような移籍は絶対にしたくない。活躍した後に次のゴールをどう設定するかが、僕の課題だと思っています。
5. 現役だからこそ伝えられる、“本物”の解像度

中山:
森下さんは「本気塾」などもされていますよね。客観的に拝見していて、その活動には「プロを知る」や「本物を知る」といった価値を伝えようという意図があるのではと感じました。森下さんにとって、プロや本物を知ることの価値とは何でしょうか?
森下:
その価値は、ゴール(=目標)に対する解像度を上げることだと思うんです。解像度が上がれば、本気で行ける、または行きたいと思える。僕は分からないことが怖いタイプなんですけど、逆にゴールが鮮明に見えれば怖くないんですよ。だから子どもたちの中にもそういう子はいるんじゃないかと。もちろん全員ではないですが、夢を持てない子が増えているという相談を聞くと気持ちは分かります。
僕も小学生の頃「なれる」とは思わずに「プロになりたい」と言っていたタイプなので。ゴールの解像度が上がりさえすれば「俺の夢はこれだ」と言える子が増えるんじゃないかと思っています。
例えばクリスティアーノ・ロナウドのサッカースクールがあったとしても、実際に本人が来ないと意味がないじゃないですか。「森下龍矢の本気塾」には森下龍矢本人が来る。そんな場を作りたかったんです。
中山:
なるほど。自分が理想としている「プロ」を実際に見ることでリアルに感じられて、解像度が上がる。その結果、怖さがなくなったり、一歩を踏み出すきっかけになったりすると考えているのですね。
森下:
そうですね。
中山:
「本物に触れる」というのは、ビジネスでも大事にされている要素だと思います。森下さんの活動を拝見して、やはり意図があるのだろうと感じました。実際に見て触れて感じることで基準が分かる、感覚的にも理解できる。自分が接しないと全く分からないですからね。
森下:
そうなんです。僕は教えるというより、一緒にやりたいんですよね。例えば僕は昨年「どこで点を取るか」を分析して、実際に14ゴール取りました。YouTubeなどには「これ本当か?」みたいな情報が多い。でもこれが正解とは言わないけれど、これでなんとか飯を食っているサッカー選手なんだよということを子どもたちに伝えたい。それが本物であることの価値だと思います。
なので引退してからじゃなくて「今」であることが大事なんです。引退すると忘れてしまうことも多いですからね。
中山:
今の森下さんだからこそ伝えられることもありますね。ご自身で考えて、解決しようとして、理論や方程式を見つけようと取り組んでいる。その姿に触れることで、同じようなスタンスを持つ人が増える。そういう期待もあるのだと思いました。面白いですね。
では、森下さんにとって「本物」とはどんな人でしょうか?
森下:
僕にとっての本物か…難しいですね。やっぱり大木武さんなんですよ。本当に。言葉にしてこなかったけど、本物を見たり感じたりすることって、言葉にするよりも理解が早いんです。「この人みたいになりたい」という感覚は意外とブレない。
言葉は好きなんですけど、その時々で解釈が変わります。僕のスローガンも、この日にはハマるけど別の日にはハマらない、みたいなことがある。言葉の曖昧さだと思います。だけど「この人みたいな生き様をしたい」という想いはブレない。だから「本物って何?」と聞かれたら、今の時点では「大木武さん」と答えると思います。
中山:
なるほど。生き様を示して、感じさせてくれる人。
森下:
そうです。伝えようとしたわけじゃなく、彼がそのまま生きていたことに僕が影響を受けたんです。当時、僕のように感じた人はたくさんいました。
中山:
生き様によって人に影響を与える。それが本物、ということなのかもしれませんね。
森下:
そうかもしれないですね。

6. 「まだまだ発展途上」──“点を取り続ける方程式”を解くために
中山:
森下さんはこれまでいろいろなことにトライしてきていますよね。今もスローガンを毎回変えたり、一方で同じことを継続して取り組んでいる部分もあると思います。
在り方を考える森下さんが思う、「プロとして変わってはいけないもの」と言われたら、何でしょうか?
森下:
難しいですね。人によって違うかもしれないですけど、僕がプロサッカー選手として大事にしているのは「いつまでもルーキーの気持ちでいる」ことです。僕は28歳ですが、海外に来てから28歳には見えないとよく言われます。どうやらエネルギッシュらしいんです。代表やクラブで見ても、ベテランの風格というより「まだやってくれそう」という雰囲気があるんじゃないかと。
僕自身、まだ何も成し遂げていない発展途上の選手ですし、性格的にも気高く構えるタイプじゃない。人に何かを押し付ける人間でもないと思っています。そういうエネルギーや気持ちが自分をそうさせているんだと思います。シンプルに言えば「もっと上手くなりたい」という気持ち。それを言葉にするなら、ずっとルーキーのままでいたいということですね。
中山:
それはなぜ大事だと思いますか?
森下:
サガン鳥栖の時にベテラン選手がいて、当時は大卒や高卒の若手ばかりで中堅がほぼいない体制でした。そんな中で金崎夢生くんがすごく好きだったんです。なぜかというと、彼は常に「俺がここでやるんだ」という気持ちを持っていて、ルーキーのような心を持っている選手だったからです。
一方で、別のベテラン選手を見たときに「俺はもう輝かしい時期は過ぎて、後は後輩に何かを教える立場」という感じでプレーしていると感じる人もいました。それを23歳の僕が見た時に、「後輩に教えるスタンスってサッカー選手としてはどうなんだろう」と思ったんです。それなら引退してコーチになればいいじゃんと。そういうスタンスでピッチに立っても何かを勝ち取れるとは思えなかった。僕はそういう気持ちでサッカーしたくないなと思いました。
中山:
なるほど。代表活動を見ても、森下さんはまだ23歳くらい?と思わせるようなエネルギッシュさが確かにあって、何かやってくれそうという雰囲気がありますね。
森下:
ありがとうございます(笑)サッカー選手でなくビジネスパーソンになったとしても、そういう気持ちでいつまでもいたいですね。変に置きにいくんじゃなくて、自分が成し遂げたいことを思いっきりやりたいと思っています。

中山:
では、未来についても伺いたいです。先ほど「自分なりの理論や方程式」という話もありましたが、これからはどんな方程式を見つけていきたいですか?
森下:
点を取る方程式はいい形まで持っていけてると思うんですけど、ガリレオに見せて丸がつくレベルかというと、まだまだです(笑)強いて言うなら、点を取れる方程式じゃなくて「点を取り続けられる方程式」を見つけたいと思ってます。
僕の夢の1つはプレミアリーグでプレーすることです。プレミアに行く選手は、たった1年だけ15点や20点取ったから行けるわけじゃない。毎年15点、20点取り続けている。クリスティアーノ・ロナウドやメッシのように。それは絶対に運じゃないと思うんです。もし運だとしたら、彼らが毎年40点取ってるのって宝くじよりすごい確率ですよね。
だから必ず理由があるはずなんです。共通しているのか、僕に合うものなのかは分からないけど、何かあるはず。それを考え続けていて、今実行しているのが「毎日同じことをする」ことなんです。試合で点を取れる場所にいつもいる、どんな状況でも「俺はここにいる」と。彼らにはそういうものがあるんじゃないか、という仮説を立てています。
中山:
面白いですね。同じことを継続する中で、新しいものを取り入れる時はどうされますか?やめて入れ替えるのか、そのまま加えるのか。
森下:
どっちもありますね。ただ僕は白黒はっきりさせたいタイプなので、今のやり方を3〜4ヶ月続けてダメなら損切りして新しいことに取り組みます。
中山:
スパッと切るんですね。そしてまたコンスタントに試して、どうなのかを見ていく。
森下:
そうです。時間がかかるので、誰かの言葉に従って3〜4ヶ月費やすのは好きじゃない。自分で考えた仮説を自分の責任で試したいんです。
中山:
なるほど。同じことを続けつつも、試す期間は一定あるわけですね。
森下:
そうですね。3ヶ月くらいですかね。それで結果が出てなかったらクビになるくらい厳しい世界だと思ってます。
中山:
だからこそスパッと辞めて新しくトライできるのですね。もし、過去の自分に憧れられるような未来があるとしたら、それはどんな未来ですか?
森下:
最近思うんですけど、今の自分って十分かっこいいと思ってるんですよ(笑)自惚れてるわけじゃないですけど。もちろんあの時こうすればよかったということはあります。でもそれは自分でコントロールできることじゃなかったと思うんです。
コントロールできることはしっかりやってきたし、人から何か言われても「俺、かっこいい男なんじゃないか?」と思えるくらいにはやってこれたかなと。だから素敵な奥さんがいるんじゃないかと勝手に思ってます(笑)苦労はしてきたけど、自分なりの強さを見つけて、いい生き方をしてるんじゃないかと思ってます。
中山:
森下さんの生き様に納得感があるからこそ、今も憧れられる存在でいられるのだと思います。これからもそのスタンスは変わらずに進んでいかれるのでしょうね。
今後のキャリアで、競技の枠を超えて目指したいことはありますか?
森下:
抹茶やサウナが好きなんですけど、自分で何かを始めて、ゼロから知り合いの力も借りながら作り上げていくのが好きなんです。なので自分の足で切り拓いていく挑戦がしたい。そういう意味では、世界を股にかけるビジネスをしたいと思っています。
中山:
最後に伺いたいのですが、ここから先はサッカーを続ける理由と、終える覚悟。そのどちらを持っていたいですか?
森下:
続ける理由ですね。キャリアをジェットコースターで例えるなら、まだ上がりきっていない感覚です。32〜33歳くらいまではトップでやりたい。大卒でプロになってまだ5〜6年目ですから、終わることは考えていないですね。
中山:
今後も非常に楽しみですね。まだまだこれから先に見える景色があると思いますし、今日のお話からもそのエネルギーを強く感じました。森下さんが描いていくこれからの物語を、私自身も楽しみにしています。

答えは、すぐには見つからないかもしれない。
それでも自分と向き合い、考え続けることが、次の一歩をつくる。
思考を解き明かす対話は続く。
『Dialog Code』——次は、誰の思考に触れようか。
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