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Dialog Code

『未完であることの喜び──終わりのない成長曲線』高梨健太 # Dialog Code 

2025/12/03

「対話が変われば、スポーツはもっと変わるのか?」強くなるために必要なのは、トレーニングや技術だけではない。自分自身と向き合い、考え、気づくこと——それが次のステージへ進む鍵になる。『Dialog Code』—— アスリートたちの言葉から、その可能性を探るシリーズ。

今回登場するのは、高梨健太(プロバレーボール選手・日本製鉄堺ブレイザーズ所属)。

さあ、彼の思考を紐解いていこう。


(写真提供:日本製鉄堺ブレイザーズ)

1. 後発のスイッチ──球拾い、届かないリング

中山(Dialog Partner):
まず初めに、高梨さんがバレーボールを始められたきっかけや、当時の印象に残っている景色について教えていただけますか?

高梨:
2人の兄がバレーボールをやっていたことが大きかったですね。僕自身は小学校6年生から本格的に始めたのですが、その頃に友達が「みんなでバレーやってみようぜ」と言い始めて。兄たちもやってたしやってみようかなという感覚で始めました。

中山:
なるほど。それ以前に他のスポーツはされていましたか?

高梨:
小学校3〜4年生くらいの時に、2ヶ月程度でしたがスイミングスクールに通ってました。あと、兄たちと一緒に遊ぶことが多かったので、公園で野球をしたり、そういう遊びの延長で体を動かしていました。

中山:
なるほど。そんな中、小学6年生の時に友達から「バレーやってみようぜ」と声がかかったんですね。

高梨:
そうですね。親同士が仲良かったこともあって自然と友達になって、その流れでバレーボールを始めました。スポーツ少年団に入っていたわけではないのですが、何度か練習に行ったりしていたんです。正式に始めたのは6年生ですが、バレーボール自体はもっと小さい頃から触ってました。

中山:
バレーボールが身近にあったんですね。そこからどのタイミングで本格的にのめり込んでいったのでしょうか?

高梨:
高校1年生のインターハイ予選が終わった頃くらいですかね。もともとそこまで上手じゃなかったんですよ。小中と続けて、中学3年生になった時に部員が7人しかいなくて、それで初めて試合に出られるようになったという感じで。

中山:
表舞台に立つ機会が急に出てきたわけですね。

高梨:
高校は推薦をいただいて進学したのですが、山形県大会ではベスト4とかベスト8くらいで、全国大会に出たことのない学校でした。そこで1年生の時にバスケットゴールのリングに触れないと練習に入れないというルールがあって、みんな届くのに僕だけ届かなかったんです。そこから監督にみっちり鍛えていただいて、届くようになって、ようやく練習に参加できたのがインターハイ予選の前くらい。だからそれまでボールにもろくに触れなかったんですよね。

中山:
周りは普通にクリアしていることが、自分だけできない。ある意味、追い込まれるようにして鍛えられたわけですね。

高梨:
そうですね。高1のインターハイ予選が終わって、当時の3年生の先輩が遊びに走って来なくなっちゃって。その時に先生に「お前、スパイク打ってみろ」と言われて、そこから本格的に練習させてもらえるようになりました。それまではずっと球拾いばかりで、山形県の中でも目立つ選手ではなかったんです。

中山:
突然巡ってきたチャンスだったわけですね。

高梨:
高校2年くらいから身長が伸びてきて、そこで初めて全国大会に出られました。翌年も全国大会に出て、そのときに日本体育大学(日体大)の山本先生が学校に来てくださり、声をかけていただいて大学に進学しました。でも、もともと大学に行く予定は全くなくて、高校でバレーボールをやめて就職するんだと思ってました。

中山:
大学から声がかかるのは予想外の展開だったと思うのですが、その時はどう受け止めたのでしょうか?

高梨:
大学に行っても、レギュラーで出たり、主軸として出るんじゃなくて、たまに出たり、それこそ球拾いでまた4年間終わるんだろうなと思ってたんです。でも山本先生にしっかりご指導いただいて、カテゴリーの代表にも入れて、大学で初めて全国や世界を体験するようになって、そこからもっと上に行きたいとか、うまくなりたいという意識が芽生えてきました。

中山:
お話を伺っていると、高梨さんはかなり後発的にスイッチが入ったタイプという印象がありますね。

高梨:
そうですね。最初は本当に上を目指すとか、うまくなりたいとか、あまり考えていなかったです。

中山:
そんな中で高校も大学も、ある意味流れに導かれるように進んできて、その時々でやってみようという気持ちがあった。どういうモチベーションだったのでしょうか?

高梨:
親から「高校だけは出なさい」と言われていたので、バレーボールを第一に考えていたわけではなく、とにかく高校を卒業することが優先でしたね。

中山:
なるほど。

高梨:
正直言うと、日体大が強いとか伝統があるとか、山本先生のことも本当に知らなかったんです。その翌日に高校の先生から「こんなチャンス滅多にないから行け」と言われて、その流れで入学が決まりました。

中山:
本当に導かれるように進んでこられたんですね。先々を考えるというより、自然な流れに身を委ねてきた感覚があったのかなと感じます。

高梨:
そうですね。先のことをそこまで考えてなかったと思います。

中山:
実際、大学時代に全国や世界を体験して、その経験によって何が変わったのでしょうか?

高梨:
最初は高さやパワーに圧倒されたのですが、もう少し戦えたなという感覚がありました。その時に、恐怖心を取り除けばどうなるんだろうという問いが立って、そこからはその恐怖心をどう取り除けるんだろうということをどんどん考えるようになりました。

中山:
なるほど。そこからプロになりたい、将来バレーボールで生きていきたいといった気持ちが生まれていったのでしょうか?

高梨:
いや、全然考えてなかったですね。大学にいても、当時の Vリーグ がどういうものか全然わかっていなくて。ただただうまくなりたいとしか思ってなかったです。

中山:
純粋にうまくなりたいという気持ちが強かったんですね。

高梨:
そうですね。大学3~4年くらいになって、だんだん Vリーグ があることを知って、「声がかかったらいいな」というのは考えていましたが、卒業して社会人でバレーボールを続けたいとはあまり考えていなかったですね。

中山:
意外とプロを意識していなかったという選手もいますよね。

高梨:
そうですね。どういうステップアップをしていけばそこにたどり着くのかも知らなかったので。本当に単純にもっとバレーボールがうまくなりたいという気持ちだけでやっていました。

中山:
では、もっとバレーボールがうまくなりたいという気持ちは、どんなところから生まれていたのでしょうか?純粋な意味でのうまくなりたいだったのか、誰かに負けたくない、といった感情だったのか、それとも痛い経験からなのかなど。

高梨:
大学に入ってからスパイクを打っても決まらないなど、できないことが多かったんですよね。まずスパイクをもっと決められるようになりたいというところから始まりました。例えば止められたら、どうやったらブロックされないように打てるかとか。

中山:
できないという事実が、モチベーションの源泉になっていたのですね。そのできなかった時の感覚は、どんな感じだったのでしょうか?

高梨:
特別ライバルがいたわけではなくて、強いて言えば自分自身。自分の中で、できないことをできるようにするにはどうするかというところと戦っていました。

中山:
なるほど。純粋に自分との戦いだったんですね。

2. 選択肢を磨く──データと映像が育てる“余裕”

中山:
今ではプロとしてプレーされ日本代表経験もある中で、普段の練習に取り組む前に、意識的に行っている準備や習慣はありますか?

高梨:
大体自分ができていないことがその時々であるので、まずはどうやったら試合でできるようになるかを考えています。練習ではできても試合ではシチュエーションが違ってうまくいかないことがあるので、練習で通用しても試合では使えないみたいなことがあるんです。なので練習でも常に試合を意識して、プレーの選択肢を増やすことを意識しています。あとは、その時々に出た課題を整理して、練習の中でクリアにしていくことですね。

中山:
その整理するという作業は、どのタイミングで、どんな形でされているのでしょうか?

高梨:
携帯のメモに書いています。データを見て、アタックやサーブの数字が悪ければ、なぜ悪いのかをメモに書いていきます。あとは試合の映像を見て、よかった点と悪かった点を書き出しています。試合後の休み明けの練習前にそれを見返しながら、今日はこの課題を潰していこうと整理しています。

中山:
空いている時間にデータや映像を見てメモに残して整理しているんですね。

高梨: 
そうですね。悪い時のフィーリングや感覚はどうだったのかを思い返して、映像を見て確認して、メモにバーッと書いていく感じです。

中山:
データと映像を見て、ノートに整理する。この作業にどんな意味や価値を感じていますか?

高梨:
バレーボールって全く同じシチュエーションが来ることはあまりないんですよ。でも「このトスならこういう選択肢がある」のように、選択肢の確保ができるようになるんですよね。

選択肢が多ければ余裕が持てて、余裕があればプレーの幅も広がります。あとは、悪い状態の時をどうやって改善するか。悪かった理由をメモしておくことで、どうすれば良い状態に持っていけるかを考えるようになったことで、改善できるようになったと感じています。

中山:
なるほど。映像を見てメモで整理することで、選択肢が広がって余裕が生まれる。そして悪い状況の改善にもつながるんですね。

中山:
バレーボールは、1球1球に流れがあって、試合の雰囲気も大きく動きますよね。特に大事な場面ではどんなことが頭に浮かぶのでしょうか?

高梨:
基本は「次、次」ですね。僕は引きずると消極的になるタイプなので、プレーが終わったら「次」。断片的に見ていく、みたいな感じです。

中山:
サーブがどちらかによって状況も変わると思いますが、「次、次」のモードに入った後、どんなことを考えたり、何を見ていることが多いのでしょうか?

高梨:
こちらがサーブレシーブする場面では、まず相手のサーバーが誰なのかを見ます。その選手には得意なコースがあるので、もし自分のところに来る可能性があるなら、まず一番避けなきゃいけないのはサービスエースを取られることと、レシーブしたボールが相手コートにそのまま返ってしまうことなんです。強いサーブを打たれたら、とにかく上に上げる。自分がコントロールできると思ったら、しっかりパスを返す。

中山:
なるほど。まずは失点しないために、最小限のリスク管理から入るわけですね。その上で、自分のコントロール感覚と相談しながら、どこまで返せるかを瞬時に判断していると。

高梨:
その次に、自分が前衛なのか後衛なのかで攻撃にどう関わるかが変わってきます。前衛だったら、「ブロックは誰と対峙するのか」を見ます。僕のところは基本、身長が高い外国人選手がブロックに来るので、「誰が来るのか」「ミドルブロッカーはどういう特徴か」を確認します。逆にセッター前だったら、ブロックはそこまで高くないので、「どういうふうに打っていこうかな」とか、そういうところを整えて、最後にパッとサーバーを見て、「次、誰がブロックに来るんだっけ?」みたいな確認をしてます。

中山:
相手ブロッカーの特徴や高さまで、瞬時に整理していて、状況を立体的に捉えている感じがします。

高梨:
こちらがサーブの時は、基本的に対峙するのは外国人のアタッカーなので、その選手が前なのか後ろなのかを見て、味方のミドルブロッカーのサインを確認します。サーブに対して、相手がどんなパスを返しているかによっても、ほんの一瞬ですが自分の動きを変えます。

中山:
なるほど。見るポイントや考えることがいくつか連動しているんですね。

高梨:
そうですね。言葉にすると少し複雑で長くなるのですが、やってることは単純です。サーバーを見て、相手を見て、という感じです。

中山:
そこから、どんなボールが来るのかというパターンを頭の中で準備したり予測したりしているんですね。先ほど、「次、次」というマインドで試合に入っているというお話がありましたが、試合中に良くない状況になった時はどう立て直すのでしょうか?

高梨:
僕はワンパターンではなく、何個か引き出しを持っておきたいタイプなので、2~3回ミスが続いたら、一回何も考えずに無になります。逆に、自分をエキサイティングさせて、「次やってやるぞ」と盛り上げたり。その状況によって使い分けています。

中山:
毎回決まった対応ではなく、その時々で必要な自分への関わり方を選んでいるのですね。

高梨:
そうですね。「今日はこれが合ってるな」とか「今日はこれじゃないな」というのもあるので。あと、自分がダメな時は、周りの選手や監督に自分から話しかけに行くこともあります。

中山:
そこにはどんな意図や効果があるのでしょうか?

高梨:
一つはコミュニケーションを取るということです。自分の殻に閉じこもると、周りも意見を言いづらくなると思うので、自分からオープンに話していくことで、周りから見て自分が今どうなっているのかを聞けるようにしています。

中山:
なるほど。自分を閉ざさずに、開いておくという感じですね。

高梨:
そうですね。以前はミスが続くと殻に閉じこもりがちだったのですが、聞きに行ったり、自分から行動することが大事だと思うようになりました。

中山:
具体的なやり方は色々あると思いますが、引き出しを持っておきたいという発想が高梨さんらしさだなと感じました。その引き出しを持っておきたいという考え方には、どんな背景があるのでしょうか?

高梨:
「それがうまくいかなかったらもう終わり」と思っちゃうのが嫌なんですよね。いろんな対応ができたほうがいいなって。成功・失敗に関係なく、いろんな方法や解決策があると思っていいます。

中山:
一つの正解に固執すると視野が狭くなったり、うまくいかない時に一気に崩れることもありますよね。

高梨:
プレーを重ねれば重ねるほど「自分のやり方はこれ」となりがちだと思うのですが。僕はいろんなやり方があっていいじゃんと思っているタイプです。自分の悪い時の解決方法を持っておいて、その時の状況に応じて当てはめていくみたいな感じですね。

中山:
なるほど。それが何か起きた時の対応力・柔軟性に繋がっているのですね。

3. 緊張は戦う準備の証──「高ぶり」と「いつも通り」

中山:
試合前夜はどんな過ごし方や準備をされているのでしょうか?

高梨:
そんなに特別なことはしなくて、治療に入って、疲労具合によって湯船につかるかシャワーで終わらせるかを決めて、夜は基本的にリラックスして過ごします。遠征先でも散歩したりどこかへ行ったりもしないですね。

中山:
次の日の試合について深く考えたり、整理したりといったことはされるのでしょうか?

高梨:
iPadで映像を見るくらいで、長くは見ないです。本当に短時間でパッと見て終わります。

中山:
なるほど。どんな視点で見るのでしょうか?

高梨:
僕はアウトサイドでサーブレシーブがあるので、相手のサーブやブロックがどうなっているかを見ます。あとは自分のスパイクの過去の映像を持ってきて、その時の感覚を頭の中でイメージしています。イメージのすり合わせみたいな感じで、軽く15分くらい見るという感じです。

中山:
なるほど。それ以外の時間は、基本的にはリラックスするようにされているんですね。高梨さんは、緊張や不安といった感覚はどのタイミングで出てきますか?もしくは、あまりそういうものは感じないタイプですか?

高梨:
やっぱり試合当日は緊張しますね。朝のミーティングの時とか、試合会場に着いてからです。試合前が一番緊張します。

中山:
前日の夜にあまり眠れないという経験はありますか?

高梨:
ありますね。優勝した時の決勝戦の前夜は本当に眠れなかったです。興奮状態に入っちゃって。

中山:
緊張で寝れないというよりは、興奮状態に近いんですね。

高梨:
どちらかというと興奮ですね。

中山:
では、当日の朝や試合前に緊張や不安が高まってきた時、高梨さんは緊張や不安とどう関わり、コントロールしているのでしょうか?

高梨:
自分に語りかけるようにしています。試合になると、どうしてもいつも以上のことをしようとして力が入るので、「いつも通りでいい」「特別なことはしなくていい」と自分に言い聞かせています。あと、以前ウルフドッグス名古屋にいた時、マクガーフンというアメリカ籍の監督が試合前のミーティングで「お前ら緊張してるか?緊張は今から戦う準備をしている証だ」と言ってくれたんです。それがすごく心に響いて、緊張は悪いものじゃなくて「準備している証拠なんだ」と捉えられるようになりました。

中山:
なるほど。緊張の捉え方が変わったということと、いつも通りでいいと自分に言い聞かせるんですね。これはどのタイミングで行うのでしょうか?

高梨:
コートに立った時もそうですし、緊張して舞い上がってきているなという感覚が自分で分かった時ですね。高ぶりすぎてると感じた時に、自分に聞かせるようにしています。

中山:
面白いですね。心理学や生理学の観点からも、緊張と不安と興奮はほぼ同じ身体反応なんですよ。心拍が上がって血流が増えたり、集中力が上がる。要は、これから動くために身体を準備している状態なんです。

高梨:
なるほど。自分の中では「リラックスしている方がやばい」というか、緊張していた方がいいという感覚はありますね。

中山:
動的な競技だと、適度な緊張はむしろ必要だったりしますし、逆に日本人は落ち着きすぎることの方があったりもするので、自分から緊張感を作る必要がある選手もいます。高梨さんはそのタイプかもしれないですね。

高梨:
そうかもしれないですね。昔は「緊張=ダメ」と思ってて、「リラックスして挑もう」という時期もあったんです。でも全然試合にスイッチが入らなくて、「リラックスしすぎてるのかな」と思うこともありました。なので、ある程度緊張があった方がいいですし、緊張と向き合うことが大事だと思います。試合の時は緊張があった方がいいですね。

4. 怒りを変換する──迷わず振り切る“一瞬の判断”

中山:
バレーボールでは試合の“流れ”もあると思いますが、いい流れ、悪い流れに対して、どう捉えて、どう対応しているのでしょうか?

高梨:
流れがいい時は、何をしてもいいので正直そこまで考えないです。僕はどちらかというと流れが悪い時に意識します。

中山:
何を意識されるのでしょうか?

高梨:
まずは、流れが悪い時に一度みんなで集まって、例えば「サイドアウトしっかり取っていこう」みたいに話します。もう一つは、リアクションを大きくする。喜ぶ時に大きくリアクションすることで、流れを変えられる時もあるんです。バカみたいに喜ぶとか、盛り上がるとか。それが当てはまる時もあるんです。それと、自分のやることを一度頭の中で整理し直すことですね。

中山:
バレーボールを見ていると、感情がプレーに強く影響しているようにも感じます。喜びや悔しさ、「次こそ取り返してやる」という気持ちだったり、感情を爆発させることで周りに勢いが出たり。こうした感情の起伏は、高梨さんご自身のパフォーマンスにどう変換されているのでしょうか?

高梨:
僕はどちらかというと怒りの方がエネルギーに変換しやすいですね。やってやるぞという気持ちが強いほど、良い方向に向かう感覚があります。

中山:
試合ではどんな場面で怒りが出るのでしょうか?

高梨:
1点を取れないことに対しての怒りですね。例えば自分が打って止められた時とか、相手のサーブでミスした時とか、悔しいと感じる場面がたくさんあるので。もちろん相手に言われたことでスイッチが入ることもあって、それが自分を鼓舞する要素になることもあります。

中山:
なるほど。怒りをスイッチにできるタイプなんですね。ただ、人によっては怒りで冷静さを失ったり、判断が鈍ることもありますよね。高梨さんの場合、怒りをエネルギーに変換した時にはどんな感覚があるのでしょうか?

高梨:
視界が広がる感覚があります。

中山:
視界が広がる感覚。

高梨:
どちらかというと、そこでパッとスイッチが入って「やったるぞモード」に入りますね。

中山:
モードが変わるのですね。ポジション的にも、最後にボールを託される場面が多いと思います。その責任や挑戦をどう捉えていますか?

高梨:
んー…どうですかね。確かに責任はありますし、最後の1点を任される場面は多いでが、そこにフォーカスしているわけではないので、特別意識したことはあまりないですね。

中山:
なるほど。では、もしスパイクで最も必要な能力を一つだけ選べと言われたら、何だと思いますか?

高梨:
えー、難しい。なんだろう…。「一瞬の判断」だと思います。

中山:
なぜそう思ったのでしょうか?

高梨:
どれだけ高く跳んでも、何も見ずに打ったらブロックされたり拾われたりするので。逆に、一瞬の判断が全部合っていれば、高さがそんなになくても決められます。なので一瞬の判断が一番大事だと思ってます。

中山:
もし学生や同じポジションの選手で「自分が決めなきゃ」と思いすぎてしまう選手がいたら、どう声をかけますか?

高梨:
シチュエーションにもよりますが、本当に最後の1点を取るなら、「打つ」と自分が決めたことに迷うな、というのは伝えたいです。

中山:
なるほど。それは決まるかどうかに関係なくでしょうか?

高梨:
そうですね。一瞬の判断ですが、「自分が決めた行動に迷わない」というのが大事だと思ってます。

中山:
裏を返すと、迷うと何が起きるのでしょうか?

高梨:
中途半端になるんですよね。相手にブロックタッチを取られたり、シャットされたり。動作が小さくまとまってしまうというか。逆に「決める」となれば、動作も大きく、しっかり振り切れると思います。

中山:
思い切りが動作の滑らかさや大きさにも影響するわけですね。面白いです。

5. 終わらない問い──積み上げが導く、新しい景色へ

中山:
最後に未来についても伺わせてください。高梨さんはこれまで Vリーグ優勝や天皇杯優勝も経験されていますよね。今後、まだ見たい景色や到達したいものは、どのようなものなのでしょうか?

高梨:
到達したいものというよりは、自分がバレーボールを辞めて振り返った時に、満足して終わりたいという気持ちが一番強いですね。

中山:
どうなってたら満足できる状態だと思いますか?

高梨:
その答えがないから、僕はワクワクするタイプなんだと思います。答えがあると飽きちゃうので。スポーツって極めれば極めるほど、また先が出てくるじゃないですか。マラソンみたいに一生走り続ける感じです。ゴールは引退する日だと思います。

中山:
なるほど。答えがないからこそワクワクするし、積み重ねていった先で何が起きるかを楽しみにできると。

高梨:
はい。今までのキャリアも全部そうで。「こうなるぞ」と逆算してきたわけじゃなくて、本当に積み上げてきた感じです。

中山:
本当に、次、次、次という積み上げ型なのですね。

高梨:
そうですね。よく「ゴールはどこですか?」「何を目指してるんですか?」と聞かれるんですけど、なかなか言葉にできなかったのですが、最近やっと言葉になってきた気がします。優勝してない時は「優勝したい」って思っていたのですが、優勝してみたら「じゃあ次は何を目指すんだろう?」と考えるようになって。やっぱり一番最初にあった、「バレーがうまくなりたい」「成長したい」という気持ちがずっと変わらずあるんだなと思いました。

中山:
引退するその日まで、うまくなりたい、成長したいという気持ちを持ち続ける。その気持ちがなくなった時が、もしかしたら引退の時なのかもしれないですね。

高梨:
そうですね。

中山:
世の中的には分かりやすい答えや表面的なゴールを求めることが多々ありますが、高梨さんのように純粋にうまくなりたい、成長したいという気持ちで積み上げていく姿勢も、強く、美しいなと思いました。これからどんな景色が見えていくのか楽しみですね。本日はありがとうございました。

高梨:
ありがとうございました!


答えは、すぐには見つからないかもしれない。
それでも自分と向き合い、考え続けることが、次の一歩をつくる。
思考を解き明かす対話は続く。
『Dialog Code』——次は、誰の思考に触れようか。


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