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Dialog Code

『感性を武器に、“らしさ”で未来を動かす』馬瓜 エブリン # Dialog Code

2025/07/23

「対話が変われば、スポーツはもっと変わるのか?」強くなるために必要なのは、トレーニングや技術だけではない。自分自身と向き合い、考え、気づくこと——それが次のステージへ進む鍵になる。『Dialog Code』—— アスリートたちの言葉から、その可能性を探るシリーズ。

今回登場するのは、馬瓜 エブリン(プロバスケットボール選手)。
さあ、彼女の思考を紐解いていこう。


1. 楽しさに導かれたバスケの入口

中山(Dialog Partner):
では早速始めていきたいのですが、まずはエブリンさんの過去について聞かせてください。バスケとの最初の出会いで、一番記憶に残っている若い頃の景色はどんなものですか?

エブリン:
んー、何ですかね。楽しくバスケをしつつ、礼儀などはきちんと大切にするようなチームだったので、「バスケをちゃんとやってきた人から教えてもらう」っていう機会は、実はあまり多くなかったんですよね。割と楽しくやる感じの方が多かったです。

中山:
そうなんですね。どこで誰とやったものか覚えてますか?

エブリン:
小学校の体育館とか、運動場とかですかね。

中山:
その時は学校のバスケ部に入ってたんですか?クラブチームですか?

エブリン:
学校の部活にも入ってましたし、ミニバスにも入ってました。いろいろやってましたね。

中山:
バスケ以外もやってたんですね。

エブリン:
水泳とピアノをやってました。

中山:
そうなんですね。それはエブリンさん発信でやりたいってなったんですか?自然と始めた感じですか?

エブリン:
なんか自然と始めてましたね。たしか水泳は自分でやりたいって言った気がします。

中山:
そうなんですね。そもそもバスケのきっかけは何だったんですか?

エブリン:
水泳とピアノが厳しいコースだったんで、嫌になっちゃって。身長も大きかったこともあって、バスケ部の先生にめちゃめちゃ勧誘されてたんです。それで、そっちの方が楽しそうだと思って始めたという感じです。

中山:
なるほど。最初は勧誘されて入って、やってみたら楽しいってなったんですね。もともと見てて好きだったというのもあったんですか?

エブリン:
昔からバスケは好きでした。親が家でアメリカのNBAを観ているのを一緒に観ていて「バスケ選手になりたい」って思ってたんですけど、チームには小学校4年生からしか入れなかったので、それまでの間は水泳とかピアノをやってました。でも厳しくて嫌で(笑)それでバスケを始めたっていう感じです。

中山:
もともと観るのが好きだったというのはあったんですね。では、小学4年生からバスケを始めて、一番嬉しかった出来事で古い記憶はどんなものですか?

エブリン:
当時はそんなに強いクラブではなかったので、普段は地区予選の1回戦とか2回戦で終わってしまうことが多かったんですけど、そこを勝ち進めた時は嬉しかったですね。部活の方は結構強かったんですけどね。

中山:
当時、バスケをしていて「楽しい」とか「嬉しい」って感じていたのは、どんな気持ちからだったと思いますか?

エブリン:
当時から、勝ち負けにはこだわるところもあったので、もちろん勝てて嬉しいっていう気持ちはありました。でも、それ以上に「楽しい」っていう感覚が大きかったと思います。楽しくないと、多分自分はやらないので(笑)

中山:
人によっては、「友達と一緒にやるのが楽しい」とか、「自分が活躍できるから楽しい」って感じる人もいると思うんですけど、エブリンさんがこの頃に感じていた“楽しさ”って、どこにあったんですか?

エブリン:
友達とやれてたからだと思います、そこが大きいですね。

中山:
確かにそうなると、厳しい上にひとりでやる水泳やピアノは続かなさそうですね(笑)

エブリン:
無理ですね(笑)

2. 競争や評価が嫌いでも、目指していた場所があった

中山:
では一方で、バスケの中で比較的若い頃の記憶で、一番悔しかった場面や出来事は何ですか?

エブリン:
そうですね、あまり強くないクラブなりに少しずつ記録を更新していって、東海大会に行けるかどうか、っていう大事なところで、最後に1点差で負けてしまったんですよね。あのときは、本当に悔しくて泣いたのを覚えています。

中山:
1点差... それは何歳の時ですか?

エブリン:
あれは…小6か、小5ぐらいですね。

中山:
このとき感じた悔しさで、何が一番悔しかったかと聞かれたら、どこが大きかったと思いますか?

エブリン:
「勝ちたかった。勝てたのに...」みたいなところですね。

中山:
強くないクラブではあったけど「勝てたかもしれない」という気持ちが残ったんですね。

エブリン:
そうですね。

中山:
先ほど、勝ち負けへのこだわりっていうお話もありましたが、昔から勝負へのこだわりはあったのですか?

エブリン:
もちろん負けず嫌いのベースはあると思うんですけど、私は他のアスリートと比べたらそこまでだと思います。

中山:
勝手ながら少し共感しました。僕も周りからは負けず嫌いだと思われがちですが、意外とそうでもない一面もあり。

エブリン:
そうそう。そこまでじゃないんですよね。

中山:
アスリートだと、昔から負けず嫌いでしたみたいな話はよく聞きますが、意外とそうではない人もいますよね。

エブリン:
そうですね。今でも、そこまで「負けず嫌い」っていうわけではないんです。もちろん、試合にロックインしたら「絶対に負けたくない」という気持ちはありますけど、できることならあまり競いたくないって思う場面もたくさんあります。

中山:
あまり競いたくない。それは、たとえば選抜や県代表のような、競争や評価される機会が嫌だったということもありますか?

エブリン:
そうですね、代表の選考とかも嫌だったし、やんなきゃいけないのは分かってるからやるし、選ばれるためにどうすればいいかも考えるけど、あんまりやりたくないですね。

中山:
この気持ちは、小学生から中学生へと上がっていく中でも、根っこはあまり変わらなかった感じですか?

エブリン:
そうだと思います。評価されるっていうのがあんまり好きじゃないのかもしれないですね。

中山:
その感覚がありながら、エブリンさんは今も競技を続けていますよね。続けられている理由と、そことどのように向き合ってきたのかも気になります。

エブリン:
なんですかね…やっぱり「オリンピックに出たい」「オリンピック選手になりたい」っていう夢は、小さい頃からあったので、そこにコミットする気持ちはずっと変わらずに持ち続けてきたと思います。いろんな場面で、ギリギリのところで気持ちを保ちながらやってきた感じですね。競うことも、優勝の価値もしっかりわかるけど、一方で「楽しいバスケもいいよね」っていう気持ちもあります。多分その両方のバランスを取りながらここまでやってこれたんだと思います。

中山:
「競うバスケ」と「楽しいバスケ」、その両方の想いがあって、上がったり下がったりしながら、今も続けてるんですね。ここを保ちながら今もやれているのはすごいなと感じました。

エブリン:
そうですね、すごいですよね(笑)

中山:
すごいです。僕も評価や選抜などに対する望ましくない気持ちもあったので、客観的に聞いていてそう思います。こういう気持ちを持っている自分は、アスリートに向いていないのかなと思いながらやったりもしてましたから。

3. 「試合は戦争だ」真逆の価値観で育った勝負の感覚

中山:
質問のテイストが少し変わりますが、学生時代を通して指導者や周りの大人の言葉で、今でも心に残っている言葉やフレーズはありますか?

エブリン:
小中はそんな強くないところでやっていて、高校に進んで“常勝軍団”みたいなチームに入ったんです。そこに井上監督っていう方がいて、もう本当に口酸っぱく「試合は戦争だ」「負けたら終わりだ」「死ぬのと一緒だ」って。今でも強烈に残ってますね。

中山:
その言葉は、エブリンさんの性格や考え方とはギャップがあるように思いましたが、当時はその言葉をどう受け止め、落とし込んでいたんですか?

エブリン:
「すごいこと言うな」「極端なこと言うな〜」って思いながら(笑)でもそのチームには「勝って当たり前」「優勝して当たり前」っていう空気が常にあって、プレッシャーも本当にすごかったんですよね。だから、ああいう言葉も、ある意味では必要だったのかもしれないなって。それぐらいの気持ちがないと“勝ちにこだわれない”。そういう環境だからこそ、こだわれるようになっていったと、これは今でも思ってます。

中山:
この時って、まだ高校生ですよね。結果を出すとかプロを目指すという、上を目指していく気持ちと、普通に楽しくやりたい気持ちの間で、葛藤みたいなものはどうでしたか?

エブリン:
そうですね。この時はもう、必死でした。周りには上手な子がいっぱいいて、嫌でも競わなきゃいけない。戦わなきゃいけない。周りとも、相手とも。そういう状況の中にいましたね。

中山:
この時のモチベーションというか、エネルギーはどこから来ていましたか?当時、いわゆる夢や目標はありましたか?

エブリン:
あるにはありましたけど、なんですかね...バスケ選手になりたいという気持ちももちろんありましたし、あとは一家の大黒柱としてやっていくっていう気持ちも強かったです。その辺りが一番強いんじゃないかと思います。その頃から、「勝ちたい」っていう気持ちもどんどん強くなっていて、負けたら本当に地獄に感じたし、すごく叩かれることもあったので…

中山:
なるほど。それくらいのチームだったということでもありますよね。

エブリン:
そうですね。しんどいけど、勝ったら勝ったでいろいろ良いこともあったなと思います。

中山:
学生時代から、まさに“天国と地獄”を両方経験してきたような感じですね。

4. 専門家に“頼る”ことも、プロの技術

中山:
最近のことも伺いたいのですが、今エブリンさんがバスケの練習に関して、練習前に準備していることは何かありますか?

エブリン:
意外とそんなに大それたことはしてなくて。自分は考えないようにしているので、練習に向かう前も何も考えないですね。車の中で英会話をやって、バスケ以外のことを考えている時間の方が長いです。体育館にはそこまで早く行くわけでもなくて、やることもだいたい決まっているので、それをやって練習に行くという感じです。

中山:
事前にあれこれ考えるというより、決まったリズムの中でやるべきことをやっているイメージですか?

エブリン:
そうですね。着いて、着替えて、ちょっとストレッチして、シュート打ってっていう感じで。よくそれで動けますねって言われたりしますけど(笑)

中山:
練習へのスイッチはどの辺から入ってきますか?

エブリン:
アップが終わる頃ですかね。アップの途中まではあまり何も考えてなくて、練習が始まったらやる、という感じです。

中山:
例えば、エブリンさんの中で「ここをもっと良くしたいな」と、課題を感じた時はどのようにそこに取り組んでいますか?

エブリン:
自分は基本的に考えるより「聞く」ことが多いですね、その方が早いので。よく分かっているアシスタントコーチの方とかに「今こんな感じなんですけど、どうしたらいいですかね?」って聞くようにしています。

中山:
考えるより聞くのが早いとなったのはなぜですか?

エブリン:
長年バスケをやってきてるので自分でわかることもあるんですけど、外からの意見で自分では気づいてなかったこともあったりするので、聞いた方がよくない?って感じです。コーチたちも、それを専門にされているわけなので、信頼して頼ってます。

中山:
専門に聞く方が良い、というスタンスはいつ頃からですか?

エブリン:
リーグに入って、最初の移籍をした後ぐらいからだと思います。その時にいたチームは、本当にプロフェッショナルな環境で、トレーナー陣もすごく優秀だったんです。ステップアップした時にその環境がすごく新鮮で、いろいろ吸収したくなりました。それで実際にいろんなことを聞いて、「それ知らなかった!」って気づけることが楽しくなって、段々と聞くことが増えていきました。

中山:
聞いていく中で気づきの実感があり、それが定着していったんですね。この“専門家に聞く”ことを、やる人とやらない人がいますよね。

エブリン:
そうですね。もちろん自分で考えて試すこともあるので、トライしてみて違うなって気づくことも多いです。でも、仕事とかと一緒で、答えを持ってる人がいるならその人に聞いた方が失敗の時間や回数を減らせるじゃないですか。あとは客観的な気づきをもらえるので、自分で気づけないこともフィードバックをもらえたり。失敗も大事ですが、時間は有限。人生はまだあるけど、時間は有限なので。「いい人に、いい環境で聞く」それが一番だと思っています。

中山:
失敗も大事だけど、時間は有限。ビジネスもやられているエブリンさんだからこその感覚かもしれませんね。失敗は大事とわかりつつ、不必要な失敗はしなくていいとも聞こえました。

5. セルフトークは危険信号、試合で感性を活かすには

中山:
試合前や試合前夜はどう過ごしていますか?

エブリン:
基本的に、やることはもう決まってるんですよね。SNSはやらないで、夜は寝る前に必ず散歩して、寝て、起きて、ご飯を食べて。そのあたりは、特別なルーティーンというよりは自然とやることが決まってる感じです。例えば、夜は必ずパジャマに着替えるとか、そういうのは徹底してます。

中山:
こういうのはなぜやっているのですか?

エブリン:
信頼できる専門家の方ともう3年ほど一緒にやっているんですけど、オリンピックの前とかは緊張やプレッシャーでなかなか寝られないこともあったんですよね。自分の場合、ストレスが寝れないという形で出るタイプなので、「まずはちゃんと寝ることがすごく大事なんだ」っていうところに辿り着きました。

中山:
いろんなことが頭で反芻(はんすう)して、寝れないことに繋がっていたんですね。

エブリン:
そうですね、自分は寝られないという形ですごく出るので。

中山:
色々試された中でSNSはやらない、寝る前に散歩、パジャマに着替えて切り替える、この辺りを変わらずやっている感じですか?

エブリン:
そうですね、この辺りは変わらずやっています。

中山:
試合前夜の過ごし方に悩むアスリートはいますよね。睡眠の部分なども。

エブリン:
私も以前はそうで、練習着のまま寝るとかもやったことありますね。「(専門家に)やめろそれ」ってめちゃくちゃ怒られましたけど(笑)

中山:
それは怒られそうですね(笑)服や姿勢、身を置く環境なども思考や感情に大きく影響しますからね。試合中の思考についても聞いてみたいのですが、エブリンさんは試合中どのようなことを考えてますか?

エブリン:
試合中は考えないようにしています。考えるとしても、意識のギリギリのところで、「なんか嫌な感じがする」とか「これはいい流れだな」とか、フィーリングや思いつきのような感覚だけですね。

少し言語化が難しいんですけど、できる限りみんなを鼓舞して熱い姿勢を見せつつ、その裏で自分の中では意識を落としている感じです。あえて“考えない”ようにしているというか。よく言われるフローの状態に、できるだけ近づけようとしています。意識せず、そういう状態に持っていくイメージです。

中山:
感覚的なひらめきや、流れを読むとか、エブリンさんはご自身の経験からくる感性を大事にしている感じですか?

エブリン:
そうですね。それを出やすくなるようにすることが、バスケのプレーを考えるよりは自分にとっては大事です。

中山:
「出やすくなるようにする」、ための一つがあまり考えないようにするということですか?

エブリン:
そうですね。あれこれ考えない方が、流れや雰囲気、周りの環境は入ってきやすいし、感じやすいので敏感になっていますね。

中山:
そういう意味でも、右脳優位的な感性がありますよね。感覚を意識的に使おうとしてる感じがします。

エブリン:
そうですね。考えて上手くいく人は他にいっぱいいるのでそこは任せて。自分は感性を生かして自由にやろうって思ってます。ありがたいことに、自由にやらせてもらえる人間なので(笑)

中山:
割り切って、自分の強みに振っている印象を受けました。では、試合でうまくいかない時や調子が悪い時に、頭の中にネガティブなセルフトークは出てきますか?

エブリン:
出てきますね。でも、ネガティブにしろポジティブにしろ、セルフトークが“聞こえている”時って、そもそもあまり良くないんです。「大丈夫」とか言ってる時は、大丈夫じゃないんですよね(笑)

中山:
そもそもセルフトークがある時がよくない時なんですね。いい時にはセルフトークがなく、感性のアンテナが張ってる感じですね。

エブリン:
良い時は勝手に体が動いて、周囲の雰囲気もこんな感じっていうのが感覚でわかっているので、思考が出てきた時はこれはあかんって思いますね。

中山:
なるほど。 出てきた時は、どのように“空っぽ”にしますか?

エブリン:
外に向けて声を出すことで、自分の内側から引っ張り出すんです。思うままに言葉を発したり、指示の声だったり。あとは、フリースローを獲得して、目の前のことに集中できる時間をつくることもあります。または、ハーフタイムやシュートを打つ時間に、一度自分のルーティンをやり直すこともありますね。

中山:
空っぽにするために、行動を決めて実行しているんですね。

エブリン:
そうです。

中山:
こうなった時にこうする、という行動が決まっているのはすごくいいですね。

エブリン:
そうですね、立ち返る場所があるというのはいいと思ってます。

中山:
ありがちなのは、「〇〇しないように」という否定系の約束事ですね。これを頭で思っていても、それだけだとダメで。〇〇しない、代わりに“何をすればいいのか?”がないと、ずっと同じループにハマってしまいます。目標設定や行動設計の際にも「否定形を使わない」というのは重要で、意外とこれはやってしまうんですよね。

エブリン:
あ〜、なるほどなるほど。

中山:
例えば「チームメイトに文句を言わない」と決めても、その“代わりに何をするのか”がないと、「文句を言わない=黙る」になってしまったり。でも、本当は言わなきゃいけない場面もあるわけで、言わないことが他の問題になってしまいますよね。なので、「何をしないか」を“肯定形”で変換し直すと、適切な目標や行動が定まります。そういう意味でも、エブリンさんが「行動するようにしている」と話されていたのは、ポジティブに働いている要素だと感じました。

エブリン:
面白いですね。試合中も、セルフトークが出てきた時に「ここを2回叩く」とか決めてて。そうすることで思考を止めて、反省や分析の方に意識を切り替えていけるんです。まさに今の話ですよね。

中山:
まさに。それで思考を止めて、感覚や感性の方にシフトしていくように自分に仕向けているんですね。

6. リーグも、未来も、自分たちで変えていく

中山:
それこそ、エブリンさんは普段バスケ以外の時間で事業もされていますよね。そういう時は、バスケのことを全く考えないようにしているのでしょうか?

エブリン:
NBAは大好きなのでめちゃくちゃ見ますね。でもそれはもう、完全にファン目線です。楽しくて見てるっていう感じで。自分の試合が終わってすぐに見返すことはありますが、全部見返したり、他のチームの映像をたくさん見たりはあんまりしないです。必要最小限って感じですね。

中山:
必要最小限にしつつ、好きだから一視聴者として観てることもあるんですね。では、普段は普通に仕事のことをやっている感じですか?

エブリン:
基本的にはそうですね。

中山:
現役でプレーをしながら事業もやっている人は多くないと思いますが、バランスを取る上で、何か意識していることなどはありますか?

エブリン:
バランス…正直、ここまで来ると、バスケにおける準備で何が必要かはだいたいわかっているので、午前2時間、午後2時間しっかり集中して練習できれば、それ以外の時間は他のことに使ってもいいよねという感覚です。もちろん、プレーオフが始まるとか「ここは集中したい」というタイミングでは、仕事をかなり減らすようにしています。でも、リーグ中でもギリギリまで仕事していることはよくありますね。本当に大事なものに、何をどうやって持っていくかは常に考えながらやっています。

中山:
なるほど。ちなみに、バスケの経験がビジネスに役立った、あるいはビジネスの経験がバスケに役立ったことはありますか?

エブリン:
それはもう、めちゃくちゃありますね。起業して資金調達して、採用もして…ってなると、スポーツではまず出会わなかったような人たちとも出会います。いい意味でも悪い意味でも、いろんな考えの人がいて、それをどうまとめるか、どう見せるかって考えるようになりました。

プレイヤーとしては、昔はもう“リングしか見えてない”タイプだったんですけど、今はチームをどうやって優勝に導くか、そのために「この人にこういう気持ちでいてほしい」とか、「テンション上げ気味で行こうかな」とか、いろんなことを考えるようになりました。

中山:
いわゆる、自分以外の視点が増え、視野が広がったんですね。人がいて、集団になり、一つの目的を達成するために集まっていると考えると、スポーツもビジネスも同じですよね。

エブリン:
そうですね。あとはビジネスをやったことで、様々な部分に対する自分のキャパが広がったり、考えが柔軟になって受け入れやすくなったりというのはあるかもしれないですね。

中山:
ビジネスをやったことでキャパが広がったり、考えに柔軟性が出たとおっしゃいましたが、それが具体的にバスケで活きてるなと感じるのはどんな部分ですか?

エブリン:
意見の衝突があったり、チームの雰囲気が難しかったり、自己主張が強い選手が多いチームにいた時に、以前にはなかったような意見の交わし方ができるようになったなと思います。もちろんスポーツなので、ずっと優しいだけではいけないと思っていますが、それでも若い子たちがそう言っているなら、「一回やってみようか」って受け入れやすくなったし、任せやすくもなりました。

中山:
人との関わり方、特にコミュニケーションの部分に影響したんですね。

エブリン:
そうですね。そう思います。

中山:
では、キャリアも長くなってきたエブリンさんが、プロ1〜2年目と今を比べて一番考え方で変わったことは何ですか?

エブリン:
色々ありますが...(笑)でもやっぱり、「一緒に戦える仲間の大事さ」っていうのを痛感していますね。1年目はそんなに強いチームではなかったので、強いところを倒してやるって一人で頑張っていた部分もあって。でも今は、いい仲間と、いい環境でバスケができることが、どれだけ奇跡的なことかって、本当に思います。

中山:
一人で走ってる感じから、一緒に戦える人がいることや、同じ想いを持っている仲間がいること、いい環境があること自体が奇跡的だなと思うようになったと。

エブリン:
そうですね。それはなかなかないことですよね。みんながその気持ちじゃないと、優勝なんてできないですし。

中山:
では、未来の話も聞いてみたいのですが、競技人生を終えた時に「どういう選手だった」と言われたいですか?

エブリン:
ベタですけど、「記録にも残ったし、記憶にも残った選手」。面白いだけじゃなくて、ちゃんと結果も残したって言われたいですね。オリンピックにも2回出場させてもらって、優勝も3回させてもらって、結果はある程度ついてきたとは思ってます。

中山:
面白さと結果の“二刀流”ですね。

エブリン:
そうですね。あと、「リーグを変えたよね」って思ってもらえる存在になりたいです。だからこそ、メディアもそうだし、事業をやるとか、リーグを巻き込んでイベントや企画を動かすとか、そういうこともやってます。リーグでは動けなかったところを、自分たちが面白い発想で切り開いていく。そこに楽しさを感じてるんですよね。

中山:
「面白さだけじゃなくて結果も」と聞いた時に、もうすでに達成しているのでは?とも思ったのですが、今出てきた「リーグを変えたいよね」という話も含めて、エブリンさんが競技を超えて目指しているものはどんなものなんでしょうか?

エブリン:
やっぱり、アスリートが持っている力に、もっと多くの人に気づいてほしいんです。「こんなこともできるんや」って言われるような、ロールモデルになりたい。競技を終えた後も、「こんな人生を歩めるんだ」って見せられるような、そんな存在になりたいですね。

中山:
最高ですね。今日は、同じ思想を持っているエブリンさんと対話できて、本当に嬉しかったです。非常に面白い内容でした。ありがとうございました。

エブリン:
こちらこそありがとうございました!


答えは、すぐには見つからないかもしれない。
それでも自分と向き合い、考え続けることが、次の一歩をつくる。
思考を解き明かす対話は続く。
『Dialog Code』——次は、誰の思考に触れようか。


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