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Dialog Code

『“のらりくらり”では終われない──もう一度、競技者としての野心を取り戻すために』 #小野瀬康介 Dialog Code 

2026/6/24

「対話が変われば、スポーツはもっと変わるのか?」

『Dialog Code』

強くなるために必要なのは、トレーニングや技術だけではない。アスリートが自分自身と向き合い、考え、気づくことで、次のステージへ進む鍵を探る対話記録。

今回登場するのは、

小野瀬康介(サッカー選手・湘南ベルマーレ所属)

【Before Dialog】
ピッチの中で落ち着いて見えている選手は、何を見て、何を感じながらプレーしているのだろう。公式戦の緊張感、相手から受ける圧力、スタジアムの空気。その中で、練習と同じようにボールを扱い、相手の動きを読み、味方の立ち位置まで把握することは簡単ではない。私たちがいつも見ているプレーの裏側には、視野を整え、感覚を研ぎ澄まし、プレッシャーを受け入れるための準備がある。小野瀬康介は、自分の状態を「普段通り」という言葉で表す。特別な力を出そうとするのではなく、練習で培ってきたものを公式戦の中でそのまま出すこと。その一方で、緊張や不安を避けるのではなく、競技者として生きている実感を与える刺激として受け止めている。サッカーをジェンガのように積み上げ、時に崩れながらも、もう一度作り直していく。その土台にあるのは、目標や意思を持ち続けること。そして今、もう一度自分の中にある「ギラギラ」を取り戻そうとしている。彼は、何を見て、何を支えに、数ある未来の中から選んでいくのか。さあ、彼の思考を紐解いていこう。

【Code.1 - STATE】判断を支える視覚設計───密集地帯の情報を処理するために

中山:
試合中、判断がうまくいっている時のご自身の状態を、一言、もしくは短い文章で表すとしたら、どのような言葉になりますか?

小野瀬:
「普段通り」です。

中山:
普段通りでいられる時は、具体的にどのような感覚ですか?

小野瀬:
練習と試合の緊張感は全然違います。そういう意味では、練習でできていることがそのまま出せている感覚ですね。プレーそのものというよりは精神状態の話で、リラックスして、みんなでわいわいサッカーをしているような感覚に近い状態で公式戦に臨めるのが一番いいですね。

中山:
精神的にリラックスして楽しめていることが大事なのですね。

小野瀬:
そうですね。僕はその方が力を出せるタイプだと思います。

中山:
そういう状態だと、体の感覚やプレーはどう変わりますか?

小野瀬:
一番は、見えてくるものが変わりますね。密集地帯の中でも周りが見えていて、落ち着いて相手の動きや、その先の味方の動きまで見えている感覚です。

中山:
全体が見えている感覚なんですね。

小野瀬:
そうですね。ピッチ全体を上から見ているような感覚です。

中山:
小野瀬さんは「そこで打つのか」と思うようなシュートや、一瞬で相手の間に入り込んでいくようなプレーが印象的ですが、それも普段の練習の延長線上にあるものなのでしょうか?

小野瀬:
入る・入らないは別として、普段からそういうプレーはやっています。ただ試合になると、感覚がより研ぎ澄まされるので、相手から見たら予想外のプレーになりやすいのかもしれないですね。

中山:
予想外というのは、小野瀬さん自身にとっても予想外なのですか?

小野瀬:
いえ、それはないですね。

中山:
普段やっていることが試合になるとさらに研ぎ澄まされて、相手からすると予想外に映るような選択をしているということなのですね。

小野瀬:
そうだと思います。

中山:
「普段通り」でいることや、リラックスした精神状態で試合に臨むために事前に取り組んでいることはありますか?

小野瀬:
今でも多少の緊張感はあります。ただ、何もできなくなるようなガチガチの緊張じゃなくて、公式戦ならではの良い緊張感です。「練習からその緊張感でやれよ」と言われるかもしれないですが、それはやっぱり作れないんですよ。

中山:
公式戦でしか味わえない独特の緊張感があるのですね。

小野瀬:
別にその緊張感を求めているわけではないのですが、公式戦があるというだけで刺激になりますし、自分はその緊張感が好きなのだと思います。

中山:
例えばウォーミングアップの段階で自然体になるために、意識していることはありますか?

小野瀬:
ボールフィーリングはすごく大事にしているかもしれないですね。自分は身体能力でなんとかするタイプの選手ではないので、何十年もかけて培ってきた技術を最大限に生かすために、フィーリングと目は大事にしています。

中山:
具体的にはどんなことをしていますか?

小野瀬:
最近は携帯やiPadが普及してきて、目が疲れやすい時代じゃないですか。なので、まずそういうものをあまり見ないようにしています。目は本当に大事だなと思っていて、自分でも視力が落ちてきたのを感じています。

ボールフィーリングに関しては、片目をつぶってリフティングをよくやります。両目で見る時と片目で見る時って全然違うんですよ。左右それぞれやってから両目でやると、ボールが見やすくなる感覚があります。

中山:
タッチの感覚だけではなく、視覚的な部分にも影響があるのですね。

小野瀬:
そうですね。自分を騙すというわけではありませんが(笑)。

中山:
片目でリフティングするという発想自体が面白いなと思ったのですが、何かきっかけがあったのでしょうか?

小野瀬:
おそらく誰かがやっていて取り入れたのだと思います。それも覚えていないくらいです。ですが、ポジション的に若い頃よりも中に入る位置になったというのはあるかもしれないですね。外にいる時は180度くらいの視野で済むこともありますが、中に入ると360度見なくてはいけない場面が増えました。

中山:
より「見ること」の重要性が増したのですね。

小野瀬:
そうですね。やっぱり一番怖いのは見えていないことなので。実際には相手が来ていなくても、自分が確認できていないせいで前を向けなかったりすることもありますし、見えていないことで勝手にプレッシャーを感じてしまうこともあります。そういう経験をしたり、周りを見てきたりする中で、今の考え方にたどり着いたのだと思います。

【Code.2 - EMOTION】公式戦というスパイス───緊張の振れ幅を受け入れ、思考で相手を上回る

中山:
試合前や試合中に生じる「緊張」や「不安」という感情は、小野瀬さんにとってどのような存在ですか?

小野瀬:
「スパイス」です。

中山:
なぜ「スパイス」という言葉を想起したのでしょうか?

小野瀬:
長いオフや大きな怪我で離脱した期間を経験すると、やっぱり刺激が欲しくなるんですよね。自分だけかもしれないですが、この生活を数十年続けていると、刺激がないと物足りないというか。大げさかもしれないですが、生きている感じがしないんです。スタメンでピッチに入場していく瞬間が、一番最高ですね。

中山:
練習試合と公式戦では、その「スパイス」の効き方も違うのでしょうか?

小野瀬:
練習でのゲーム、練習試合、公式戦は本当に別物です。公式戦になると相手も本気で来ますし、練習試合なら普通にできていたことが、プレッシャーによってできなくなることもあります。特に長期離脱から復帰した時は強く感じますね。なので、どれだけ練習を積んでも、公式戦に勝るものはないなと思います。しかも相手が大きなクラブになればなるほど、独特の圧力や見えないプレッシャーも大きくなりますね。

中山:
公式戦だからこそ経験できる空気感の中での学習や修正というのは、練習や練習試合とはまったく違いそうですね。

小野瀬:
そうですね。マイナスとプラスの振れ幅がすごく大きいと思います。もちろん人によりますが、このレベルまで来ている選手は、公式戦での振れ幅が大きい人が多いと思います。

中山:
今はその緊張感をむしろ求めているように聞こえますが、若い頃と比べて変化はありますか?

小野瀬:
プロデビューした頃は、ガチガチに緊張していましたね。普段は足なんてつらないのに、プロ1年目の試合では50分過ぎくらいで足がつりました。朝ご飯も食べられないくらい緊張していました。

中山:
当時は何に対しての緊張だったのでしょうか?

小野瀬:
公式戦というものやJリーグという舞台そのものを、自分で勝手に大きくしていたのかもしれないです。観客も5,000人は入っていなかったと思いますし、おそらく2,000〜3,000人くらいだったと思います。

あと、「今週はスタメンだな」ということは練習をしていればなんとなく分かりますよね。僕は高校3年生の時にJリーグデビューしたのですが、その時は途中出場で全く緊張しなかったんですよ。準備期間がなくて急に呼ばれて出場したので、「やるしかない」と余計なことを考える時間がなかったんです。同じ試合に出るのでも、初スタメンの時は全然違いましたね。

中山:
強い緊張を経験したところから、今ではその刺激を求めるようになった中で、何か取り組んだことや、緊張との向き合い方で意識したことはありますか?

小野瀬:
それがないんですよね。一回経験してしまえば、もう大丈夫なんです。だからこそなのか、今でも緊張するのは移籍した最初の試合くらいですね。ガチガチに緊張するわけではないのですが、その時が最初で最後でした。

中山:
一度経験してしまえば、特別なことをしなくても慣れていく感覚なのですね。

小野瀬:
そうですね。移籍した最初の試合だけは普段とは違う緊張感があります。新しいチームで、自分を見せなくてはいけないという気持ちがあるのかもしれません。でも移籍後の最初の試合は普段より緊張しますが、グラウンドに入って体を動かしてしまえば、もう普段通りです。違うのは始まる前だけですね。

中山:
試合が始まった時には、頭の中ではどんなことを考えているのでしょうか?

小野瀬:
その時々で違いますが、今は相手や全体を見ながら、「こうしたらうまく攻められるな」「もっと自分がフリーで受けられるな」ということを考えています。

中山:
どう勝つか、自分がどう立ち回るかに思考が向いているのですね。

小野瀬:
そうですね。「相手がこう来るなら、ここが空くな」とか。昔はサイドで1対1をすることが多かったので、とにかく目の前の相手に負けないことだけを考えていました。ですが、プレースタイルもドリブル重視ではなくなりましたし、考え方も変わりましたね。

中山:
それでも小野瀬さんはスルスルと相手を剥がしていく印象があります。そういった時は何を考えてプレーしていますか?

小野瀬:
若い頃はあまり気にせずプレーしていました。でも今はタイミングを外したり、味方がそこにいることで相手は迷うような立ち位置を取ったりしています。自分が優位な状態になった時に抜け出すことを考えていますね。

中山:
「相手にとって何が嫌か」という視点を持っていられるのですね。

小野瀬:
そうですね。外国籍選手のようにフィジカルが強い選手や足の速い選手はいますが、その能力で勝負しようとしても無理なので。サッカーは能力が高い選手でも騙されるスポーツなので、考えることでそういう人たちに勝てるというか、能力が高くない選手ほどよく考えているはずです。

中山:
「頭を使う」「考えながらプレーする」というのは簡単ですが、具体的に何を見てどう考えているのかまで言語化されると、参考になる子どもたちも多いと思います。

小野瀬:
自分の技術にどれだけ自信があるのか、相手との距離感をどう感じているのか、少し外しただけでターンできるのか。そういう感覚を把握しておくことは必要だと思います。どれだけ能力差があっても、アクションを起こす側の方が絶対に速いので、大事なのはボールをもらう前の立ち位置ですね。

例えば、味方を使って相手のポジションをロックして、実質的に2対1の状況を作る。そうすれば自分はフリーで前を向けます。相手が自分を捨てて寄せてきたら、その選手が空けたスペースを使えばいい。その背後にボールを出してもらうこともできます。もちろん、それを成立させるには出し手の存在も重要です。

【Code.3 - COGNITION】失敗から学ばないことが失敗───崩れた経験を次の土台に変える

中山:
小野瀬さんにとって、サッカーという競技はどのような「ゲーム」だと捉えていますか?

小野瀬:
「ジェンガ」です。

中山:
なぜ、「ジェンガ」という表現にしたのでしょうか?

小野瀬:
プロの世界は、サッカーを仕事としてやっている以上リターンがあるので、最初は「カイジ」かなとも思ったのですが。何か良い例えはできないかなと考えた結果、出てきたのがジェンガでした。ジェンガは積み上げていくゲームですが、一方で試合を重ねていくと体への負担も増えますし、どこかが削られて穴が空いていく感覚もあるんですよね。それをまた修復していく作業も必要になる。

失敗した時なんかもそうですけれど、人ってメンタル的に崩れることもあるじゃないですか。でも、また積み上げていく。その繰り返しですよね。それはプロかどうかに関係なく、みんなそうやって生きているんじゃないかなと思います。

中山:
サッカーで言うならば、「ここが崩れると危ない」というものは何ですか?

小野瀬:
それはやる人によって答えが変わる気がします。もし崩さないようにプレーするなら、味方のことを考えながら取る場所を選ぶと思います。逆に対戦相手とのゲームとして考えるなら、「ここを崩したら相手はやりづらくなるな」という視点になりますよね。

中山:
では、自分一人で積み上げていくジェンガだとしたら何を崩さないようにしていますか?

小野瀬:
難しいですね。崩さないようにやっていても行き詰まる時はあると思うんです。それに、もし崩れることを失敗と置き換えるなら、失敗って本当に悪いことなのかなとも思うんですよね。また作り直せばいいじゃないですか。一度そこまで積み上げた経験があるから、また自分にもできますし、その経験を困っている人に伝えることもできます。

僕自身、いろんな失敗をしてきて、いろんなことも言われてきました。でも、自分の中では「失敗したこと」よりも、「失敗から学ばなかったこと」の方が失敗なのかなと思っています。

中山:
ゲームのルール上は終わりでも、人生では終わりではない。失敗に対する考え方として、そういう前提があるのですね。

小野瀬:
そうですね。自分はそうやって生きてきました。

中山:
小野瀬さんがアスリートとして大切にしている基盤となる考え方は何でしょうか?

小野瀬:
最近まで自分でも忘れていたのですが、やっぱり目標や夢、自分の意思が本当に大事だなと思います。それを見失ってしまうと、強い意思を持っている人には絶対に勝てないので。

実際、降格を経験してすごく考えさせられました。J2にいた頃の自分は「J1でやりたい」という野心をギラギラにしていたんです。でも、いろいろな経験をしていく中で、心のどこかで「J2なんか余裕だろう」と思っていた部分がありました。結果として、自分は6試合しか出られませんでした。

一方で、強い目標や野心を持っている選手たちは本当に生き生きしていますし、そういう選手には勝てない。年齢がいくつになっても、自分の中にある意思や目標をなくしてはダメだなと思いました。それが自分を突き動かしてきたものですし、改めてその大切さを考えさせられた半年でしたね。

中山:
改めて、「目標や意思を持つことの意味」や「それを持ち続けることの強さ」を実感されたのですね。

小野瀬:
そうですね。たまに、明確な目標や夢を持っていない子もいるじゃないですか。そういう人たちに何かを教えるのは難しいなとも同時に思ったんです。自分の場合は、「こうなりたい」とか「ここに行きたい」というものがすぐ出てくるので、うまくいかなくても軌道修正ができるんですよね。でも、そういうものを持っていない人たちは、どうやって生きているのかと、逆に知りたいなと思います。

中山:
一方で、アスリートの中には具体的な数字や結果を追うというよりも、「自分はどういう人間なのか」を理解して、そこに集中し続けた結果として何かを得るという考え方の人もいますよね。

小野瀬:
そうですね。ただそれも、自分を見失っていないという点で結局は同じだなと思います。

中山:
結果を先に見て、そのために必要な過程を積み上げる人もいれば、過程そのものに向き合い続けた結果として、あとから成果がついてくる人もいる。でも延長線上で見ると、どちらも同じ線の上にありますよね。

小野瀬:
そうですね。その上で思うのは、どちらかというと後者の方が地に足がついていて、ぶれにくい気はしますね。高い目標を掲げていても、ある程度結果が出た時に満足してしまうこともあると思います。自分自身と向き合うことを軸にしている人の方が、そこで踏みとどまれる気がします。


【Code.4 - VISION】今をやり切る───終わりを考えず、野心を取り戻す

中山:
この競技を続けていった先に、どのような状態や景色に辿り着いていたいと考えていますか?

小野瀬:
遠い未来のことは何パターンもあって、近い将来はJ1昇格することです。

中山:
遠い未来については、具体的にどんな未来を想像しているのでしょうか?

小野瀬:
正直、のらりくらりやっていても、ある程度プロ生活は続けられるなとは思います。練習の強度も少しずつ落としていけばそれなりにやっていけますし、逆にあと数年でやり切って終わるという未来もかっこいいです。でも今思っているのは、自分のギラギラを取り戻したいということです。

来年34歳になりますが、若い時に持っていたギラギラを取り戻して、2026/2027シーズンは突き動いていきたいなと思っています。おそらく、自分の性格上それが一番合っていることに気がつきました。

中山:
サッカー選手としていくつかの未来は想像できる一方で、自分に一番合うのはもう一度ギラギラした気持ちを持って挑戦する道なのですね。

小野瀬:
そうですね。本当は、自分の数字だけを考えてやりたいです。でも、言葉の後ろに隠していますね。綺麗に言っていますが、サッカー選手としては最後までチームが面倒を見てくれるわけではないので。

中山:
プロの世界は、自分自身が一つの会社みたいなものだと思います。なので、ある意味自分のことを考えるのは当たり前だと思います。その上で、「それくらいギラギラしているんだな」とチームに伝わり、結果的にもチームへの貢献と繋がるといいですよね。

小野瀬:
そうですね。優秀な若手はたくさんいるので、その選手たちに刺激を与えつつ、「33歳が一番頑張ってるぞ」というところも見せられたらいいなと思います。

中山:
少し視点を変えて聞きたいのですが、プロサッカー選手としてのキャリアが終わる時、「いいサッカー人生だったな」と思えるのはどんな状態だと思いますか?

小野瀬:
わからないですね。「どうなっていたいか」を考えるのは大事だと思いますが、結局自分がやってきたことの先に結果が残るんだと思います。なので、どうなっていたいかっていうのは、あまり考えたくないかもしれないです。今は目の前のことに夢中で、正直考えられないですね。

中山:
終わった時にしかわからないということですね。

小野瀬:
多分自分は、どんな結果でも受け入れると思います。それに、僕は過去に戻りたいと思ったことがないんですよ。もちろん良いこともありましたが、苦しい経験もたくさんしてきたので、それをもう一回繰り返したいとは思わないです。知っている状態でやり直せるなら別ですが、そうではないのなら戻りたいとは思わないですね。

中山:
どんな結果であっても受け入れる自分がいる。だからこそ今はその途中にいて、わざわざ終わりを考える必要もない。そもそも、どこが終わりになるかもわからないですよね。

小野瀬:
そうですね。人によるかもしれないですが、契約の状況やチームとの関係もありますし自分で決められるものではないですね。

中山:
この質問を突き詰めると、「死ぬ時にどう思えたら幸せですか?」という問いと同じかもしれません。だからこそ、酸いも甘いも含めて、やったこともやれなかったことも全部受け入れて、ただ終わりという事実を受け入れるだけなのだと思います。

小野瀬:
そうですね。でも、死ぬ時は誰よりも先に死にたいですね。看取られて死にたいです。

中山:
死生観の話になるとは思っていませんでした(笑)。ですが、小野瀬さんの考え方の根っこにあるものが見えた気がします。「どんな結果も受け入れる」という姿勢も含めて、すごく小野瀬さんらしいなと思いました。今日は貴重なお話をありがとうございました!

小野瀬:
ありがとうございました!



【After Dialog】
小野瀬康介の言葉から見えてきたのは、特別な自分になろうとするのではなく、普段通りの自分をどこまで高い強度で出せるかという競技観だった。練習で積み上げた技術を、公式戦の緊張感の中で自然に出す。見えていない怖さを消すために目を整え、相手の能力に正面からぶつかるのではなく、立ち位置やタイミングで優位を作る。そこにあるのは、感覚論ではなく自分の特性を理解したうえで勝つための現実的な思考だった。同時に、彼は緊張や不安を否定しない。公式戦の刺激は、競技者として生きている実感でもある。崩れることも、失敗することもある。それでも、失敗から学べばまた積み上げ直せる。サッカーをジェンガにたとえた言葉には、キャリアを重ねてきた選手だからこその経験が裏打ちされていた。そして最後に語った未来をきれいに決め切らない姿勢。終わりを先に描くのではなく、今もう一度、自分の中にある野心を取り戻すこと。どんな結果になったとしても、その時に受け入れればいい。だからこそ今は、目の前のシーズンに夢中でいたい。普段通りでいることは、力を抜くことではない。積み上げてきたものを信じ、崩れた経験も抱えながら、それでももう一度自分を突き動かすことである。

『Dialog Code』

答えは、すぐには見つからないかもしれない。それでも自分と向き合い、考え続けることが、次の一歩をつくる。思考を解き明かす対話は続く。次は、誰の思考に触れようか。

【Athlete Profile】
小野瀬 康介(おのせ・こうすけ)
1993年4月22日生まれ、東京都出身。
サッカー選手。湘南ベルマーレ所属。

横浜FCジュニアユース、横浜FCユースを経て、2011年に同クラブのトップチームでJリーグ初出場を果たし、翌2012年に正式昇格した。プロキャリアをスタートさせた後は、2017年にレノファ山口FCへ移籍。攻撃的なポジションで存在感を高め、2018年8月からはガンバ大阪でプレーした。2023年に湘南ベルマーレへ加入し、2026シーズンも同クラブとの契約を更新。2025年はリーグ戦32試合に出場し2得点を記録。2026シーズン開始時点でのJリーグ通算成績は392試合47得点。湘南ベルマーレでは背番号7を背負い、豊富な運動量と高い技術を生かして攻撃に変化をもたらすMFとしてプレーしている。
【Dialog Partner】
中山 知之(なかやま・ともゆき)
1995年1月26日生まれ、愛知県出身。
株式会社Athdemy 取締役CCO。

JFAアカデミー福島や世代別日本代表、海外リーグでのプレーといったアスリートとしての原体験を起点に、人間の「状態」と「パフォーマンス」の関係性を探求し続ける。異文化圏での教育コンサルタントや、国内大手不動産テック企業でのセールス/マネジメント経験など、多様な環境の中で「変化が生まれる構造」に向き合ってきた。現在はAthdemyにて、トップアスリートとの対話(Dialog)を通じて思考や感情に伴走。一貫して問い続けているのは、「人はどのような状態で本来の力を発揮するのか」。競技とビジネス、国内と海外といった境界を横断しながら、個人の内面にある思考や感情を言語化し、新たな気づきを共に生み出している。

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