Dialog Code
『螺旋の先へ──終わりのない問いと共に』石井講祐 # Dialog Code
2025/11/12

「対話が変われば、スポーツはもっと変わるのか?」強くなるために必要なのは、トレーニングや技術だけではない。自分自身と向き合い、考え、気づくこと——それが次のステージへ進む鍵になる。『Dialog Code』—— アスリートたちの言葉から、その可能性を探るシリーズ。
今回登場するのは、石井講祐(プロバスケットボール選手・シーホース三河所属)。
さあ、彼の思考を紐解いていこう。

1. 「届く距離」から──引っ張られないという生き方
中山(Dialog Partner):
バスケを始めたきっかけや、最初の頃の景色、どんな場所で、どんな気持ちでプレーしていたか覚えていますか?
石井:
始めたのは小学4年生です。それまではずっとサッカーをしていて、年中くらいから市のクラブチームに入っていました。ちょうど小4から学校の部活動に入れるようになって「サッカーかバスケか」を選ぶタイミングが来たんです。
中山:
どのような理由がバスケへと導いたのでしょうか?
石井:
ちょうどその頃、仲の良い友達が転校したり強いチームに移ったりして、一緒にプレーする仲間がいなくなってしまって。サッカーとは関係のない友達から「一緒にバスケやろう」と誘われて、「じゃあやってみようかな」と。父親が中学までバスケをやっていたこともあって、少しなじみのあるスポーツではあったんですよね。
中山:
なるほど。サッカーに対して未練のようなものはあったのでしょうか?
石井:
自分でも結構サクッと次にいったなと今でも思います。Jリーグもよく観に行ってましたし、今でもサッカーは好きで、オフシーズンに試合を観に行くこともあります。当時のことは鮮明には覚えてないのですが、振り返るとすんなり移ったという感覚です。
中山:
そこから高校、大学と進まれてプレーを続けられたわけですが、学生時代に自分が大切にしていたこだわりは何ですか?
石井:
「人に引っ張られないこと」ですね。例えばミニバスってリングが低いので、少し背が高かったり身体能力のある子だとダンクができたりするんですよ。中学に上がると、みんな3ポイントとか、遠くから打って入るかどうかを試したがる。男子ってそういうのが好きなんですけど、僕はまったく興味がなくて。ちゃんとしたフォームで届く距離からしかシュートを打たなかったんです。
中山:
みんなが派手なプレーを求める中で、あえて基礎を選んでいたんですね。そのこだわりは当時の自分の中でどんな感覚だったのでしょうか?
石井:
遠くから無理に打つよりも、基礎を大事にしてフォームを固めたいと思ってました。
中山:
人に引っ張られず、自分の感覚を信じていたということでしょうか?
石井:
そうですね。みんながダンクやスリーで盛り上がってる横で、ひたすら届く距離からシュート練習をしているような子どもでしたね。
中山:
その時の気持ちはどのようなものだったのでしょうか?「上手くなるために必要だから」と意識していたのか、それとも単純に「みんなと違うことをやってみよう」という感覚だったのか。
石井:
フォームを固めるなら、今は遠くから打たない方がいいという「今は基礎をつくる時期」と考えていたのもありますけど、根本的にはみんなと同じことをやるのが好きじゃなかったという性格的な部分が大きいですね。
中山:
なるほど。すでにその頃から自分を俯瞰して見ていたような印象を受けました。そこから実業団に進み、教員チームを経て、プロとしての道に進まれた流れは、ご自身の中で計算されたキャリアだったのでしょうか?
石井:
全く計算ではなかったです。目の前の課題を一つひとつクリアしていったら、気づいたらその先に次のステージがありました。小学校で県大会、高校で全国、大学で日本一を争って、順番に登っていった感じです。当時はまだプロリーグもなかったですし、バスケで飯を食うという感覚もなかったです。大学でも選抜に選ばれたこともなくて、自分の実力を考えて、現実的に実業団を選びました。
中山:
なるほど。大きな目標を掲げて突き進むというより、目の前の課題を丁寧に一つずつ越えていくタイプなんですね。
石井:
そうですね。壁が現れたらまずそれを乗り越える。また次の壁が出てきたら、それを越える。そうやって一段ずつ積み上げてきた感じです。

2. プロとしてのベース──主体的に環境を形成する
中山:
先ほどのお話にもありましたが、当時はまだプロリーグがなく、“プロを目指す”という概念そのものが曖昧な時代でしたよね。大学や実業団でプレーされていた頃は、何を動機に日々のバスケと向き合っていたのでしょうか?
石井:
高校の頃は全国で戦う、インターハイに出るという明確な目標がありましたし、大学の時は日本一になることがモチベーションでしたね。社会人になると、状況は一気に変わりました。仕事をしながらバスケをするという状況だったので、まずは社会人としてきちんと働くこと。その上で、男子バスケ部が強くなっていく過程を、自分なりのアプローチで経験していたという感覚でした。
中山:
なるほど。プロもない時代に仕事とバスケを両立させることは想像以上に大変だったのではないでしょうか。実際にその生活を送る中で、時間の使い方や気持ちのバランスなどはどのようにされていたのでしょうか?
石井:
最初の頃はやっぱり難しくて、慣れるまでに時間がかかりました。チームの練習は平日に1回、週末に1回くらいしかなかったので、「どこで体を維持するか」「どこでコンディションを整えるか」を常に考えていました。僕は営業職だったので、新しい知識を覚えたり、お客様と向き合う時間も必要でしたし、残業も多い時期もあったので、最初の1年は本当にスケジュールを組むのが大変でしたね。

中山:
その中でどのようにバランスを取っていかれたのでしょうか?
石井:
営業の中で商談や案件の管理を自分で組み立てる必要があって、結果的にそれが自分の1日をマネジメントする力につながったと思います。「今日はこの時間に何をやる」「どこで切り替える」という感覚が、自然と身についていきました。プロになってからは逆に、練習時間以外はすべて自分で決める生活になったので、その経験が本当に役立っているなと感じます。
中山:
なるほど。営業職で培ったセルフマネジメント力が、プロとしてのベースになったわけですね。
石井:
そうですね。また、営業時代は1人ではできないことを実現するために、いろんな分野の人を巻き込みながら動いていました。商談を成立させるために、自分から社内外の人に声をかけてチームを組むという感覚が今の自分のバスケでのスタイルにも通じていると思います。プロになってからも、「パフォーマンスを上げる」という目的のために、必要な専門家に自分からコンタクトを取って、トレーニングや知識を吸収するということが自然にできるようになっていました。
中山:
さらっと言われましたが、非常に貴重な観点のお話ですね。社会人として“自分で環境を作りに行く”ことを経験していたからこそ、プロになっても同じように動いたんですね。
石井:
そう思います。最初は練習生で、契約ももらえていない立場だったので、「空き時間をどう使うか」で全部が変わると思っていました。使えるジムを探して予約して、練習前に自主トレーニングをしてからチームに合流したり。給料も少なかったので、交通費も計算して「このルートが安い」「今日は自転車で行こう」なんてこともありました。
中山:
そこまで細かく自己管理されていたんですね。限られた時間やお金というリソースを、どう最適に配分するかというセルフマネジメント力の原点がそこにあるように感じます。
石井:
そうですね。限られた時間とお金をどう使うかをすごく意識していました。だからこそ、プロになった時も自然と同じような思考で動けたんだと思います。

3. 思考の螺旋階段──40歳まで続けるために
中山:
日々のトレーニング前の準備で、体や心のコンディションを整えるために意識していることは何ですか?
石井:
体の準備に関しては、自分のアップの流れが決まっていて、それをやっていくうちに自然とスイッチが入る感覚ですね。朝食も毎日ほぼ同じです。考えるのが面倒というか、朝はできるだけ習慣で動きたいので、起きてからの流れもほぼ決まっていて、無意識で行動できるようにしています。
中山:
「朝は習慣で動きたい」という言葉に、石井さんの思想が表れている気がしました。その背景についてもう少し聞かせていただけますか?
石井:
脳が疲れるという意味で「意思決定って疲れる」ってよく言うじゃないですか。なので明日の流れや服装は前日の夜に全部決めてしまうんです。朝は決まった時間に起きて、歯を磨いて、同じ順序で支度をしてという感じで無意識に動けるようにして、なるべく頭を使わないようにしています。SNSも朝は見られない設定にしているんですよ。
中山:
行動を習慣化して“自動化”することで、余計な思考を減らし、環境面でも制限をかけているんですね。エネルギーの使い方を、意図的にデザインしているように感じます。
石井:
そうですね。そうしておくことで、朝から余計なストレスがなくなります。
中山:
そうした“考えない時間”をつくる一方で、練習の中では考える時間もありますよね。たとえば「今日はここを伸ばそう」「これを修正しよう」などの整理はどのように行っているのでしょうか?
石井:
頭の整理は、基本的に前日の夜にやります。その日の練習を振り返って、映像を見ながらできたこと・できなかったことをまとめて、明日はこうやってみようとノートに書き出してから寝るようにしています。
中山:
その習慣はいつ頃から続けているのでしょうか?
石井:
プロになってからもう10年くらい続けています。例えば、「明日はこんな感覚でシュートを打ってみよう」と書いて、実際に試して結果をまた書く。「この意識でやったら入った」とか、「気持ちの持ちようがこうだった」とか。そういう感覚も含めて、言葉で記録しています。

中山:
映像という客観的な視点と、自分の感覚という主観的な視点、その両方を交えながら整理しているんですね。
石井:
そうですね。同じシュートが外れたという結果でも、大丈夫と思える時と改善しなきゃと感じる時があって、その違いを言葉にして整理しています。
中山:
ご自身の感覚と動きの連動をすごく丁寧に観察されてますね。この作業を10年続けてきた中で、その効果や意味をどのように感じますか?
石井:
僕は書き出すことで頭が整理されるんです。頭の中で「ああだったな」と思うだけだと、次の日には忘れてしまうのですが、文字にしておくと、翌日の練習で「昨日はこうだったな」と思い出せる。感じたことを言葉にすることで、自分の中に落とし込みやすいですし記憶にも定着します。
中山:
言語化することで、より具体的に理解できて、それが体にも定着していく感覚なんですね。
石井:
そうですね。感覚を言葉にすることで、もう一度自分の中で整理されて、それが再現性につながると思っています。そうするとパターンができてくると、「調子が悪いな」と感じた時に、その中から「今日はこれかも」と選べるようになるんです。
中山:
なるほど。日々の整理を積み重ねているからこそ、コンディションのズレを修正するスピードもあげることができるのですね。
石井:
そうですね。メンタルも含めて、ちょっと乱れた時も「前にこうだった」と思い出して戻れる。結局、同じことの繰り返しなんですよ。失敗のパターンも、思考の癖も。なので“螺旋階段”みたいに、同じことを繰り返しながら少しずつ上がっていくイメージです。
中山:
面白い表現ですね。自己理解が深いからこそ、日々のチューニングも的確にできるのだと感じました。先ほど「目の前の課題を一つずつクリアしていくタイプ」とおっしゃっていましたが、長期的な目標と、日々の積み重ねはどのように結びつけているのでしょうか?
石井:
僕は25歳でプロになったんですけど、ケアやトレーニング、食事、怪我の対応、その全部が目の前の課題をクリアしていく意識ではあるのですが、判断基準は常に「40歳まで現役を続けるために」という視点です。特にうまくいかない時ほど長期的な目線で考えるようにしています。
中山:
日々の判断の軸が「長く続けるため」になっているんですね。
石井:
そうですね。長く続けるという視点を持っていると、「今はこれが必要な時期だな」「これをクリアしたらまた上がれるな」という様に気持ちの切り替えもしやすいんです。僕も人間なので、たとえばお酒を飲みたいとか、少し羽を伸ばしたいと思う時もありますが、「40歳までやるなら今日はやめとこう」という風に自然とブレーキがかかるんですよね。
中山:
なるほど。長期的に見ることで、その場の欲求や感情だけで動かずに冷静に選択できるようになるのですね。
石井:
気持ちのまま動くとブレちゃうので。長い目で見て「今はこれが必要だ」って思えるようにしています。
中山:
先ほど「パフォーマンスを上げるために外部の専門家に連絡して話を聞く」という話がありましたよね。これまでどのような方々から、どのような学びを得てこられたのでしょうか?
石井:
僕は本当に幅広い分野に興味があって、食事、メンタル、睡眠、生活習慣など、それぞれの専門家に話を聞きに行って教えてもらいました。睡眠に特化した方にも相談しましたし、バスケのスキルコーチにもワークアウトをお願いしたこともありました。他競技の選手とも交流があるので、メンタルや考え方について話を聞いたりもします。あとはパフォーマンスとは関係ないですけど、お金や資産の専門家とかも。
中山:
他に残されたジャンルはないのではというくらい出てきましたね(笑)そのように専門家から知見を取り入れることは、石井さんにとってどんな意味、または価値がありますか?
石井:
たとえば食事や睡眠の分野だと、「バランスよく食べよう」「ちゃんと寝よう」ではなくて、「ご飯を何グラム食べる」「寝る前に何分お風呂に入る」みたいに、行動が具体的になるんですよね。自分はコツコツ積み上げていくタイプなので、そういう“ステップを踏む感覚”がすごく合っていました。それに、自分で決めたことをちゃんとやれているという実感があるとメンタルも安定するので、日々の小さな積み重ねが自信につながっていくんですよね。
中山:
感覚ではなく、専門家の知見を通じて“行動の解像度”を上げていて、だからこそ日常の安定感や思考の落ち着きにもつながっているんですね。
石井:
そうですね。トレーニングの結果や数値でも成果が見えるので、それも自信になります。あと、誰かに与えられた学びではなく、自分で必要だと思って取りに行っているからこそ、すべてが主体的に感じられるんです。チームから言われて受け身で受けるよりも、自分で選んで学びに行く方が圧倒的に身になりますね。
中山:
本当にそうですよね。チームの一斉講義などだと、どうしても形だけになってしまうこともありますよね。でも自分で「今の自分に必要だ」と感じて動いた学びは、ちゃんと血肉になる。
石井:
そうなんです。自分で必要だと思って行くと、内容がよりパーソナライズされるので、吸収度が全然違います。
4. 不安も自分らしさ──余白をつくり、安定を生む思考

中山:
少し視点を変えて、試合中のお話を伺わせてください。石井さんはプロとして長くプレーされていますが、緊張や不安は出やすいタイプでしょうか? それとも、あまり感じないタイプでしょうか。
石井:
緊張は出やすい方で、不安も結構多いです。緊張で吐くほどではないですが、試合が近づくとやっぱり緊張や不安を感じます。試合が始まってしまえばスッと集中できるんですけど、そこまでの時間は不安になることが多いです。
中山:
具体的にどのような不安や緊張があるのか伺ってもいいですか?
石井:
フェーズによっても違うのですが、今だと年齢的な不安ですね。キャリアを積み重ねる中で、「あと何年できるんだろう」と。今は本当に薄い紙を1枚ずつ積み重ねているような感覚で、ギリギリのところをやっている感じです。パフォーマンスが落ちたら年齢のせいと言われる。だからなのか、あと何年できるのかという不安は日々あります。
中山:
なるほど。コート上の瞬間だけではなく、日常的に感じる不安なんですね。そうした不安とは、今どのように向き合っているのでしょうか?
石井:
ただその不安が僕の原動力でもあるんですよ。例えばシューターは入らなくなったら終わりのポジションなので、いつ入らなくなるかという不安は学生の頃からずっとありました。でも、その不安があるから練習するし、いろんな人に話を聞きに行く。行動の原動力になっている部分は大きいなと思います。
中山:
不安を“行動の燃料”に変換しているわけですね。
石井:
まさにそうですね。とはいえ、昔は気にしないタイプが羨ましいと思うこともありました。何にも気にしないでどっしりしている人はすごいなと。でも最近は、自分はこれでいいかなと思えるようになりました。不安があるから行動できるのはそれはそれでいいじゃんって。
中山:
不安を否定せず、受け入れて付き合っていく。それが石井さんらしさでもあるのですね。「緊張しないように」や「楽しんでやろうよ」などと言われますが、緊張しやすい人や不安になりやすい人には、その言葉自体が難しい場合もありますよね。
石井:
そう思います。よく試合前に「最高の自分をイメージして臨む」みたいな方法もあるじゃないですか。あれが僕には全然合わなくて。20点取って活躍している自分をイメージしても、その通りにいかないと乱れちゃうんです。本当は20点取っているはずなのに、まだ1点しか取れてないとか。だから僕は逆で、「最悪の想定」をしておきます。この出来だったら最悪だなという状態を思い描いて、まだそこまではいってないから大丈夫と。
中山:
最悪の想定をしておくことで心の余白を作っているのですね。
石井:
そうですね。それに、僕は100点を狙いにいくより、安定して75点を出す方が自分には合っています。勝った時はもちろん嬉しいですが、なりふり構わず喜ぶみたいなことはできない。起きた出来事に対して感情で大きく反応するより、喜びすぎたり落ち込みすぎたりしないようにしたい。僕にはそれが合っていると思います。
中山:
勝負の世界で、どうしても波がある中で、なぜ安定を優先されるようになったのでしょうか?
石井:
Bリーグは土日の連戦が多いので、毎試合連勝できるわけではないんですよ。絶対連勝するという気持ちだけで週末を迎えると、負けた時のダメージが大きくなってしまう。もちろん勝てるのが一番ですが、相手との力関係もあるので「ここは1勝1敗でもしょうがないな」とか、「この相手なら最悪連敗もあるな」とか、そうやって想定しておくと実際に負けても想定の範囲内だなと僕は冷静でいられます。
中山:
結果をフラットに受け止めるために、“事前の想定”をしておくわけですね。
石井:
そうですね。感情のアップダウンが激しいとメンタルが消耗するので、ある程度ドライに見ておくようにしています。試合をやっていると、どうしても調子の波もあるし、感情の波もあるので、安定させるための考え方として、このスタンスが自分には合っています。
中山:
合理的で、深い自己理解に基づいた戦い方だと感じます。お話を伺っていると、思考力や自己対話の力が非常に強い印象なのですが、石井さんにとって「考える力」は、バスケにおいてどれくらい重要だと思いますか?
石井:
めちゃくちゃ重要だと思いますね。
中山:
もし若手選手や他の選手に、その“考える力”の大切さを伝えるなら、どう表現されますか?
石井:
自分で考えることによって、最終的に「自分のプレーや判断に責任を持てる」ようになると思っています。たとえばコーチに「こう守れ」と言われて、その通りにやって決められたら、どこかで“コーチのせい”にできてしまいますよね。でも自分で考えてやられたら、それは経験として受け入れられる。なので“自分で責任を取れるようになる”という意味で、考えることはすごく大事だと思います。

中山:
考えることが、“責任を持つ”ことと直結しているんですね。
石井:
そうですね。大事な場面でシュートを打つ、スティールに行く、そういう“覚悟を持ったプレー”にもつながると思います。自分で考えないで言われたことだけをやっていたら、そうはならないと思います。
中山:
考えることが覚悟を生み、その覚悟がプレーの強度と知性を支えているのですね。
石井:
あと、考えながらプレーする方がシンプルに面白いですよね。たとえば相手の表情を見て今イラついてるなと思ったら、少し嫌なディフェンスをしてみる。そうすると相手がオフェンスファウルをしてくるだろうなとか。そういう駆け引きがハマった時は、やっぱり面白いんですよ。せっかく球技をやっているのだから、頭を使って考えて、相手の心理を読みながらプレーする方がずっと楽しいです。
中山:
考えることそのものを楽しむという石井さんの哲学が、凝縮されている気がします。
5. 思考の循環──言葉がつなぐ挑戦の連鎖
中山:
石井さんはnoteでの発信も継続されていますよね。その発信にはご自身にとっての意味と、社会にとっての意味、それぞれどのような価値を感じておられますか?
石井:
自分にとっては、まず思考が整理されるというのが大きいです。読む人にどう表現すればわかりやすいかを考えて書くことで、自分の頭ももう一度整理されます。それに、公に出している以上「言ったことはちゃんとやらなきゃ」という意識も生まれます。
中山:
発信そのものが、思考を磨く場になっていて、そして“自分への約束”にもなっているのですね。
石井:
そうですね。そして社会的な意味で言うと、教員をしている同級生が多くて、「プロアスリートが何を考えているのか知りたい」「子どもたちにそういう話を伝えたい」と言われたのがきっかけでした。自分自身も、ほかのアスリートの言葉に背中を押された経験があるので、自分の発信が誰かの原動力や気づきになればと思って続けています。
中山:
なるほど。ご自身が学んで実行してきたものをさらに外に出して、それがまた誰かの原動力や気づきになっている。思考の連鎖が生まれているように感じます。
石井:
そうですね。自分もいろんな人の言葉に影響を受けてきたので、今度は自分が発信する側でそういうきっかけを作れたらと思っています。
中山:
素敵ですね。アスリートが自分の思考を自分の言葉にして社会へ届ければ届けるほど、スポーツの価値は広がっていくと思います。
石井:
僕もそう思います。

中山:
最後に、未来の話も聞かせてください。これからのキャリアの中で、「挑戦したいこと」は何でしょうか?
石井:
今年で38歳になりますが、プロになった時点では今のキャリアは想像していなかったからこそ、ここからどこまでいけるのか、どんなキャリアを築けるのかにシンプルに挑戦したいと思っています。ありがちなキャリアを歩むのではなく、枠にハマらないチャレンジをしたいし、プレーヤーとしても常に成長したい。この歳から新しいスキルを身につけるとか、そういう挑戦を続けたいです。
中山:
「枠にハマらないチャレンジ」という言葉が印象的です。例えば新しいスキルとは、どんなものを思い描いているのでしょうか?
石井:
例えばダンクですね(笑)僕、今までダンクしたことないんですよ。40歳目前でジャンプ力を上げてダンクできるようになったら、可能性が広がるじゃないですか。
中山:
幼少期、周りがダンクや3ポイントに熱中していた時期に、あえて基礎へ向かった石井さんが、今になってダンクを獲りにいく。物語としても最高ですね(笑)
石井:
そうですね(笑)オフコートだと、子どもたちにバスケを教えたり、クリニックを開催したり、チャンザウルスというキャラクターのボールを寄贈したり、そうした活動をしています。地域や社会との関わりをもっと大きくしていくことも、一つのチャレンジですね。
中山:
その“教える・つなぐ”活動に込める意図は、どんなところにありますか?
石井:
プロがなかった小学生時代に、実業団の選手が学校に教えに来てくれて、「シュートはこう打つんだよ」と言われてやってみたら、めちゃくちゃ入ったんです。それがきっかけで「シュートって面白い」と思えたことがあったんです。どこでどういうきっかけが起こるかは分からない。今の自分の立場で、子どもたちの何かのきっかけになる場を少しでも作りたいし、次の世代のために機会を増やしたい。その想いが大きいです。
中山:
石井さん自身が“きっかけをもらった側”だったからこそ、今はそれを“渡す側”として繋いでいるのですね。絶えず挑戦を重ねながら、その思考や言葉を社会に還元していく石井さんの生き方自体が、スポーツの新しい可能性を示しているように感じます。本日はありがとうございました。
石井:
ありがとうございました!

答えは、すぐには見つからないかもしれない。
それでも自分と向き合い、考え続けることが、次の一歩をつくる。
思考を解き明かす対話は続く。
『Dialog Code』——次は、誰の思考に触れようか。
Optimize Performance Dialog®︎について詳しくはこちらをご覧ください
https://athdemy.com/method







