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Dialog Code

『満足なき積み重ね──身体と対話し、上手くなり続けるために』 #牧隼利 Dialog Code 

2026/7/15

「対話が変われば、スポーツはもっと変わるのか?」

『Dialog Code』

強くなるために必要なのは、トレーニングや技術だけではない。アスリートが自分自身と向き合い、考え、気づくことで、次のステージへ進む鍵を探る対話記録。

今回登場するのは、

牧隼利(バスケットボール選手・大阪エヴェッサ所属)

【Before Dialog】
自分の状態を整えることは、簡単なようで難しい。体のどこかに痛みがあるかどうかだけではなく、力が入りすぎていないか。緩みすぎていないか。感覚がずれていないか。気持ちは高ぶりすぎていないか。頭は冷静でいられているか。コート上の一瞬の判断は、そうした細かな状態の積み重ねによって変わっていく。牧隼利は、良い状態を「整っている」と表現する。その言葉には、体、心、思考のバランスを日々探り続けてきた感覚がある。頭で考えすぎるのではなく、体と対話しながら、自分の中にある微細なズレを感じ取っていく。緊張や不安も、ただ消すものではない。時に楽しみとして受け止め、時に練習へ戻るきっかけに変えていく。才能ではなく、日々の積み重ねを大切にすること。満足できないからこそ、まだ上手くなりたいと思い続けること。そう信じる彼は、日々どのように自分を整え、何を積み重ねているのか。さあ、彼の思考を紐解いていこう。

【Code.1 - STATE】体で感じて整える───熱さと冷静さを保ち、考えずに動ける状態へ

中山:
試合中、判断がうまくいっている時のご自身の状態を、一言、もしくは短い文章で表すとしたら、どのような言葉になりますか?

牧:
「整っている」状態です。

中山:
具体的に、どのような状態を指すのでしょうか?

牧:
言語化するのは難しいのですが、総じて「整っている」という言葉に終着するようなイメージです。体的にも心的にも、単純に「調子がいい」というよりは、「整っている」という表現の方が自分の中ではしっくりきます。

中山:
「体が整っている」というのは、牧さんの中ではどのような状態を指しますか?

牧:
アスリートをやっていたら、体のどこかしらが痛くなる時はあります。なので、どこが痛い、痛くないということではなくて、全体的にバランスが取れているような感覚です。決して緩みすぎてもいないし、どこか一部分だけがすごく張っているわけでもない。全てがバランスよく保たれている感覚ですね。それが「整っている」というところにつながると思います。

中山:
「整っている」状態を保つために、日々取り組んでいることは何ですか?

牧:
自分でバスケットシューズを履いて、ボールを触るまでの時間を一番大切にしています。特にオフシーズンはそこを集中的にやっていますね。日々、自分の体と対話しながら整えていく作業が、自分がバッシュを履いてボールを持つまでの間に二時間くらいあると思います。

中山:
「体と対話する」というのは、どのような視点で体を見ているのでしょうか?

牧:
頭で考えすぎていても、結局体の声は聞けないと思っています。僕の長所でもあり短所でもあるのですが、考えすぎてしまうところがあるので、極力「感じる」ことを大事にしています。二時間の中でやる体操やエクササイズはいろいろ種類があるのですが、その一つひとつを通して、自分の体と対話することが一番だと思います。

中山:
頭で考えて分析するというよりは、普段行っているメニューやエクササイズの中で、自分の感覚を拾っていくイメージですか?

牧:
そうですね。全身のどこがどうというよりは、体全体で感じながら整えていくというイメージで取り組んでいます。

中山:
そういう考え方や取り組み方になったのは、何かきっかけがあったのでしょうか?

牧:
もともと怪我が多めで、3、4年前くらいに一度足首の手術をしたことがあり、そういう経験から自分の体と向き合うようになりました。

あとは、プロの世界でやっていると実力がある選手ばかりいますが、僕が得意な部分は考えることだと思っています。いろんな人の動きを見たり、体の使い方を見たり、自分で試行錯誤していく中で、バスケの練習をすることよりも、まず自分の体を知って整えていくことが一番大切だと思っています。

中山:
「体全体で感じる」というのは、実際に動作をしている中で確認している感覚でしょうか?
 
牧:
エクササイズの中では、正しく立つこと、正しく座ること、正しく歩くことを一番大切にやっています。その中で、体で感じながら集中して行っています。

中山:
そこに行き着いたのは、ご自身でいろいろ考えて試行錯誤してきた結果なのでしょうか?

牧:
今の時代はいろんなトレーニングや情報があるので、いろいろ試していく中で、自分の中ですごくしっくりくるものがあったので、そこを突き詰めてやっているという感じです。

中山:
先ほど「心」という言葉もありましたが、「心」という観点で整っているのはどのような状態でしょうか?

牧:
すごく気持ちが上がっているわけでもなく、逆にすごく下がっているわけでもない状態ですね。絶妙に表現するのは難しいのですが、比較的気持ちは熱くなっているけれど、頭は冷静でいられる状態かなと思います。

中山:
「考えすぎてしまうこともある」という話もありましたが、思考の部分でいうと「整っている」と感じるのはどのような時でしょうか?

牧:
逆に、何も考えていない時が整っている状態なのかもしれないです。考えずとも体が勝手に動いているような状況ですね。

中山:
試合中に考えすぎてしまう時もあると思いますが、どんな言葉が浮かんだり、何がプレーの邪魔をしている感覚がありますか?

牧:
ミスが起きた時に「こんなので弱気になるな」と自分に問いかけたりすることはあります。ただ、その時点で少し考えすぎているのかなと思うこともあります。なので、ひたすら自分の体で感じることにフォーカスして取り組んでいます。

中山:
思考的にも体的にも整っている時とそうではない時で、コート上では何が一番変わるのでしょうか?

牧:
やっぱり整っていない時は考えすぎてしまって、消極的なプレーになります。バスケットボールは狭いコートの中で行う競技であり、ほんの一瞬の「今だ」というオフェンスやディフェンスのズレが命取りになるので、そのズレが生じてしまうようなイメージですね。

中山:
普段から、自分自身を整えていく上で、大切にしていることは何ですか?

牧:
やっぱり日々の生活ですね。食事などの管理は大切にしています。ただ、気を遣いすぎていても心にとって良くない時もあると思うので、バランスを重視しています。

【Code.2 - EMOTION】楽しみとしての緊張───自分への緊張と不安を、準備の力に変える

中山:
試合前や試合中に生じる「緊張」や「不安」という感情は、牧さんにとってどのような存在ですか?

牧:
緊張は「楽しみ」で、不安は「練習不足」です。

中山:
緊張を「楽しみ」と表現したのは、どのような理由があるのでしょうか?

牧:
僕は緊張しないタイプではないので、試合前には必ず緊張します。ただ、その緊張にはワクワクする感覚があるので、高揚するというか。一方で、不安は別物です。不安を感じるということは、「それは練習不足でしかないよね」と自分の中では考えるようにしています。

中山:
試合前には何に対してワクワクしたり、楽しみだと感じるのでしょうか?

牧:
「自分がどんなプレーを出せるのか」という思いからですね。もちろん、そこには「勝ちたい」「シュートを決めたい」などいろんな要素がありますが、普段自分がやっていることをどこまで出せるのかというワクワクはあるかもしれないです。

中山:
この緊張の感覚は、プロになる前後で変化しましたか?

牧:
変わっていないと思いたいですが、おそらく変わっていると思います。今振り返れば、学生スポーツには学生スポーツでしか味わえない緊張感や達成感があったと思います。それは仲間と何かを成し遂げたい、みんなと積み上げてきたものを発揮したいという気持ちからですね。もちろん今もありますが、やっぱりプロの世界は競争する世界なので、自分に対する期待度は今の方が高いと思います。そこに対する緊張感はありますね。

中山:
集団として何かを成し遂げたいという感覚から、自分自身に対する期待や責任という部分がより濃くなったのですね。

牧:
そうですね。ただ、それが良いこととも悪いこととも思っていなくて、「そういうものなんだな」と思っています。

中山:
一方で、不安については「練習不足」という話がありました。プロになってから、試合前などに不安を感じることはありますか?

牧:
もう、日々不安があります。

中山:
具体的に、どのような不安が出てくるのでしょうか?

牧:
「あそこの場面でミスしてしまうかもしれない」「ちゃんとできるかな」という気持ちはシーズンを通してあります。だからこそ、練習することにもつながっていると思いますし、無意識の中で不安を感じているのだと思います。

中山:
不安の割合が大きくなりすぎるとパフォーマンスに影響する一方で、不安が全くなければ、ストイックさや準備への意識にもつながらない部分があるのかなとも感じました。この緊張と不安のバランスについて、どのように考えているのでしょうか?

牧:
日々違いますね。めちゃくちゃ不安に感じて弱気になる日もあれば、「今日は絶対いけるぞ」というような日もあります。かといって、試合中になれば状況も変わっていて、最初は不安だと思っていたけれど、気づいたら忘れていて「今日めっちゃ調子よかったな」という日もあれば、「今日は絶対いける」と思っていた日に全然ダメだったりすることもあります。それがスポーツの難しさでもあり、面白いところでもあるのかなと思います。結局、また練習するというサイクルですね。

中山:
毎試合ごとに緊張や不安の状態が違う中で、試合前に意識していることや、整えるために行っていることは何ですか?

牧:
練習の日も試合の日も変わらず、しっかり体を感じる準備を動き始める前にして、バスケットボールをする流れだけですね。これだけは絶対に崩さないです。

中山:
牧さんにとって、体を感じること、整えることが土台になっていると思いました。

牧:
そうですね。別に無理してやっているわけでもなく、自分が多分必要だと思っているからやっているという感覚です。


【Code.3 - COGNITION】才能より「積み重ね」を信じる───小さなズレと向き合い、結果へつなげる

中山:
牧さんにとって、バスケットボールという競技はどのような「ゲーム」だと捉えていますか?

牧:
「積み重ね」です。

中山:
バスケットボールという競技を「積み重ね」と表現したのは、なぜでしょうか?

牧:
バスケットボールはすごく点が入る競技です。4クォーターあって、その中でもチームの流れがあるものの、一発逆転がなかなかないスポーツだと思います。試合が終わってみると、「あの時の少しのズレでやられた」「あの一本が大きかった」と思うことがあります。リバウンドやルーズボールを取りきったか、取りきれなかったか。本当に小さな部分ですが、そういうものが積み重なって結果に出るスポーツだと感じています。そこがバスケの面白さだと思っているので、「積み重ね」と表現しました。

中山:
確かに、「惜しい試合だったよね」と言われる試合でも、振り返ると本当に些細な部分が勝敗を分けることがありますよね。

牧:
はい。それが数字としても出るのが、バスケットボールだと思います。

中山:
バスケットボールを「積み重ね」のゲームだと考えた時に、重要になるものは何だと思いますか?

牧:
やっぱり人間なので、すべてがパーフェクトにいくことなんて絶対にないです。でも、人生と同じように、良い時も悪い時も自分の信じたことを積み重ねていくしかないと思っています。だからこそ僕は、毎日自分の体と向き合うことを積み重ねられていると思いますし、「やれることをやる」ということが一番大きいかなと思います。

中山:
仮にそれを「自制心」や「規律」と呼ぶとしたら、牧さんはどのように維持しているのでしょうか?「やるしかない」と自分に言い聞かせながら続けているのか、それとも自分の中に明確な目標や向かいたい姿があるから自然と続けられているのかなど。

牧:
どちらかというと後者ですね。なりたい自分がいるからこそ、そこに近づくためにやるしかないと思っています。チーム単位で考えても、このスポーツをしている以上、負けたい人なんていないと思うので。負けても次の試合に向けて、また練習してやるしかないという感じです。

中山:
バスケットボールはチーム競技でもありますが、「積み重ね」というものは個人だけではなくチームにも当てはまる感覚があるのでしょうか?

牧:
もちろんありますね。特にバスケットボールは5人全員でやるスポーツで、シーズンになれば60試合あります。その中で良い時も悪い時も、チームとして積み重ねていく感覚はすごくありますし、そこにはやりがいがあります。

中山:
いろいろな価値観や状態の人が交わる中で、チームとして積み重ねていくために重要なものは何だと思いますか?

牧:
コーチやクラブが出しているカルチャーというか、たとえば僕たち大阪エヴェッサには「DOG FIGHT(ドッグ ファイト)」という言葉があります。とにかくどのチームよりもファイトする。その中で、各々のファイトの仕方があると思うんです。それぞれがそこに沿ってやり続けることができれば、自ずとチームとして積み重なっていくと思っています。カルチャーの意識は大事だと思います。

中山:
チームやクラブとしてのカルチャーやスタンスがあって、それを各選手がそれぞれの形で体現していくのですね。

牧:
はい。各々、本当に人それぞれだと思うんです。機嫌がいい日もあれば悪い日もあるし、調子がいい日もあれば悪い日もある。そこに波があるのは当然だと思っています。トレーニング一つをとっても、人それぞれ取り組み方や考え方があります。特にプロになると、各々が責任を持って取り組んで、その結果としてチームに貢献していけばいいのかなと思います。

中山:
牧さん自身の価値観を聞いてみたいのですが、アスリートにとって「才能」と「積み重ね」、どちらがより重要だと思いますか?

牧:
積み重ねだと信じたいです。

中山:
なぜ、その答えになるのでしょうか?

牧:
才能がある選手を、今まで幾度となく見てきたからです。自分がすごく才能がある選手なのかと言われたらそうは思わない。でも、他の人から見たら才能があると思われている可能性もあるかもしれないです。ただ、自分自身の感覚として、ここまでこの世界でやってこられていることは、積み重ねていくことを大切にしてきたからだと信じています。

中山:
自分のことを「才能で勝負してきた」というよりも、「積み重ねてきたものによってここまで来た」という認識が強いのですね。

牧:
そういう人が最後に勝つと信じています。いくら才能があろうが、積み重ねてきた人が最後は勝つと信じてやっています。

中山:
才能ではなく積み重ねだと信じたいと思う理由を、自分自身の経験や見てきた世界も含めて言葉にすると、どのようになりますか?

牧:
うーん…難しいですね。「本当にただそれを自分が信じているから」というのが一番かもしれないです。正直、他の人が普段何をしているかなんて見えないじゃないですか。もしかしたら、裏でめちゃくちゃ努力している選手もいるかもしれないです。だからこそ、他の人と比較するというより、自分と向き合うことが唯一コントロールできることだと思っています。そこに向き合っていますし、それを信じているからとしか言いようがないですかね。



【Code.4 - VISION】満足なき自己探求───上手くなりたい気持ちを切らさず、積み重ね続ける

中山:
この競技を続けていった先に、どのような状態や景色に辿り着いていたいと考えていますか?

牧:
いつか満足するのかなとも思いつつも、満足する日なんて来ないのかなとも思います。

中山:
「満足する日が来ないかもしれない」というのは、どういう意味でしょうか?

牧:
一度、3、4年前くらいに沖縄で優勝したんです。その時はすごく嬉しかったし楽しかったし、「最高だな」と思いました。でも振り返ると、「あの時あのシュート決めておけば」という悔しい気持ちも多かったんです。そこから1、2ヶ月オフで休んで、また練習が始まって、試合があって、移動してという同じサイクルに戻った時に、すごく儚さと虚しさを感じました。

例えば、すごく調子が良かった試合があったとしても、映像を見返したら「この時こうできたな」「もっとこうできたな」という部分が見えてくる。またそこから練習するわけじゃないですか。だからこそ、なりたい自分になれる日は来ないんじゃないかなとも思いますし、逆にいつか急に冷めてしまった時が辞めるタイミングなのかなと思います。

中山:
「満足できない」というよりも、常に次の課題が見つかっていく感覚なのですね。

牧:
改めて問われると難しいですね…見つかっていくというよりは、「そういうものなのかな」という感覚です。バスケに限らず、本当に人間ってそうだと思っています。

中山:
あくまで感覚的なところで聞いてみたいのですが、現時点の牧さんを自己評価した時に、理想の選手像というものがあるとしたら、何割くらいまで来ていますか?

牧:
4割、5割ですね。でも最近感じるのは、この年齢になって少し終わりも見えてくるんです。そこに対する焦りというか、もう少し速度を上げないといけないなという感覚はあります。

中山:
まだ4割、5割しか到達していないという感覚があるからこその焦りなのでしょうか?

牧:
そうですね。だからこそ、最近少し終わりが見えてきていることもいいことなのかなと思っています。いつ終わるのかは決めていないですし、何歳までやりたいというのもないですが、50歳までできるかと言われたら、なかなか難しいです。なので、なりたい自分になるために速度を上げないといけないと思っています。

中山:
その速度を上げるために、一番必要だと思っていることは何でしょうか?

牧:
体の感覚です。体と自分で対話するだけです。僕はとにかくここですね。

中山:
なぜ、そこに行き着くのでしょうか?

牧:
一番自分が大切にしている部分でもありますし、そこが研ぎ澄まされてこないと、バスケットボールもうまくならないと思っているので、そこに尽きるかなと思っています。

中山:
仮に牧さんが最後まで満足することがなかったとしても、「自分のバスケットボール人生は良かった」と思えるのは、どんな状態で終われた時だと思いますか?

牧:
これを積み重ね続けることができたらですね。いくら才能があろうが、積み重ねてきた人が最後は勝つと信じてやっています。「切れた」という言葉が合っているか分からないですけど、今までのバスケット人生で、その気持ちが切れたことはありません。この気持ちを積み重ね続けられる限りは続けると思いますし、逆にそこが切れたら辞めるんじゃないかなと思います。

中山:
わかりやすい結果として何かを得ることよりも、自分の中で最大限できることを、どれだけ継続して積み重ねられるかというプロセス自体が牧さんにとっては大切なのですね。最後に、今の牧さんにとって一番のモチベーションは何でしょうか?

牧:
シンプルに、バスケットが上手くなりたいという気持ちですね。

中山:
それはずっと持ち続けているものでしょうか?

牧:
子どもの頃から何かを始めた時に思う「もっと上手くなりたい」という気持ちと変わらないと思います。それを持ち続けています。

中山:
人によっては、ある程度満足したり、別のところに興味が移ったりすることもあると思います。この「上手くなりたい」という気持ちはどこから来ると思いますか?

牧:
僕は自己探求みたいなことが好きなのかなと思います。たまたま、それがバスケットボールになっているだけです。考えて、試して、何かを変えていくということ自体が好きなのだと思います。だからこそ、やらされる練習はあまり好きじゃないですし、正直できないですね。もちろんチームの練習で必要なことは当然やりますが、自分で考えて取り組む自主練習や自分なりに工夫することの方が好きです。そういう探究心のような部分が大きいのかなと思います。

中山:
牧さんの中では、「考えて何かをすること」が好きで、その考えるという部分が自己探求につながっている。そして、今はその対象がバスケットになっているということですね。

牧:
まさに、そういう認識ですね。

中山:
明確な目標や到達地点を設定して、そこに向かって貪欲に突き進むことで大きな成果を残す選手がいる一方で、牧さんのように自分自身を深く掘り下げながら、日々の積み重ねの中で最高を目指していく選手もいます。どちらが正解ということではなく、それぞれが自分自身に合った方法で、自分の可能性を追求していくことが大切なのだと思います。今回、牧さんのお話を聞いて、その「自分なりの向き合い方を貫きながら、最高を目指していく姿勢」というものを感じました。今日は貴重なお話をありがとうございました!

牧:
ありがとうございました!



【After Dialog】
牧隼利の言葉から見えてきたのは、結果だけでは測れない、静かな探究の姿だった。良い状態は、ただ調子がいいことではない。体が緩みすぎず、張りすぎず、心は熱を持ちながらも冷静でいる。考えすぎるのではなく、体が自然に動く感覚に近づいていく。その状態をつくるために、彼は日々、体と対話し続けている。緊張は、試合への楽しみになる。不安は、練習へ戻る理由になる。うまくいく日も、思うようにいかない日も、結局はまた自分と向き合い、やれることを積み重ねていくしかない。そこには、才能よりも積み重ねを信じたいという、彼自身の選択がある。優勝しても、満足しきれなかった。良い試合をしても、映像を見返せば足りない部分が見えてくる。なりたい自分には、まだ届いていない。だからこそ、体の感覚を研ぎ澄ませ、考え、試し、また変えていく。その繰り返しが、彼にとっての自己探究である。「もっと上手くなりたい」という気持ちが切れない限り、探究は続いていく。満足に辿り着くことよりも、満足できない自分と向き合い続けること。その積み重ねの中に、彼らしい強さがある。

『Dialog Code』

答えは、すぐには見つからないかもしれない。それでも自分と向き合い、考え続けることが、次の一歩をつくる。思考を解き明かす対話は続く。次は、誰の思考に触れようか。

【Athlete Profile】
牧 隼利(まき・はやと)
1997年12月14日生まれ、埼玉県出身。
バスケットボール選手。大阪エヴェッサ所属。

福岡大学附属大濠高校、筑波大学を経て、2019-20シーズンに特別指定選手として琉球ゴールデンキングスへ加入。高校時代にはインターハイ、ウインターカップで全国上位を経験し、筑波大学では2016年、2019年に全日本大学バスケットボール選手権大会で優勝。2019年大会では最優秀選手賞にも輝いた。2020-21シーズンから琉球ゴールデンキングスで本格的にプロキャリアをスタートし、2024-25シーズンから大阪エヴェッサに加入。ガードとしてのサイズを生かしたプレーに加え、得点、リバウンド、ディフェンスなど幅広い局面でチームに貢献する。年代別代表では、2013年にFIBA ASIA U-16日本代表メンバーに選出。その後もユニバーシアード日本代表候補、男子日本代表候補重点強化選手、FIBAアジアカップ2025予選Window2直前合宿招集メンバーなどに名を連ねてきた。高校、大学、Bリーグと各カテゴリーで経験を重ね、現在も大阪エヴェッサの一員としてプレーを続けている。
【Dialog Partner】
中山 知之(なかやま・ともゆき)
1995年1月26日生まれ、愛知県出身。
株式会社Athdemy 取締役CCO。

JFAアカデミー福島や世代別日本代表、海外リーグでのプレーといったアスリートとしての原体験を起点に、人間の「状態」と「パフォーマンス」の関係性を探求し続ける。異文化圏での教育コンサルタントや、国内大手不動産テック企業でのセールス/マネジメント経験など、多様な環境の中で「変化が生まれる構造」に向き合ってきた。現在はAthdemyにて、トップアスリートとの対話(Dialog)を通じて思考や感情に伴走。一貫して問い続けているのは、「人はどのような状態で本来の力を発揮するのか」。競技とビジネス、国内と海外といった境界を横断しながら、個人の内面にある思考や感情を言語化し、新たな気づきを共に生み出している。

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